“3つの首を温める”という冷え対策は、実は間違いだった!? カギは、“上半身と下半身の温度差をなくす”こと。自らも「靴下26枚ばき」を実践する冷えとりのプロに、一生続けたい温め方のポイントを聞きました!
温めるべきは全身ではなく足元だった!
冷え性というと、全身や先端が冷えた状態と思いがちだが、実はそれだけではない。重要なのは、上半身と下半身の温度差。
「この温度の開きが大きいほど、身体の冷えが進行していると考えられます」
というのは、“冷えとり健康法”を提唱している進藤幸恵さん。そもそも人間の身体は、生命維持に必要な臓器が多い上半身と、臓器の少ない下半身とでは温度差がある。
「上半身は内臓が24時間働いて熱を発するので、36度前後と温度が高めです。対して下半身は31度前後。5~6度の体温差があるのが一般的な状態です」(進藤さん、以下同)
さらに下半身は臓器が少なく心臓から遠いので、体温は下がりやすく血流も悪くなりがち。すると上半身との温度差が開き、“冷え”が強まるのだ。
「冷えをとるには、下半身を温め、上半身の体温に近づけることが大切。下半身が温められると全身の血流がよくなり、各臓器も活発に働くように。よって免疫力も自然と高まるのです」
一般的にいわれる、“3つの首を温める”というのも、効果的な方法ではないという。つまり、上半身の“首・手首”は温める必要はなく、下半身である“足首”が重要なのだ。
やり方は大きく3つ。半身浴、足湯と湯たんぽ、靴下の重ねばき。どれも手軽に自宅でできることばかりだ。
「この冷えとり法を始めてから、風邪をひかなくなったり、肩こりが解消されたり、中には病気を克服したという方も。シミが消えたり、髪の毛にツヤが出てきた、白髪が減ったという声もありました」
健康も美も手に入る冷えとり、できることからトライ!
●上半身と下半身でこれだけ温度差が!
下半身を温め、上半身の体温に近づけていくと、全身の血流がスムーズに流れるように。
「例えば心臓は全身に血を送る大事な臓器ですが、いちばん遠い足元を温めれば、全身に血が行き渡りやすくなります。各臓器の機能がよく働くようになり、心臓の負担も軽減します」
●やるべきはこの3つ
・足湯・湯たんぽ
・靴下4枚ばき
・半身浴
ポイントは“頭寒足熱”の状態を作ること。下半身をしっかりと温めれば、上半身は薄着でもよい。「私は下半身はしっかりと着込んでいますが、上半身は1年中、半袖でも大丈夫なくらいですよ」と進藤さん
●あなたの冷えの状態をチェック!
□疲れやすく、いつもなんとなく体調不良
□冷えるというより、手足がほてって熱い
□冬に帽子やマフラー、ダウンコートは必須
□ストッキングにパンプススタイルが多い
□首は冷やさないように注意している
□入浴は短時間ですませている
□すぐにイライラ、カッカする
□更年期障害に悩まされている
□お酒やタバコが好きだ
□汗をかきにくい
8個以上当てはまるなら、身体が冷えている証拠。さっそく半身浴からスタートを。7個以下なら、冷えは少なめだが、油断せずに下半身を温めるようにして。
身体の毒も排出する! 半身浴編
血流を改善するのはもちろん、続けていくうちに、体内に滞った毒も排出してくれる効果が。冷え&毒をノックアウトだ!
1日の終わりに、できれば毎日してほしいのが、この半身浴。
「日中の身体は緊張状態にあります。交感神経が優位になっているので、血管は収縮し血流が悪い状態に。すると足元はさらに血行不良となってしまいます」
半身浴で下半身をじっくりと温め、滞った血流を流してあげるのが大切だ。
「ぬるめのお湯にみぞおちから下のみをつかり、最低でも20分。長いほどいいですね。
冬場で寒いと感じるようなら、ときどき肩までつかっても大丈夫。続けていくうちに、身体が芯から温まるようになり、上半身は湯につからないほうが気持ちいいと感じるようになりますよ」
風邪ぎみのときは入浴を控えてしまいがちだが、実は半身浴はおすすめだという。
「風邪のウイルスは冷えと乾燥が大好き。浴室はその逆で、温かく湿気があるのでウイルスが嫌がる環境です。冷えがとれれば、免疫力もアップするので、体調が悪いときほど効果を感じることができるでしょう」
入浴後は、後述する靴下の重ねばきや湯たんぽを使って、熱を逃がさないようにするのも忘れずに。
半身浴で若々しい身体へ
●半身浴のPOINT
・腕は出しておく
腕は上半身の一部と考えているので、温めなくてOK。寒ければ腕もつかって大丈夫。
・体温より1~2度高い湯温で
熱すぎるとのぼせるので、ジンワリと温まる39度くらいがベスト。お湯が冷めてきたら追い焚きや足し湯で調節を。
・最低20分つかる
