脚本家北川悦吏子氏が手がけた『ウチの娘は、彼氏が出来な!!』(日本テレビ系/以後ウチカレ)がSNS上で燃えている。
「『ウチカレ』はかつて恋愛小説の女王と呼ばれたが、最近落ち目の小説家・水無瀬碧役に子育てから約2年ぶりに復帰した菅野美穂、大学生でオタクな娘・空役に人気若手女優の浜辺美波。この豪華な母娘キャスティングが放送前から注目を集めました。
1話の放送直後にはツイッター上で、“今の感覚とのズレがすごい”、“役者のムダ遣い”“オタクの描写がひどい”など酷評の嵐。北川さん本人もツイッターで《書くたびに炎上する私…。》とドラマ評を目にしているようです」(テレビ誌記者)
北川氏はこれまで『愛していると言ってくれ』(TBS系)、『ロングバケーション』(フジテレビ系、以後ロンバケ)、『Beautiful Life~ふたりでいた日々~』(TBS系)などを手がけ、1990年代には30%超えの恋愛ドラマを連発し“恋愛の神様”とまで呼ばれた脚本家。ですが彼女の名前をネット検索すると《=古い》などの不名誉な言葉が出てきてしまうように。
TVウォッチャーのくのいちこさんは、「北川作品が燃えるのは昔からのことです」と語る。
「セリフのテンポがいい、面白いという意見がある一方、話の内容が古臭く、感覚がズレている、笑いのセンスがヤバすぎるという意見も2000年代からはあり、好き嫌いが分かれるんですよね。また北川さんの作品のセオリーとして、イラッとするヒロイン、振り回されるイケメンという構図があります。
強烈な女性が物語を引っかき回して展開していくというパターンは、中森明菜さんががらっぱちなダンサー役を演じた北川さん初の連ドラ『素顔のままで』(フジテレビ系)からあまり変わってませんね」(くのさん)
キムタクとタッグでヒット連発
その後、北川氏は木村拓哉を『その時、ハートは盗まれた』(フジテレビ系)で発掘。『あすなろ白書』(フジテレビ系)、『ロンバケ』とタッグを組み、ヒットを連発していく。
「『あすなろ白書』は柴門ふみさんが原作なので、オリジナルではなかったのですが、ヒロインを演じた石田ひかりさんにアンチがわくほどウザいキャラに仕上がりました(笑)。でも北川さんのすごいところはヒロインがウザければウザいほど男性俳優を輝かせるのです。
木村拓哉さんが演じた取手の“俺じゃダメか”のバックハグは伝説的な名シーン。『ロンバケ』は山口智子さんの同性からの支持が圧倒的だったのもあって、そこまで嫌われませんでしたが、山口さんじゃなければヒロインの南は相当嫌われていたと思います」(同)
昨年、コロナ禍で再放送され話題を呼んだのが『愛していると言ってくれ』。耳が聞こえない画家の晃次(豊川悦司)と役者の卵の紘子(常盤貴子)が織りなすラブストーリー。
「紘子うざかった~! 『愛していると』でググると《紘子 ウザい》と出てきますからね(笑)。紘子が早とちりして晃次の浮気を疑ったり、自分のことを好きな男とつかず離れずで浮気したり、とにかく暴走する。そんな紘子を優しく見守るトヨエツが切ないのよ」
とは2丁目ドラマウォッチャーの豊田さん。
ヒロインではなく、男性側がエキセントリックだったのは、豊川悦司・中山美穂主演の『Love Story』(TBS系)。
「気難しい恋愛小説家の豊川さんと振り回される編集者に中山美穂さん。香取慎吾さんもモテモテなDJ役で出演していました。不思議なことにエキセントリックなのが男性だったせいかあまりイラつかずに見ることができた稀有な作品です(笑)。日曜劇場での放送だったのですが、落ち着いて休日の夜に見ていられました」(くのさん)
同じく日曜劇場枠でイラッとさせられたのが、大学生の恋愛を描いた『オレンジデイズ』(TBS系)だと豊田さん。
「柴咲コウちゃんが耳の不自由な学生なんだけど、もうとにかくわがままなのよ~。振り回されるのが妻夫木くん。子犬のようなうるうるした目でオロオロする妻夫木くんを見ながら“こんな面倒くさい女、捨てちゃいなっ”と何度テレビに叫んだことか」
視聴者をイラッとさせながらも、いずれの作品も高視聴率をマークしていたのだからすごい。
ツイッターを理解していない
「北川さんは今の時代を取り入れないほうがいいと思うんですよね」とは前出のくのさん。
「ツイッターが普及し始めたころに書いた『素直になれなくて』(フジテレビ系)がとにかくひどかった。瑛太さんが“ツイッター見たよ”って上野樹里ちゃんに電話しちゃうんですよ。メールと勘違いしているような、作品に文明の利器を反映できていない感じがつらくて」
平均視聴率は11・2%と北川作品にしては低い数字。以降、『ウチカレ』まで民放では書いていなかった。
朝ドラでも炎上した
北川作品がついに朝ドラに殴り込みをした『半分、青い。』。このヒロインも片耳の聴力が失われている設定。“28歳はおばさん”“32歳は高齢出産”など炎上につながるセリフが多かったことから《#半分、白目》というハッシュタグが躍った。
「幼なじみの鈴愛(永野芽郁)と律(佐藤健)が互いのことを好きだけど、すれ違ってほかの人と結婚、離婚し最後に結ばれるというストーリー。戦争も描かずに、大きなドラマもなく主人公らがくっつきそうでくっつかないを半年もひっぱった北川先生に拍手ですよ!
中村倫也さんをブレイクに導いたのもこの作品でしたよね。ヒロインを演じた芽郁ちゃんは、《この作品のときだけ嫌いになった》などとさんざんな言われようで……」
そして今回、満を持して民放作品に復帰を果たした『ウチカレ』。
ツイッターには早くも《#クソカレ》というハッシュタグが出現しているが、『ウチカレ』のヒロインは落ち目の恋愛小説の女王という設定。今後どのような復活劇を見せてくれるのか。