「'19年6月に始まった裁判ですが、龍角散の藤井社長は一度も裁判所に現れていません」(司法担当記者)
龍角散の“セクハラ忘年会”、進まぬ裁判
'19年6月、『ゴホン! といえば』で有名な製薬会社の龍角散に不当解雇されたとして、法務担当部長だった福田由紀さん(仮名・52)は会社を提訴した。その第7回弁論準備が昨年の12月9日、東京地裁で行われた。
「会社側は毎回、見当違いな“証拠”ばかり提出してきて年内に決着はつきそうにないですね。来年に持ち越しです」(同)
ことの発端は'18年の忘年会にさかのぼる。
「訴状によると、藤井社長は業務委託の相田幸子さん(仮名)に、“この首筋が色っぽい”などといい、ハグやお触りを繰り返していたといいます。見かねた社員が注意する場面もあり、目に余る行為だったことがうかがえます。その場に原告の福田さんはいなかったのですが、福田さんの姉で開発本部長の亜紀子さん(仮名)は同席していました。帰宅した姉に報告を受けた福田さんは、法務部長として社内調査に乗り出したが、社長室に呼び出され、“セクハラをねつ造するとはけしからん!”と、突然の自宅待機を命じられたのです」(同)
'18年12月6日に“セクハラ忘年会”が行われてから11日後の12月17日、福田さんは自宅待機を命じられ、それから3か月後の'19年3月には郵送で解雇通知が届いた。
「セクハラをされた相田さんは当初、福田さん姉妹に気軽に被害を打ち明けていたのに、福田さんが自宅待機を命じられると一転、セクハラされていない、と言い出しました。
でも会社側も陳述書でハグやお触りがあったことは認めています。権力のある社長が非正規雇用者に対してハグをするのは十分セクハラに当たると思うのですが……」(同)
さらに不可解な人事は続き、
「セクハラをされた相田さんは、'19年1月に正社員になりました。会社の人事異動は通常4月と10月なのですが。一方、セクハラがあったと最後まで証言した男性契約社員は'19年9月に解雇されているんです。
また亜紀子さんは、7つの役職を任されていましたが、由紀さんの自宅待機ともにすべて解職され、千葉県多古町にある工場勤務を命じられました。さらに'19年の10月からは自宅待機となっています。1年以上にわたり社の人間と連絡を取るのも禁止、外出するのも禁止、と嫌がらせのような圧力人事を受けています」(関係者)
亜紀子さんへの嫉妬、社長の驚愕発言
「亜紀子さんは、『おくすり飲めたね』の開発者で龍角散倒産の危機を救った人物です。業界でも有名な人物で、'18年3月には『林先生が驚く初耳学』(TBS系)で林修先生が会いたい人物として亜紀子さんの名前をあげるほどでした。社長はこのテレビ放送以降、亜紀子さんへの嫉妬を募らせていったといいます。
亜紀子さんが癌に罹患した際も藤井社長は“癌なんて老化現象なんだから(健康保険の)高額療養費を使ってもらいたくないね”と言い放ったといいます。製薬会社社長が癌を老化現象と言い放つとは呆れました」(関係者)
龍角散側が提出した準備書面を見てみると、不当解雇の裁判なのにも関わらず、姉の亜紀子さんの勤務実態やテレビに出演した際の台本など本件と関係ないと思われる証拠ばかりが並ぶ。
「会社側は亜紀子さんを解雇したいのですが正当な理由が見つからず、福田姉妹が権力を持ち会社を乗っ取ろうとしたから解雇と自宅待機を命じたというシナリオを作っているようです。
最初は妹の由紀さんを解雇して最終的には亜紀子さんを解雇したいのでしょう。しかし姉妹が会社を乗っ取ろうとしていた証拠がなく、裁判はなかなか進まないんです。藤井社長は自分だけが目立ちたいので、功労者として取り上げられる亜紀子さんの存在が気に入らないのだと思います」(同)
本当だとしたらあまりにも幼稚だ。
龍角散側に真意を聞こうとするも、「担当者不在のためお応えできません」が繰り返されるばかり。担当者が出社しているという日に電話をかけるも「電話対応中でお答えできません」という回答。やましいことがないのならばなぜ逃げ回っているのだろうか。
法廷関係者は、
「法定で意味を持たない証拠ばかり出してくるのは福田さんたちへの嫌がらせで、消耗させようという狙いがあると思います。民事裁判ではある手口ですが、悪質といえます」
と龍角散側の姿勢を批判した。
次回の弁論は、今月。龍角散の商品のように“すっきり”解決してはどうだろうか。