お付き合いしている相手に、知人や友人を会わせたとき、彼(彼女)がどんな反応をするか。その反応で、その先に結婚があるか否かもわかります。ライターをしながら、仲人として婚活に関わる筆者が目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考える連載。今回は、知人や親族に会わせたときに、明暗を分けたカップルの事例をご紹介していきます。

婚活相手を知人や親族に会わせたときにの反応は?(写真はイメージです)

 

職場に突然訪問して、翌日「交際終了」に

 亮さん(41歳、仮名)は、彩菜さん(37歳、仮名)とお付き合いに入り、3か月が経ちました。

 ある週末のこと。亮さんは、彩菜さんが働く、あるショッピングモールの近くに用事があり、出向きました。彩菜さんは、モールの中にあるインフォメーションブースで案内係をしています。用事を済ませ、どうせだからとそのモールに立ち寄ってみました。すると、インフォメーションブースに、彩菜さんともう一人の女性が座っていたのです。

 働いている彩菜さんを見つけてうれしくなった亮さんは、そこに行って声をかけてしまいました。

「こんにちは〜」

 ウキウキ顔の亮さんに対して、彩菜さんの顔は歪んだそうです。

「今日は、何時まで仕事?」

「18時までですけど」

 彩菜さんは、「早く帰れ」と言わんばかりに、ぶっきらぼうに答えました。隣に座っていた同僚女性は、興味深そうに亮さんと彩菜さんを交互に見ていました。

 そんなとき、後ろから小さな子どもを連れた女性が来ました。

「お客さまが来たので」とムスッというと、今度は満面の笑みを作り、後ろの女性に、「何かお困りですか?」と話しかけました。

 この態度の違いに、亮さんは、“自分が来たことは迷惑だったのだ”と悟り、「またね」と言って、そこを立ち去りました。

 その日の夜、彩菜さんから、LINEが来ました。

『約束もしていないのに、職場に現れるってどういうことですか? 私は婚活をしていることを周りには内緒にしています。隣に座っていた同僚が変に勘ぐっていました』

 そして翌日、彩菜さんの相談室から、交際終了が来ました。

 約束もしていないのに職場に行くのは、明らかなルール違反。ただもしかしたら、彩菜さんが亮さんのことを大好きで、同僚女性に、「この人は、私の彼氏なんです」と自慢して紹介したい気持ちがあったのなら、突然の訪問も喜んだかもしれませんね。

友人夫婦に会わせて、外堀を埋めようとした!?

 幸恵さん(33歳、仮名)は、雄介さん(36歳、仮名)と交際して2か月が経ちました。2人は、相談室には内緒で2泊3日の旅行にも出かけていたようで、まだ真剣交際には入っていませんでしたが、それを飛び越えて、成婚退会しそうな勢いでした。

 結婚相談所には、“男女の関係になったら、成婚と見なす”という規約があります。それは、相談所を男女の遊び場にしないための抑止ルールです。ただ、大人の男女ですから、そこはお互いが納得づくなら誰も止めることはできません。それで結婚できなくても、そこは自己責任です。

 その旅行から帰ってきてからというもの、「なんだか雄介さんの態度が以前よりもそっけなくなった」と幸恵さんは感じていました。幸恵さんは、旅行をして男女の関係になって以来、雄介さんのことがますます好きになっていましたから、彼の気持ちが冷めてしまったのではないかと、心配でした。

 その心配は的中、それから間ものなく、雄介さんの相談室から『交際終了』がきたのです。

 私はびっくりして、雄介さんの相談室に電話をしました。仲人さんは、二人が旅行に出かけていたことは知りませんでした。

「そうだったんですね。それは規約違反ですし、旅行にまで行っておきながら、ここで交際終了にするなんて、女性に失礼ですよね。終了の理由をもう一度ヒアリングします」

 そして、翌日、お仲人さんからご連絡がありました。

「前々から気になっていたようなんですが、幸恵さんは、食事をごちそうしても『ごちそうさま』を言ったり言わなかったりで、旅行に行ったときは、一度も、『ごちそうさま』を言わなかったそうです。さらに、途中コンビニに立ち寄って飲み物を買っても、お金を払うのはすべて彼で、旅行中に一度もお財布を開かなかったというんです」

