有吉弘行

 有吉弘行が若手〜中堅芸人の即興ネタを○×で判定していくバラエティー番組『有吉の壁』(日本テレビ系)の注目度が、昨年のゴールデン進出後、ますます高まっている。

 番組は主に、アミューズメントパークや商業施設などを有吉と番組アシスタントの佐藤栞里が出歩き、芸人が現れてはネタを披露し、有吉が判定をくだすという「一般人の壁」というロケパートと、次にブレイクしそうなキャラクターネタをスタジオで披露する「流行語大賞の壁」で構成される。

チョコプラの“TT兄弟”がブレイク

「有吉自身も出演していた『内村プロデュース』(テレビ朝日)のオマージュのようなスタイルではありますが、いま、芸人たちがもっとも“出たい”と思う番組のひとつになってきています」

 と、ある芸能記者は言い、芸人がそう思う理由をこう話す。

「とくにチョコレートプラネットが披露した、“T”と書いた体操着を着てのリズムネタである『TT兄弟』が大人気となったことは大きい。この番組を飛び出し、ほかのバラエティーでもネタとして披露し、さらにはCM出演もしました」

 TT兄弟に続けとばかりに、人気芸人たちのキャラクターネタが、番組注目度の上昇と相まって次々と登場するようになった。ジャングルポケットが、謎の動きで“どこにも効かない”ストレッチ体操をする「ストレッチャーズ」は、登場してほどなく日清食品のCMに起用された。

ジャングルポケットの「ストレッチャーズ」(日清のCM/YouTubeより)

 また、お笑いコンビのきつねが2.5次元アイドルの舞台をパロディ化させた“2.7次元アイドル”「KOUGU維新」も初登場から大評判で、番組公式YouTubeの再生数も好調。のちにトム・ブラウンや四千頭身・石橋、パンサー・向井らも巻き込みメンバーも追加、昨年末には「最初で最後のミュージカル」まで開催するほどの人気を獲得した。

「この番組は視聴者判断の前に、まず有吉が面白いか面白くないかを判定してくれるので、芸人側も新ネタを出しやすいという側面もあります。さらに、ここで認められれば、“ほかに出しても大丈夫”というお墨付きをもらえるようなものなので、芸人たちは毎回チャンスを狙っていると思いますよ」(前出・芸能記者)

ブレイク芸人のカギを握る有吉

 この番組のあり方について、バラエティー番組などを手掛ける放送作家はこう語る。

「『有吉の壁』の中のいちコーナーですが、そのコーナー自体がキャラクターもののネタを出す“コント番組”仕立てになっています。その“コント番組”のためのキャラを作り、芸人さんたちがそれぞれのキャラを演じること自体がネタとなっている。その設定の面白さが人気の秘訣ですね」

 ネタやキャラクター自体の面白さに加え、そこに有吉が加わるところまでがパッケージとなり、さらに笑いを生むという。

「有吉さんのツッコミや、ネタを見ているほかの芸人さんの反応で、例えスベっても笑いに変えることができます。そういう空気が生まれることで、芸人さんたちもスベることを恐れずのびのびできるのではないでしょうか」(放送作家)

 とはいえ、この番組で一躍注目を集めても、何年も人気が持続するというわけではない。有吉は思いきりネタを披露する場を作るだけでなく、「そのネタ、飽きたよ」とハッキリ言うことで、結果的に“一発屋”を防ぐという役割も自然と果たしてくれているという。

 次々に新しいネタを誕生させては、早い速度で消費していく昨今のお笑い事情。もしかしたら、老若男女に受け入れられるネタを判断するキーマンは有吉なのかもしれない。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