歌手の華原朋美(46)が、本格的に再始動する。2020年9月に、約20年間所属した事務所との契約を解除し、フリーに。その後は主にYouTubeの配信で近況を伝えてきた。2月11日に、自身初となる配信ライブを行うことを決定。実に2年ぶりに歌声を披露することとなる。
1995年に歌手デビュー。『I BELIEVE』『I'm proud』といったミリオンヒットを連発し、アルバム『LOVE BRACE』と『storytelling』の2作はミリオンセールスを記録。当時は「平成のシンデレラ」とも呼ばれ、街には彼女の言動やファッションをまねした「カハラー」と称された女性たちがあふれたものだった。
だがその後、一転。彼女の紆余(うよ)曲折の人生は、日本中が見つめてきた。苦境を何度も乗り越えて来た彼女は、どのような日々を送り、考えているのか。さらに今後の意気込みについて語ってもらった。
「フリーになって大変なことは、人に頼れないことですね。今まで事務所がやってくれていたことを自分でやらなくてはならない。契約関係や、ライブのスタッフさんとの打ち合わせまで、細かいことまで自分で決めなくてはならないので、本当に大変です。
今は育児の真っ最中ということもあって、以前ならそこまで大変ではなかったかもしれないのですが……。でも、一度は経験してみたかったことでもあります。あと、事務所の壁紙を選んだりとか、内装を自分で手がけたりとか、楽しい面のほうが多い気がします。ホームセンターに行ったりするのが好きなので」
YouTubeでは「素のままで」
未婚の母として、もうすぐ2歳になる息子と、愛犬と暮らす。基本的に育児をひとりでこなしているが、YouTubeの撮影の際や、仕事の打ち合わせなど、忙しいときは母親に手助けしてもらっているという。
9月から開始したYouTubeチャンネルでは、近況報告や質問への回答、ヒット曲の作詞の秘話、グルメレポート、ジムでのトレーニング風景など、ファンでなくてもつい見てしまうような内容を配信している。
「YouTubeは、みんながやっているので始めてみました。ゴージャスに作りこんだりして気取った感じでもいいんですが、思っていたことを自由にしゃべったり、素のままのほうがファンのみなさんが喜んでくれると思って。一応、撮影の前にワーッとメイクしてライトを当ててるんですね。
でも疲れているわけでもないのにやつれた感じに撮れているときがあって、“これも今の自分だし”と思ったりしたんですけど、さすがにやばいな、と。そう思って消したりもするので、けっこう気にしています」
コンビニでおいしいものを見つけるのが好きで、YouTube内で紹介をする。
「ファンの方から“買ったよー おいしかった”なんてコメントをいただくのは嬉しいですね。最近のおすすめは、ナチュラルローソンのクロワッサンと、セブン-イレブンのチョコクレープです。特にチョコクレープは、自分へのご褒美としてよく買うんですけど、昔からクレープが大好きで。デビュー当時も変装してお店に買いに行っていたくらいなんです。それくらい頑張って買いに行っていたレベルのクレープが、今ではコンビニですぐ買えるんで。いい時代になったと思います」
YouTubeには時折、息子さんが映りこむことも。可愛らしい声でママを呼ぶ声も入る。
「それも私の日常の一部なので。そのままでいいかな、と。子どもは、ほんと可愛いですね。本当に、大切な存在です。毎日、朝ごはんを食べさせて、託児施設に預けに行って、迎えに行って夕ごはんを食べさせて、お風呂に入れて、遊んで、寝かしつけて……、育児はそれなりに大変なんですけど、息子と過ごしていると、こんなものか、って思えてしまうんです」
芸能界には入ってほしくないし、危ないから乗馬もさせたくない。
「でも、人間的にしっかりしそうだから、坂上忍さんの学校(坂上がプロデュースする子役のレッスンスクール)には、通わせたいなと思ったりもします。乗馬も、ポニーなら乗せてもいいかな、と。最近、表参道で息子をベビーカーに乗せて歩いていたら“赤ちゃんモデルになりませんか”って、スカウトされたんですよ。とってもうれしかったですね」
母となったことで、“家族”に対しての思いも変わってきたようだ。
