テレ東の深夜ドラマにもかかわらず大ヒットを飛ばしたBL(ボーイズラブ)ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称チェリまほ)の勢いは今年に入っても止まらない。おっさんずラブ以降、急速に増えたBLモノ。実は意外なあの人もBLモノに出ていたんです。
増えてきたボーイズラブ作品
「昨年の12月まで放送されていた町田啓太さんと赤楚衛二さん出演の『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系/以下・チェリまほ)の勢いが止まりません。放送日のツイッターのトレンドワードはもちろんですが、アジアをはじめとした海外でも大ヒットしているんです」(ドラマ関係者)
童貞のまま30歳を迎えて“触れた人の心が読める魔法”を手に入れた冴えないサラリーマン・安達(赤楚)。パーフェクトな同僚・黒沢(町田)が自分を好きなことに気づき……というストーリー。
「これまでのBL(ボーイズラブ)作品との違いは、BLであることを全く忘れてしまうんですよね。それが変だとか、異常だとか、白眼視する目線が一切ない。これまで誰かに恋したことがない安達が、黒沢の気持ちに気づき、好きになって一緒になる─人が人を好きになるという当たり前のことが、優しい世界で描かれています」
と、週刊女性ドラマ座談会メンバーの成田全さん。
赤楚、町田ともにドラマ以降フォロワーが爆増するなどの人気も見せている。
「男性同士の恋愛を主軸にしたBL作品はこれまで特殊ジャンルとして扱われてきました。しかし最近では芸能界の第一線で活躍する俳優がキャスティングされるようになってきた。女性ファンを獲得するために事務所が進んでBLモノに出演させるという流れもあります」(ドラマ関係者)
若手俳優の登竜門ともなりつつあるBL作品。これまでどんな俳優が演じてきたのか。
時代とともに変わるゲイの描写
週刊女性座談会メンバーのエスムラルダさんがこれまでのBL作品を振り返る。
「かつてのBL作品は暗め、だいたい悲劇で終わる、主人公はひどく苦悩している、という特徴がありました。例えば、高嶋政宏×西村和彦の『同窓会』(日本テレビ系/'93年)は、西村の相手役の山口達也が殺されてしまいます。同年の『あすなろ白書』(フジテレビ系)では西島秀俊は筒井道隆に片思いし、トラックと衝突事故を起こし最終的に死亡という役」
なお、同時期に映画界でも、『おこげ』や豊川悦司と筒井道隆がカップルを演じる『きらきらひかる』などが上映された。
「今ではアパ不倫でおなじみの袴田吉彦のデビュー作『二十才の微熱』。ゲイバーで売春する大学生という役を初々しく演じました。田畑智子との間に2人目を授かったばかりの岡田義徳も『渚のシンドバッド』で苦悩するゲイの高校生役を熱演。その岡田を好きになるレイプされた女子高生が歌手になる前の浜崎あゆみです」(映画関係者)
子どもが欲しい独身女性とゲイのカップルを描いたのが『ハッシュ!』('01年)。
「ヘタウマ画伯などと言われる前の正統派美形の田辺誠一を愛でることができます。当時、おしゃれで人気だったモデル出身の田辺くんがゲイ役を演じたこともあってか、これ以降第一線で活躍する俳優が抵抗なく演じられるような流れができました」(同)
日本のBLドラマのあり方を劇的に変えたのが、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系/'18年)の登場だとエスムさん。
「田中圭くんをはじめ、キャストの演技や演出がひたすらポップで、その世界では男性が男性を好きなことが当たり前に受け止められていた。ある意味超ファンタジー。作り手がさほどゲイに詳しくないからこそなしえた世界だともいえます」
肥えた視聴者の目をうならせた本格派が、よしながふみ原作の漫画『きのう何食べた?』(テレビ東京系/'19年)。
弁護士のシロさんと美容師のケンジの淡々とした日常が美味しそうなシロさんの手料理とともに丁寧に描かれていくのだが、
「配役発表のときはイメージと違うという意見もあった内野聖陽ですが、さすがの演技力で完全に役になりきり、今では内野さん以外は考えられませんね。また、カップル役の山本耕史と磯村勇斗の2人も絶妙なハマり方で、磯村くん演じるジルベールは原作ファンからも絶賛でした。そして22歳のときに『あすなろ白書』で初めてゲイ役を演じた西島さんは、漫画のシロさんが肉体化したかのような佇まいで、さすがでしたね」(成田さん)
若手俳優だけじゃない「ゲイ役」
'16年公開の映画『怒り』の妻夫木聡と綾野剛は、役作りのため半年間、同棲して撮影に挑んだという。
「BLが主軸の話ではありませんが、ゲイの描き方はリアル。“若くて細い子には興味ない”というゲイまでが“ブッキーは別”と言わしめた妻夫木くんが、ついにゲイ役を……ということで、私の周りでもかなり話題に。綾野剛は、『クレオパトラな女たち』(日本テレビ系/'12年)でも誠実にゲイ役を演じた実績があるので好感度高いですね」(エスムさん)
深田恭子主演の『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系/'18年)で、主人公の深田、松山夫婦と同じ集合住宅に住むゲイカップルを演じた北村匠海と眞島秀和。
「北村くんが甘え上手な役でかわいかったんですが、不妊に悩む深田に寄り添うなどゲイ=女性の理解者というありきたりな役どころなのが残念でした。
ただこのころにはひとつのドラマに1おネエくらいな感じでちょい役にゲイの男性が増えてくるようになりました。『黒革の手帖』(テレビ朝日系)のおネエ美容師役の和田正人、『セシルのもくろみ』(フジテレビ系)では徳井義実がゲイのヘアメイクに。『半沢直樹』(TBS系)の片岡愛之助演じる黒崎だってそうですよね」(エスムさん)
'90年代からは様変わりしたBLの描き方。今後どんな俳優が演じてくれるのか。'21年はBL俳優に期待!
●エスムラルダさん●ドラァグクイーン、ライター。タイのBLドラマ、チェリまほに続き、2021年はどんな♂×♂ドラマにハマるのか!
●成田全さん●昭和生まれのライター。映画『his』と2人の初めての出会いのドラマ『his〜恋するつもりなんてなかった〜』もオススメ!
*記事内に「町田啓太さんと赤楚衛二さん主演の」とありましたが、正しくは赤楚衛二さんが主演、町田啓太さんが助演でしたので、「町田啓太さんと赤楚衛二さん出演の」と変更いたしました。訂正して、お詫び申し上げます(2021年1月25日13時45分修正)。