20分がつらいなら、5分程度で1度出て、再度入ってもよい。音楽などを聴きながらリラックスして。上がる前に追い焚きをするとより温まる。
・みぞおちから下のみつかる
胸骨から下のくぼんだ場所がみぞおち。みぞおちから下のみつかるようにして。
・湯上がり後は即、着替える
熱を逃がさないように、湯上がり後はすぐに、靴下→下着→ズボン→上着の順で着る。下半身より上半身は薄着にして、服装でも頭寒足熱の状態をキープして。
実践者の声
◆末期がんと診断されるも半身浴で持ち直す
N・Kさんは50歳のときに末期の子宮頸がんと診断された。
「抗がん剤治療をするしかないと言われました。治療費は約100万円かかるとのことで、すがるような思いで冷えとり健康法を始めたんです」
半身浴を始めたころは、浴槽の底にヘドロ状のものがたまっていたこともあったそう。
「1か月ほどして再度検査をすると、なんとがんが小さくなっていたんです。主治医にも驚かれたほどです」
34度台だった体温は、36度台にアップ。余命1年といわれていたが、その後10年、元気に過ごすことができた。
◆気になっていた白髪と薄毛が改善
50歳を過ぎて白髪が増え、薄毛にも悩んでいたS・Oさん。
「冷えとり健康法をするようになって、髪の毛1本1本にハリと艶が出てきたんです。次第に白髪が気にならなくなりました」
さらに、冷えが解消し臓器の機能が高まったせいか、長年の便秘もなくなったそう。自然と体重も減り、若々しい身体へと変身したという。
※効果には個人差があります。がんが治るというものではありません。
・浴槽の底に澱がたまることも
半身浴を続けていると一時的に体調が悪くなることがある。例えば皮膚がかゆくなったり、頭痛が起きたりという具合だ。
「これは、下半身を温めることで自然治癒力が高まり、身体を守るために解毒、排出、発熱などの排毒作用が起きている証拠です」
血行不良によって身体にたまっていたドロドロとした古血の毒や、食品添加物、農薬、ウイルスなどの毒を、身体が排出しようとして起こる症状なのだ。
「過度の低体温だった人の中には、入浴後の浴槽の底にヘドロのような澱がたまったという人や、お湯が緑色っぽく濁ったという人も。これらの症状は一時的なものなので、続けていくうちに体調がよくなっていくのを感じられるはずです」
昼間と夜間の冷え対策に足湯・湯たんぽ編
就寝時に湯たんぽを足元に入れておくと、身体や細胞の新陳代謝がより活発に。1日ごとに元気になるのを実感!
例えば昼間に冷えを感じたり、頭痛や腹痛などの体調不良があったら即、取り入れたいのが足湯だ。
「足湯は半身浴と同じくらい身体を温める効果があります。足先から全身を温めることで、生理痛・下痢などの症状も緩和してくれます」
バケツに足首がつかる程度までお湯をはり30分ほど足をつけると、額にジンワリと汗が出てくるのだという。こちらもお湯から出たら、しっかりとふいて、すぐに靴下を重ねばきするようにしたい。
さらに進藤さんが365日、真夏でも実行しているというのが湯たんぽだ。
「寝るときはかならず湯たんぽを足元に入れて寝ます。なぜなら就寝時は、身体の“毒出し”が盛んになるからです」
睡眠中は成長ホルモンなどの細胞修復ホルモンが分泌され、細胞が再生、修復される時間。このとき、身体を冷やさずにしっかりと温めてやることで、排出作用をより促すことができるのだ。
「冬の寒いときは2個、3個と湯たんぽを増やしても。疲れがとれて、目覚めがよくなるのを感じられるはず。
夏の暑いときは上半身は薄着にし、エアコンを弱めにかけて、頭寒足熱を保つようにして。気持ちよく深い眠りが手に入ります」
●足湯のPOINT
・気持ちいいと感じる湯温で
心地よいと感じる温度は、人によっても季節によっても違うので、自分の感覚で調整を。・差し湯を用意湯温が下がったとき用に差し湯を用意。また終える前に足し湯をして、熱めの湯温にしてから終了すると、湯冷めしにくくなる。
・大きめのバケツを用意
足がすっぽりと入るくらいの容器を。足首がつかる程度までお湯を入れる。ひざ下までつかってもよい。
・上半身は薄着で
頭寒足熱の状態にしたいので、上半身は薄着がベター。汗をかいたときのために、ハンドタオルを用意しておいても。
・最低30分
リラックスした状態で30分は入っていたい。身体が芯から温まるはず。読書やテレビを見たり、音楽を聴いたりと、“ながら”でできるのがうれしい。
・毒がよく出る就寝時にはこちら
熱湯を入れた湯たんぽを足元に。夏なら1つ、冬なら2~3個入れてもよい。「冷えが強いと、足がほてって熱く感じ、寝ている間に湯たんぽを蹴飛ばしてしまうことも。この場合は、上半身を薄着にし、手首を出すようにしてみてください」
冷えがとれると、湯たんぽに足をずっとつけていたくなるはず。