「どこの家族とも同じように、うちもいろいろありますよ。でも、いろいろサポートしてくれてきたので感謝はしています。特にお母さん。忙しいときは、だいたい母に息子をみてもらうんですが、本当に可愛がってくれています。息子の洋服を買ってくると、着せる前に加工をしたりしていますね。私よりもおばあちゃんのところへ行ってしまうことも多いです。しかたないですけどね」
息子と過ごすときは、自身のDVDを見せてあげると喜ぶ、という。
「よく寝る前に見せるんですけど、音や歌より、キラキラとした照明が楽しいみたいなんです。とっても喜びますね。映っているのが私なのかは、まだわかってないんじゃないかな、と思うんですけど。息子には、歌手にはなってほしくないかな、と。でも、この先どう言うかわからないですけどね」
出産後の方が歌声が出るように
母になったことは、自身にとっていいことばかりだと語る。
「本当に息子が可愛くて。息子のためならなんでもしてあげたいです。あと、出産してからのほうが歌声が出るようになった気がします。特になにもしていないんですけどね。のどを潤わせるにはウーロン茶などより、油分が含まれた液体を取ったほうがいいとは思います。昔は万全の注意を払っていて、のどの消毒液とかいつも使っていたのに、急性咽頭炎になったりしてましたからね。仕事が忙しすぎたのもあると思うんですけど」
実際、華原ののびやかな歌声に癒されてきた人は多いことだろう。この日は配信ライブのリハーサルも行われ、スタジオ内では誰もが口ずさめる華原の曲が続いた。
「私にとって、歌うことは生きていく道。今まで何度もダメになったりよくなったりを繰り返してきましたが、落ち着くたびに、私の生きる道は歌うことなんだ、それしかできない、って気づくんです」
今回の配信ライブを企画、サポートするライブ配信サイト『マホキャスト』代表のチョ・ユンサンさんはこう語る。
「マホキャストは、素晴らしいアーティストのライブを、アーティストたちの負担を減らし意向を十分に汲(く)み取りながら、従来のファンはもちろん、国内ひいては世界中に届けたいという思いで運営しています。華原朋美さんは日本を代表するアーティストのひとりです。そんな彼女の歌声を、待っている人たちや彼女の魅力をまだ知らない人たちに届けられることは、とても光栄です」
私には歌がある
コロナ禍で不安を抱える人々が多い昨今。華原はこう考える。
「私もつらいです。たぶん、つらくない人なんていないんじゃないでしょうか。ニュースを見ていると、この状況は個人個人ではどうすることもできないから、もうちょっと行政がなんとかしてくれないかな、とも思います。自分の力でどうにもできないときは、過去を振り返りすぎたり、未来を考えすぎたりするのではなく、今を大切にすることが重要なんじゃないかな、と思います。
この状況は、まだ終わらないと思うんですよ。終わらない中で、自分ができることを見つけるといいんじゃないかな、と。なにもない、というところだけを見ていると、よけいつらくなってしまう。すべてをなくしてしまったと感じていたとき、自分になにがあるかなと考えたとき、自分にあったもの。それが私には“歌”でした。今はそこに息子が加わりましたが」
配信ライブは初めての試みとなる。
「客席の反応がダイレクトに伝わらない点などがちょっと心配です。でも、いろんなところにいる、よりたくさんの人たちに届けられるのはとてもありがたいと思っています。今後、定期的に開催していきたいと考えています。みんなにいつもどおりの私を届けたい。いつでもそばにいることを忘れないでね、と伝えたいです」
波瀾万丈(はらんばんじょう)な人生を乗り越え、護(まも)る存在ができた華原。平成のシンデレラは令和でどう称されるようになるのか。当日の配信ライブに、その答えのひとつがあるだろう。
取材・文 木原みぎわ
https://www.mahocast.com/kahalatomomi/live/6349
【配信日程】2月11日(木)祝日 20:00〜21:00
【ネットチケット】3,500円(税込み)
※ネットチケット・アーカイブチケットともに同額
※LIVE配信でチケット購入された場合もアーカイブ視聴可能