ゆきぽよ

 かつて「元カレ5人中4人が逮捕」の衝撃エピソードで一躍ギャルタレントとしてブレイクしたゆきぽよこと木村有希がピンチを迎えている。

『週刊文春』(2021年1月28日号)のスクープで明らかになったのは、2019年に友人男性が彼女の自宅でコカインを使用し、緊急搬送の末に逮捕されていたこと。友人男性の溜まり場になっていたゆきぽよの自宅は家宅捜索され、尿検査まで受けていたのだという(結果は陰性)。さらに、この男性は前年にも振り込め詐欺の容疑で逮捕されていたことも判明し、もはや“ヤンキー友達がやらかした”では済まされなさそうなインパクトだ。

 これには本人も相当まずいと感じているのか『文春』の記者を前に、これまでのキャラを一新するかのような発言を繰り出している。

《今回の件は、生まれ変わろうと思えるきっかけになった。携帯の番号を変えて、ラインを変えて、もうヤンキーたちとの縁を切ろうと思います。ちゃんと働いていて、ちゃんと定時に帰ってくる人とお付き合いしたいです》

 あのゆきぽよに、そこまでして芸能界に残りたいという意志があったのか、と驚く。 “ヤンチャでパリピなギャル”という個性を封印し、サラリーマンと暮らすゆきぽよは果たしてテレビ界で生き残れるのだろうか──。

ギャルタレに求められる“バラエティースキル”

 高校生のときに『egg』の読者モデルとして活躍していたゆきぽよが、「元カレを引きずっていた自分を変えたい」と恋愛リアリティー番組『バチェラー・ジャパン』に参加し、一躍有名になったのは20歳のとき。それをきっかけに出演したテレビ番組で、あの「元カレ4人が捕まった」エピソードをかましたのである。当時はどうにか爪痕を残そうと必死だったらしく、

《マネージャーと1時間かけて徹底的に台本を読みあわせました。全体の流れはもちろん、自分以外の内容も頭に叩き込んだのをしっかり覚えています。(中略)それ以来、台本は2、3回読み返して、流れと要所で自分が言わなきゃいけないキーワードをきっちり抑えるようにしています》(『FLASH』2019年11月19日号)とある。

 いわゆるギャル雑誌の読者モが“ギャルタレ”としてテレビ界に進出する流れの元祖は小森純あたりだろうか。あのころはギャル特有の「おバカで、恋愛事情にオープンで、ぶっちゃけトークができる」といったキャラクターは目新しく、お茶の間にウケていた印象だが、近年はギャルタレに求められるバラエティースキルはかなり高度化していると思われる。

(左から)藤田ニコル、みちょぱ

「空気を読んで前に出すぎず、若者の代弁者としての意見もズバッと言えて、セクハラまがいの発言もうまく受け流せる」──こんな感じだろうか。

 ギャルタレに多くの能力が求められるようになったのは、世代交代がなされず、オジサン芸能人ばかりになったテレビ界の生態系と無関係ではないだろう。藤田ニコルもみちょぱもゆきぽよも、20代前半にしてすでに“技巧派タレント”の趣すらある。

ゆきぽよの自伝を読んでみた

 今やギャルよりタレント色の強いニコルやみちょぱとの差別化を図るためなのか、ゆきぽよは「若者文化に敏感なパリピ」というキャラクターを強く押し出し、ギャルであることにこだわる。すでに100本超えの番組出演をしていた2019年末には、アルコールの過剰摂取による『腹膜炎』で緊急搬送されたと報じられたが、その背景にはキャラを貫くために密かにやっていたことがあったようで……。

《寝る間も惜しんで、クラブで飲み歩いています。新しい若者言葉やコールをちゃんと覚えないとエセギャラになっちゃう。ギャル達に『ゆきぽよの情報、遅っ!』って思われたくないじゃないですか》(『FLASH』2019年11月19日号)

 別のインタビューでは「コロナの時期はガールズバーで若者言葉を教わっている」とも。もはや現役ギャルというよりは若者文化専門家である。

 そこまでして“ギャルタレ”としてテレビに出続けたい理由は一体何なのだろう。

 それを知るには半生を綴ったというエッセイ『ゆきぽよ流 愛される秘訣』(KADOKAWA・2019年11月7日初版発行)にヒントがあるのではないか──。ということで、読んでみた。

エッセイ『ゆきぽよ流 愛される秘訣』

 仕事について語った『YUKI`s JOB論』には、ルーティーンワークが苦手で部活もバイトも続かなかった彼女にとって、テレビに出ることは“天職”だと書かれている。

《緊張するし、失敗もするけど、今の仕事は毎日違うことさせてくれるからちょー合ってる。天職だね。仕事は大好きなことしかやってないから遊びと変わらない。つまんない仕事なんて一個もない》

 注目すべきは「毎日違うことを“させてくれる”」という表現。このことからわかるのは、彼女が、SNSなどを使って自らコンテンツを発信することよりも、オファーを前提としたテレビに、よりタレントとしての適正を感じているとみられることだ。能動よりも受動な仕事のほうが合っているということか。高校時代にアプリ『Vine』で6000万回も動画が再生され、YouTubeチャンネルは約35万人もの登録者がいる。それでも、「テレビ出れないなら、ゆきYouTubeで頑張ろ〜」と軽いノリで切り替えないのには、そのような心理が働いているからかもしれない。

ギャルになった理由は──

 そしてもうひとつ。

 彼女がギャルになったのは、メイクやネイル、服装がかわいいという外面的な要素に憧れたのがきっかけだが、エッセイによれば以下のような“野望”もあったのだという。

《ギャルになった理由のもうひとつが、権力欲しいってこと。権力好きだねーゆき(笑)。地元横浜の中学生って言ったらゆきぽよっしょ言われたくて、とにかくかわいく、有名になれるように努力した。少しずつ名前が知られるようになって、男の子からの誘いもくるようになってきて、高校では権力手に入れたって思った》

 目立ちたがりで有名になりたいギャルにとって、テレビに出続けることは成り上がりの最終形態なのかもしれない。ファンを囲うSNSより、全ての世代にリーチするテレビのほうが彼女にとってより権力的なメディアということだろうか。

《ギャルってだいたいみんなテキトーだから友達といると悩みとかどうでもよくなってくる。ギャル最高! よいちょー!》

「友達は地元横浜にしかいない」というゆきぽよは今回、文春砲を受けて携帯の番号やLINEを変え、ヤンキー仲間を切ると宣言した。はじめてテキトーではどうにもならない壁が立ちはだかったわけだが、やりらふぃ〜(パリピな人を表すギャル語)なノリを脱ぎ捨てどこへ向かうのか。

〈皿乃まる美・コラムニスト〉