・進藤さん愛用は陶器製
「陶器は土という自然素材からできているので、熱の伝わり方が柔らかいのがお気に入りです」ほかに軽量で持ち運びに便利なゴム製、耐久性の高い金属製、価格が手ごろな合成樹脂製などが。用途に応じでお好みをチョイスして。
24時間、頭寒足熱! 靴下4枚ばき編
4枚も!? と驚いてしまうが、やってみると足元が常に温かくなんとも心地よいのを実感。しかも身体の毒も出るという。
「入浴中以外、寝ているときもはき続けて」
と進藤さんがおすすめするのが、靴下の重ねばき。特に推奨しているのが“基本の4枚ばき”だ。
「まず絹の5本指靴下をはき、次に綿の5本指靴下、その上に絹の先丸(指なし)靴下、最後に綿の先丸靴下を重ねばきするんです」
最初に絹の靴下をはくのには理由がある。絹は繭からできており、繭は蚕がつくったいわば天然の寝袋。保温にすぐれ、蚕が出した湿気や毒を排出し、外からの毒はシャットアウトする“生きた繊維”とも呼ばれている。
「足元を温めると内臓の働きが活発になり、体内の毒が足の裏から出やすくなります。絹は、この毒を吸い取って、外に出す効果がとても高いのです」
加えて5本指靴下ならば、指の間から出た汗や毒も吸い取りやすい。足指が開きやすいという利点もある。
「絹の上には違う天然素材である綿を重ねます。東洋医学的には、相反するものを合わせることで、より効果が高まると考えているからです」
更年期障害も、冷えをとることで大きく改善できるはずと進藤さん。
「生理がなくなるとホルモンや自律神経のバランスが崩れ、血行不良になりやすく身体は冷えがち。冷えを放っておけば、さらにいろいろな不調を招いてしまいます」
また東洋医学では、婦人科の臓器は、肝臓、腎臓、膀胱などの内臓の毒を肩代わりするとも考えられている。婦人科の冷えを放置してしまうと、全身の不調につながりやすい。
「靴下重ねばきは1年を通して実践してほしいですが、寒くなる冬は特に気をつけて、温めるようにしたいですね」
基本の4枚ばき
・1枚目 絹(シルク)の5本指靴下
・2枚目 綿の5本指靴下
・3枚目 シルクの先丸靴下
・4枚目 綿の先丸靴下
皮膚からの毒を吸い取りやすい絹の5本指靴下をはき、次に素材の違う綿の5本指靴下を。
「綿は絹のように湿気と毒を吸いますが、吐き出すのが苦手。なので、3枚目にまた絹をはくのです」
最後は綿、寒ければウールの靴下を。
「5本指靴下は2枚程度しか重ねてはけないので、3枚目以降は先丸靴下にします」
・進藤さんはなんと26枚!
真夏でも真冬でも、進藤さんがはいているのは26枚の靴下。驚きの枚数だが、日常生活に支障はないという。
「冷えとりを続けていると、4枚だけでは足が冷たく感じるときや、毒出しで体調がすぐれないときがあります。そんなとき、枚数を増やすと如実に身体に変化があるので、この枚数になりました」
実践者の声
◆70歳の今がいちばん若々しい
若いときから顔にシミやシワが多く、年齢よりも老けた印象をもたれがちだったA・Kさん。
冷えの症状も強かったため、冷えとり健康法をスタート。湯たんぽや足湯を実践し2か月もすると、風邪をひかなくなったそう。
「70歳になりましたが、血流が改善し、肌のターンオーバーがよくなったからか、シミが薄くなったんです。昔の友達に会うと、“今のほうが若い”とびっくりされます」
◆イライラママが優しいママに
「風邪をひきやすく冷え性だったため、手軽にできる靴下の重ねばきを始めたんです」
というM・Sさん。毎日6~7枚の重ねばきをするように。すると、不思議と情緒が穏やかになり、“テストの点が悪くてもガミガミ言わなくなって、いつも笑顔になったね”と中学生の娘に言われたそう。そして気づけば風邪もひかず、血色のよい顔色に。
「今では娘も重ねばきをしています。そのためか、初潮を迎えましたが、生理痛知らずです」
※効果には個人差があります
・毒で靴下が破れる?
「重ねばきをし続けると、内臓にたまっていた毒が足元から出てきます。例えば水虫や湿疹、かゆみ、腫れなどの症状が出るのです」
半身浴にもあったが、こちらも一時的なもので、身体が健康に向かっているサイン。「具体的にどのような成分が出ているのかは不明ですが、出てきた毒で靴下が破れたり、靴下が真っ黒になる……なんてこともあるんですよ」
こんなときは、重ねばきの枚数を増やしてみて。「さらによい変化を感じることができると思います」
子すずめ・くらぶ主宰。「冷えとり健康法」の生みの親である、医師・進藤義晴氏の次女。義晴氏に代わり冷えとりアドバイザーとして普及活動を行っている。義晴氏との共著『免疫力が高まるシンプルな暮らし』(徳間書店)では、冷えを寄せつけず、自然治癒力を高める方法を紹介。
(取材・文/樫野早苗)