 旅行中は、3食一緒に食べますし、ずっと行動をともにしている。男性におんぶに抱っこのちゃっかりした態度に、旅行を終えて、気持ちが冷めてしまったのです。

 さらに、旅行から帰ってきた次の週末に彼女の家の近くのイタリアンレストランにランチに行ったときのこと。

 近所に住んでいるという彼女の女友達とそのご主人がいて、4人で食事をしていたそうです。

「彼が言うには、偶然そこにいたような説明だったけれど、『どうも仕組まれていたのではないか』と。旅行から帰ってきて以来、本当に幸恵さまとの結婚でいいのか考えるようになり、連絡も自分からはマメに入れなくなった。『友達夫婦を会わせることで、外堀を埋めるといいますか、結婚をより具体的に前に進めようとしたのではないか』と申しておりました。ただそれをされたことで、気持ちがより冷めてしまったようなんです」

 交際終了が来たことと終了理由を電話で告げると、幸恵さんは言葉をつまらせ、涙声になっていました。そして、言いました。

「お金をすべて出させていたというのは、私が、『ここは、私が払いましょうか』と言うと、いつも、『あ、いいよ、いいよ』と言っていたので、それに甘えていました。『ごちそうさま』を言ったり言わなかったりしたのは、自分では全く意識していなかった。旅行のときは、“もう一緒に泊まる関係になった”と思って、気が緩んでしまいました。親しき仲にも礼儀あり、ってことだったんですね。

 あと、友達夫婦がいたのは、本当に偶然で、私が仕組んだことではありません。あの日、結局4人で食事をしてお店を出たんですが、その後に彼が不機嫌だったのは、私に“仕組まれた”と思ったからなんですね」

 亮さんが彼女と“結婚したい”と思っていて、そこで友達夫婦を紹介されたのなら、自分が婚約者と認められたようで、逆にうれしかったでしょう。ところが、結婚に迷い出したときに紹介されたので、気持ちが大きくマイナスの方向に振れてしまったのです。

不意打ちで親を紹介されて、結婚を決意した

 祥平さん(38歳、仮名)は、朋美さん(37歳、仮名)と仮交際に入り、2か月がすぎました。彼女の明るくやさしい人柄には、とても好感を抱いていたのですが、結婚を考えるには、ひとつ気になることがあったのです。

 朋美さんはパートで働いて、仕事が不安定。昨年からのコロナ渦で、世の中全体の失業率も上がっているし、行き先が見えないご時世。祥平さんは、会社員でしたが、会社が傾けばリストラされるかもしれないし、もしかしたら自分が身体を壊して働けなくなることがあるかもしれない。そうなったときに、パートナーは手に職があったり、公務員で安定したりしている女性のほうがいいのではないかと考えていたからです。

 実際、もう一人仮交際に入っている女性、里江さん(36歳、仮名)が、公務員だったので、見た目や性格は朋美さんのほうがタイプでしたが、里江さんと結婚話を進めたほうが、堅実かなとも思っていました。

 あるとき、朋美さんと郊外にドライブに出かけました。終えて、彼女を家の近くまで送ろうとしていたときに、彼女がこんなことを言いました。

「家の庭に橙の木があって、実がたくさん実ったの。酸味と苦味が強いからそのままは食べないけれど、つゆの元に果汁を絞ってお酢を加えると、自家製ポン酢が簡単にできて、美味しいんです。少し持っていきますか?」

 せっかくなので、いただくことにしました。

「じゃあ、お母さんにLINEを入れておくね」

 そして、彼女の家に到着すると、家の前に橙が入った袋を持った朋美さんの母親が立っていたというのです。「これは、挨拶をしなくてはならない」と思い、車から降りていきました。

「はじめまして、今、朋美さんとお付き合いさせていただいています」

 すると、母親は、笑顔で言いました。

「とても優しくて誠実な人だと、娘から聞いています。よかったらあがってお茶を召し上がっていきますか?」

 せっかくなので家に上げてもらい、お茶と和菓子をごちそうにり、父親にも挨拶をしたと言うのです。

 その翌日、亮さんは私に連絡を入れてきました。

「先のことを心配して安全な結婚をするよりも、自分の気持ちを優先させようと思いました。里江さんとは、交際終了にして朋美さんと真剣交際に入ります」

 このケースは、男性は女性を好きだったけれど、彼女の仕事が不安定で将来的なことを考えると、前に進んでいいものかどうか悩んでいた。ところが、親御さんに会ったことで、背中を押された形になったのでしょう。

 そして、真剣交際に入って1か月後にはプロポーズをし、成婚退会をしていきました。

 相手に対してどういう気持ちでいるかで、相手の親しい友人や親族にあったときに、どう感じるかが変わってきます。

 こちらは結婚したいと思っているのに、相手がどうも煮え切らないときには、思いきって友人や親族に会わせてみるのも、相手の本心を知るきっかけになるかもしれません。

 もしも長年付き合っている恋人が結婚を言い出さないときには、「親に会って」と言ってみるといいですよ。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/ 新刊『100日で結婚』(星海社)好評発売中。