藤原竜也主演の『青のSP』(フジテレビ系/火曜21時~)、山田裕貴主演の『ここは今から倫理です。』(NHK/土曜23時半~)と学園ものが2作もある今期冬ドラマ。
「『青のSP』は警察が学校に入り込んで生徒を逮捕する、というトンデモ設定が注目を集めた初回。ふたを開けてみれば、主演の藤原さんの確かな演技力がそのトンデモ設定を一蹴していました。これからのヒットが期待されます」(ドラマ関係者)
とはいうものの、これまでの学園ドラマはトンデモ設定が大コケにつながるものが多かった。
「最近では田中圭くん主演の『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系/2020年)が類いまれなるしょうもなドラマでしたね。東大進学率が最も高い都内の進学校が舞台なのに、生徒たちは単細胞で頭脳派とは言えない行動ばかり。
さらに意識不明の恋人(松本まりか)、恋人を意識不明にした副担任(山田裕貴)が黒幕で……ってもうなんのこっちゃわからないのですが。最終的に圭くんは殺されてゾンビになり、同じくゾンビになった松本まりかと、この世をさまよう……学園ものを期待していた視聴者からはキョトンな展開。きっと脚本家の鈴木おさむさんがとにかくめちゃくちゃな筋書きをした『M』のヒットで味をしめたんでしょうね」(ドラマウォッチャー)。
平均視聴率は3%台で、ネットの実況もまったく伸びず、『M』の二匹目のドジョウとはならなかった。
「数多くある学園もので、大当たりするドラマっていうのはやっぱり軸がしっかりしています。そこにゾンビとか、奇抜な設定を入れちゃうと結局は視聴者もついてこない」
とはTVウォッチャーのくのいちこさん。
ありえない“トンデモ設定”
まずはありえないトンデモ設定の学園ものからスタートです!
逃走中の詐欺師が教師になるというありえない設定だったのが速水もこみち主演の『ハンマーセッション!』(TBS系/2010年)。平均視聴率は7・0%。
「ありえないという声もあったけど、アタシは楽しく見ていたわ。生徒役に今をときめく菅田将暉、竜星涼などが顔をそろえていて“眼福度”が高いドラマでした」(新宿2丁目ドラマウォッチャー)
敏腕経理が教師になったのは東山紀之主演の『お前の諭吉が泣いている』(テレビ朝日系/2001年)は、8・2%。
「生徒があとひとりでもやめたら廃校、という高校を救うために現れた伝説の経理マン(東山)が奮闘するというストーリー。第1話で自殺しようとしている生徒に対して“あなたは生命保険に入っていますか?”と無表情で問いかけ、自殺することの費用リスクを説くという場面でどっと疲れました(笑)。ただ、生徒役に赤西仁くんがいたため、一部のファンの間では伝説的ドラマになっています」(同)
ゼネコン勤務の土木作業員だった男が母校の校長になったのは江口洋介主演の『スクール!!』(フジテレビ系/2011年)は、9・0%。
「当時、民間人校長などが話題になったのでそれに乗っかった感が強い。教育のイロハを知らない民間出身の校長が子どもや親のさまざまな問題を解決していくというベタな展開。学園ドラマのセオリーを全部入れ込んだ感じなので、視聴率はコケても悪いドラマだとは思いませんよ。
放送期間中に東日本大震災が起こり、1話延期などがあった中でサンボマスターが歌う主題歌の『希望の道』がやさしく心に響いたのを覚えています」(同)
古田新太が女装教師となったのは『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系/2019年)。
「ダイバーシティ(多様性)を掲げた私立高校が舞台だからって、ゲイで女装家のおじさんを教師にするってどうなのよ。さらに娘もいるって、LGBTに乗っかりたい安易な発想のわりには、知識のない人には複雑な設定だなと思いました。
せっかく永瀬廉くん(King & Prince)、道枝駿佑くん(なにわ男子)、高橋ひかるちゃんなど旬の生徒役を集めたのだからもっと出世作になるようなドラマだったらな、と残念に思ってしまいます。それでも古田新太をはじめ、主要キャストの演技力があったので見られましたが」(同)
説得力がなかった押尾学
元ヤンが教師になるという設定は数多く、反町隆史主演の『GTO』、竹野内豊主演の『ヤンキー母校に帰る』(TBS系)などはヒットドラマとして語り継がれている。
