「ええっ、息子が逮捕された? ウソやろ! ほんまですか? 去年のことやのに、3か月も4か月もたって、なんで、いまごろなんやろ……」
と1月19日の逮捕当日、容疑者の父親は慌てふためいたーー。
昨年9月、釧路発関西空港行きのピーチ・アビエーション航空機内で、乗務員のマスク着用の要請に応じず、トラブルになり運航を妨害したとして、大阪府警は茨城県取手市の奥野淳也容疑者(34)を逮捕。
威力業務妨害と傷害、航空法違反の疑いだった。
事件当日、奥野容疑者はマスクをしないまま搭乗。マスクについて近くの乗客と言い合いになったため、女性乗務員に謝罪させるように大声で詰め寄った際に、腕をひねって軽傷を負わせたという。
容疑者のこうした行為は「安全阻害行為」に当たるとして、同機は新潟空港に臨時着陸。マスク不着用で国内線旅客機が臨時着陸するのは初めてのことに。結局、容疑者を降ろして再離陸したが、関西空港への到着は予定より2時間以上の遅れとなってしまった。
「私はノーマスクで外出します」
奥野容疑者は、2か月後の昨年11月上旬にも、長野県のホテルでの食事(バイキング)の際にマスク拒否でトラブルに。警察が出動する騒ぎとなっていた。
ピーチ機の事件について逮捕時には「事実は違う」と否認していた容疑者。
当初から『マスパセ(マスク未着用途中降機乗客)』と名乗るツイッターで、自身の正当性を主張していた。
ネット番組などにも出演して、積極的に発信。コロナ禍で、マスクをしない少数者が不利益を受けているとして、
《緊急事態でも私はノーマスクで外出します(中略)社会の中で「妥協しない自由」も認めることが、同調圧力の少ない“楽しい”社会を作ります》(以下、容疑者のツイッターより。本文ママ)
逆にマスク着用者を敵視しているわけでもなく、
《お互いの寛容を尊重し合うという点では、私は「マスクをする自由」も大切だと思います。コロナが収束局面に向かって皆がマスクをしなくなっても、自分の意思で着用を希望する人の権利もしっかり保障されるべきです》
と述べていた。
正月恒例の箱根駅伝では、沿道での応援自粛が求められていたにもかかわらず人出が多かったことで批判が出たが、
《一般道の歩道で観戦するかは個人の自由です! そもそも公共の道路を占有して駅伝レースをしている以上、国民一般に開かれていることは当然の責務》
と持論を展開していた。
父は「暴力をふるったりするような子じゃない」
大阪に住む冒頭の父親は、事件について、釈然としない思いがあるようだ。
「近くの人がマスクをしていなかった息子をヤジって“あっちへ行け!”みたいなことを言うたんで、それを客室乗務員の人に“注意してくれ”と言ったんでしょう。
息子はちょっと理屈っぽいところはあるけど、おとなしくて決して殴ったり、暴力をふるったりするような子じゃないですよ。どうも無理やりこじつけて罪にされとるような感じやね」
容疑者が激高した理由に心当たりはないのだろうか。
「息子が大声を出したと言うてるけど、言葉づかいはむしろ丁寧(ていねい)なほう。“マスクをしてください”と何度も言われたけど、それを断っただけでしょう。そもそも、飛行機は席をあけて座るから、そこまでうるさく言わんでもねぇ。
“席を移動してほしい”とも言われたけど、それも断ったと。ただ、それだけのことでしょう」
奥野容疑者は健康上の理由で、マスクを着用できないと主張しているが、持病があるのだろうか。
「いや、私たちと一緒に生活しとったときは、そんなんはなかったけどね。別々に暮らすようになってから15年以上にもなるんで、いまがどうかはよう知らんけど。息子はツイッターに“健康上の理由”って書いとるからね」
私立大学の臨時職員をしているわが子の発信はよく見ているという父親。
息子と同じ19日に逮捕が報じられた、大学入学共通テストで鼻だしマスクをしていた49歳の男を引き合いに、こう言葉を強めた。
「あれもそうやと思うけど、息子が逮捕されたのも、ちょうどコロナで緊急事態宣言になったから、そのための見せしめですやん! 過剰反応だと思うわ。なんか裏で大きな力が働いているような気がするなぁ」
逮捕、移送時もマスク着用を拒否してた容疑者。これから、留置場でも取り調べでも父親との面会の場でも、“ノーマスク”を貫きとおすのかーー。