『情報プレゼンター とくダネ!』(フジテレビ系)と『グッとラック!』(TBS系)が3月に終了することが発表され、平日朝の情報番組・ワイドショー枠がザワついている。後継番組の発表がされる中、やはり注目を集めるのが新番組のMC。
「『とくダネ!』終了後、その3日後から放送される『めざまし8』は谷原章介さんがメインキャスターを務めることが発表さました。『グッとラック!』の後番組には、お笑いコンビ・麒麟の川島明さんがMCに内定したと『週刊文春』が報じ、それぞれ期待と不安の声が上がってます」(スポーツ紙芸能記者)
番組の顔というだけあって、MCへの関心度は高い。特に、朝番組では『グッとラック!』の立川志らく、『スッキリ』(日本テレビ系)の加藤浩次、昼に目を向けても『バイキングMORE』(フジテレビ系)の坂上忍、午後帯でも『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ・日本テレビ系)の宮根誠司アナウンサーなど注目を集めるMCは多く、彼らの番組内の発言はSNSやネットニュースを盛り上げている。
そんな“よく喋る”MCの中で、よくも悪くもあまり話題にならない人がいる。それが『ひるおび!』(TBS系)のMCを務める恵俊彰だ。
静かではないが、炎上もしない
「恵さんは『ひるおび!』の司会を務めて10年以上になります。視聴率は好調で、番組が始まった当初はよくなかったものの、'11年の東日本大震災を機に数字を伸ばしていき、今では9年連続で同時間帯の平均視聴率がトップになるなど上位の常連です(午前の部と午後の部を合わせた全体の数字、2020年発表)。しかし他番組のMCの方のように毒づいたり、噛みついたりもしないので、炎上もしない。恵さん自身の発言が話題になることは少ないですね」(前出・スポーツ紙芸能記者)
だからと言って恵が“静か”というわけでもない。ほぼ毎日、『ひるおび!』を見ているという30代の主婦は、
「恵さんのこと、嫌いじゃないんですけど、確かにちょっとうるさいときがあるんですよね(笑)。特に中継中。リポーターが話している最中に恵さんが口を挟むから、タイムラグとかもあって、そのたびに話が止まってイライラしちゃう」
また、最近リモートワークで『ひるおび!』を見るようになったと話す40代女性は、
「今、新型コロナウイルスのニュースをメインでやってますが、“そんなこと聞いちゃうの!?”っていうくらい初歩的な質問を専門家にしたりすることもあります。あと、“うなずき”がうるさい(笑)。まぁ、それも恵さんらしいと言えば、らしいのかな」
とのこと。SNSにも、同じような意見が散見された。だが、10年以上も続いているのも事実。MC・恵の魅力はなんなのか。
ニュースを邪魔しないスタイル
「恵さんって、好きでもないけど、嫌いでもないという人が多い。いつもニコニコしていて、自己主張も強すぎない。番組自体、討論したり荒れたりしないので、“ながら見”に最適なんでしょう。恵さんの所属事務所・ワタナベエンターテインメントのカラーというか、所属のタレントさんには、そういう方が多いんです。例えば中山秀征さんとかビビる大木さんとか」
そう話すのはコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さん。意見をズバズバいう他番組のMCと比べ、恵の発言は何となくパッとしないが……。
「坂上さんみたいな人がいいという人もいれば、苦手な人もいる。MCが自分を出しすぎてしまうと、それが視聴者にとって邪魔になる場合もあるので、そう考えると恵さんみたいなMCも悪いばかりじゃない。
番組側としても扱いやすいですし、『バイキング』のように必要以上に怒りを煽ったりもしないので、討論がうるさいと感じる人、ニュースさえ見られればいいという人にとっては十分ですよね」(木村さん、以下同)
だが、MCがニュースを淡々と進めていく意味では、同じ10時25分から始まる『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)も同じ気がする。
「テレビ朝日は、途中『徹子の部屋』や『おしゃべりクッキング』、昼ドラが入ってきて、興味のない人がチャンネルを変えてしまう時期がありました。でも、『ひるおび!』はずっと同じトーンなので、つけっ放しでニュースを見ていたい人や、逆に見てるか見てないかわからないくらいにダラダラ見るのには、ちょうどいいんです」
木村さん曰く、『ひるおび!』の需要は高齢者層。それゆえに作りも昭和的だという。
「視聴率トップとはいえ、見ている人は高齢者が多い。同時間の『バイキング』や『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)と比べて、ちょっと地味なイメージがありますよね。コメンテーターの面々を見てもそう。作り方も、わざとアナログっぽく、昭和っぽく作られている。
『ひるおび!』がこれだけ成長していったのには、恵さんのMCスタイルによるところも大きい。恵さん自身ではなく、あくまでも恵さんの司会に需要がある。ニュースを邪魔しないスタイル。恵さんの場合、主役はニュースであり、見てくれている人なので」
視聴者の声を代弁
確かに、『女性自身』(2019年10月16日掲載)のインタビューで、自身のことを「芸能界しか知らない偏った人間」とし、世間の人が何に興味があるかわからなくなったときは、妻に意見を求めることを明かしている。
「等身大で常に視聴者目線。視聴者が今知りたいことにアンテナを張って、その代弁者として専門家に質問をぶつけていく。自身の意見というよりは、あくまでも視聴者はこう思ってますよ? というスタンス。坂上さんや小倉(智昭)さんは“僕の意見として言いますけど”という前提で話すことが多いですね」
さらにSNSでは恵のMCに対して《偉い人たちに媚びてる感じがイヤだ》なんて意見も聞こえてくるが、これについてはどう考えるか。
「確かに、大物とか力を持っていそうな人には、敬意を払って、悪い言い方をすればおもねることを否としないところがあります。でもそれは、ご自身の中で、批判したり噛み付くのを求められてないことがわかってるのかと。
それが中継リポーターやお天気キャスターが相手になると、つい芸人さんらしいところが出ちゃう。『関口宏の東京フレンドパーク』(TBS系)でゲストをイジったりする感じというか、本来はノリのいいお調子者のキャラなので、そういうクセが出てしまうんだと思います」
目立ってナンボの世界。自分の色を消すというのは、そう簡単なことではないだろう。
「芸人さんは特にそうだと思いますよ。コント師としての恵さんは素晴らしい方。それに『下町ロケット』に出演するなど演技もうまい。僕からしたら、“昭和的な情報番組の司会者を演じている”ようにも見えるし、淡々と司会をやってる姿は本当の恵さんじゃないのかなと。恵さんも中山秀征さんも、番組前にすごい勉強する真面目な方なんですよ。スタッフから求められ、世間から受け入れられているキャラを、全うしている感じがしますね」
どんな人にも必ずアンチはいる。だが、よくも悪くもあまり話題にならないものの、結果的に数字を出し、10年以上も“番組の顔”であり続ける恵は、結局のところ“勝ち組”なのかもしれない。