そんな中、漫画『サイコメトラーEIJI』のスピンオフ作品でさらに元ヤンが主人公でヒットが期待されたのが、押尾学主演の『クニミツの政』(フジテレビ系/2003年)。ヤンキーのクニミツ(押尾)が、小学校の教師になって巻き起こす町の小さな奇跡を描くハートフルコメディー。平均視聴率は9・9%。
「“クニミツの言うことには不思議と説得力がある”と劇中、何度か出てくるセリフなんですが、押尾さんにはまったく説得力がない(笑)。彼の滑舌が悪くて何を演説しているのか聞き取れないこともしばしば。まだ少年だった柳楽優弥くんや少女時代の成海璃子ちゃんを拝見できます。それだけです」(同)
反町版のヒットを受けてリメイクしたにもかかわらず大コケしたのが、AKIRA主演の『GTO』(フジテレビ系/2012年)。
「生徒役に川口春奈、本田翼、西内まりや、中川大志、白濱亜嵐、山田裕貴、鈴木伸之など、反町版の生徒役よりビジュアルはよかったと思うんですけどね。AKIRAさんの演技は壊滅的ですが、原作の鬼塚に近い見た目ではありましたね。ただ反町さんが持っていた鬼塚のキュートさがまるでなかった。視聴率も反町版の35・7%の半分もいかない13・2%でした。シーズン2に至っては7・2%に……」(同)
山崎賢人や菅田将暉が生徒役
トンデモは教師だけではない。35歳の女性が女子高生になったのは、米倉涼子主演の『35歳の高校生』(日本テレビ系/2013年)。
「高校をわけあって中退した米倉が高校生活をやり直したいと、35歳で高校生に。そのキャラがすごい。キャバクラ入店初日の体験で売り上げナンバーワン、格闘技技術はプロ並み、休み時間には喫煙、放課後飲酒など破天荒をこれでもかと見せつけてくれました。毎回、生徒の問題を解決し最終的には自分の問題も解決。
見ごたえがあったのは米倉の制服姿がきれいなことと、山崎賢人や菅田将暉、野村周平、広瀬アリス、新川優愛と当時の生徒役代表をそろえたこと。視聴率は平均で14%で悪くないのですが、24%を記録した『ドクターX』の次に選んだ作品で期待が高かっただけにコケた印象」(同)
13歳の中学2年生が高校2年生になっちゃうのは、後藤久美子主演の『同級生は13歳』(フジテレビ系/1987年)。アラビアで生活していた成績優秀な夏子(後藤)が日本の私立高校に“飛び級”して……、というストーリー。
「当時、人気絶頂だった美少女・ゴクミで学園もの作りたかったんだろうな~。でもゴクミは大人っぽいから、実年齢の中学生相手だと浮くから高校生にしちゃえ、ということで作られたと予想(笑)。
担任教師に真田広之、ゴクミのお相手役に当時人気だった前田耕陽(元男闘呼組)。ゴクミありきで作られているため、容姿端麗の才女で正義感にあふれた少女という演出がこれでもかと見られます」(同)
ハゲをカツラで隠した中学教師を演じたのは竹中直人の『ライオン先生』(日本テレビ系/2003年)。
「重松清の原作は良作なので期待したのですが、先生がカツラという部分以外に面白さがなく、視聴者も竹中さん演じるライオン先生に魅力を見いだせなかった。6話ではついに視聴率が3%に。生徒の悩みを何ひとつ解決していないのに、みなライオン先生に集まってくる謎脚本に説得力がない。1話を残して10話で打ち切りに。相武紗季を発掘できたのがせめてもの救い」(同)
大コケしても受賞、映画化
視聴率は最低でも記憶に残る作品もある。平均視聴率2%を記録した長谷川博己主演の『鈴木先生』(テレビ東京系/2011年)だ。
「公立中学校を舞台に給食の食べ方から中学生の性行為に至るまでディープな問題に深く切り込んだ『鈴木先生』。ゴールデンタイムの連ドラとしては最低視聴率を記録しましたが、クオリティーを支持する声が多くギャラクシー賞テレビ部門優秀賞などの栄誉に輝きました。映画化もされ、ファンがいることを証明。
ヒロインの女子生徒に土屋太鳳、神経質な生徒に北村匠海など今ではお宝キャスティングの一面も」(同)
前出のくのいちこさんは「学園もの」の“見方”をオススメする。
「学園もののいいところは各事務所の売り出し中の若手俳優、アイドルをいち早くチェックできる点。あと、見ていて気持ちが若返ります(笑)」
藤原、山田の学園ものは跳ねるかコケるか!? はたまた出世する生徒役は現れるか。要チェックしたい。