神奈川県の黒岩知事は「県民と痛みを分かち合う」と給料10%の削減を宣言。それでも月額の報酬は約130万円……この金額、どう思いますか――?
知事は平均130万円
「知事が医療従事者のことを“コロナファイター”なんて呼んだときはバカにしているのかってイラッとしましたね。知事の給料は私たちの税金。正直、県知事はもらいすぎでは? 金額に見合った仕事をしているとは思いません」
神奈川県の看護師の女性(30代)は憤る。女性は神奈川県の黒岩祐治知事のコロナ対応と彼がもらっている給与額を見比べて疑問を持った。
総務省によると神奈川県知事には月約145万円が支払われている(各種手当を除く、以下同)。47都道府県の知事の中でトップの金額だ。
千葉県に住む40代の主婦も怒りをあらわにする。
「うちの森田健作知事に不満があります。県庁に登庁してもすぐに帰ったり、一昨年の台風15号のときも災害対応が悪かった。普段からあまりまじめに県のための仕事をしていない印象です。それでいて高い給与をもらっているのはずるくないですか?」
千葉県の知事給与額は全国3位。月139万円が支払われているのだ。
働きぶりと給与額は比例関係にないようだ。
前出の総務省が調査したデータを見てみると最下位はなんと日本の首都・東京都。
テレビで見ない日がないほどにコロナ対応に追われている小池百合子知事。彼女の給与額は月約72万円と全国の知事の中でいちばん低いのだ。トップの神奈川県との差は約73万円。
だが、東京都知事の給与額が昔から低かったわけではない。2016年、第一期小池都政。当選した小池知事は自ら月々の給与を半減する条例案を議会に提出。都議会で、全会一致で可決された。
それに伴い、もともと月額約145万円あった都知事の給与が半分になったのだ。
コロナ対応で一躍、脚光を浴びた道府県知事たちの給与をみてみよう。
まず「さわやかイケメン」で注目された鈴木直道知事の北海道。東京都の次に低い約96万円。
Twitterで「#吉村寝ろ」がトレンド入りするほどコロナで奔走した大阪府の吉村洋文知事は約106万円で40位。
愛知県の大村秀章知事は約110万円で37位だった。
これらの道府県では東京都同様に知事給与を減らす政策をとっている背景もあるが、大都市圏の知事ほど意外ともらっていない印象だ。
左の表で見ると、大分県、京都府、愛媛県、栃木県、山口県あたりが知事の月給の全国平均にあたる。この金額を高いととるか、安いととるか……。だが、このコロナ禍で地方財政はさらに悪化の一途をたどっている。
「黒岩知事や森田知事も月額給与のカットを決めました。2人とも自分の働きが悪いと自覚しているからでしょう。すぐ隣の東京都の小池知事は神奈川・千葉の半分の月額給与ですから、マズイぞと……」
ジャーナリストの大谷昭宏さんは指摘する。
だが、各都道府県の知事給与の月額については「現状で妥当の金額だと思います」とし、理由をこう説明する。
給与に見合った仕事をしているかどうか
「知事の給与は大企業の経営者に比べるとずっと少ない。知事たちの背負う社会的な責任、休みなく働く労働環境はずっと厳しい。知事にも労働に見合った対価を払うのは当然のことです」(大谷さん、以下同)
知事給与が極端に低い金額になると“これくらいの金額ならこの程度でいいか”と手を抜かれることも考えられる。
「ある市では市長の給与を中堅サラリーマンの月給ほどに削減しました。すると、今回のコロナ対応では県の足を引っ張ってばかりで……」
大谷さんはため息をつく。
「高い給与を支払うということは“これだけもらっているからしっかり働けよ”と言える権利。税金を払う私たちが雇用主として知事を働かせている、と考えてください」
だからこそ仕事ぶりが見えなければ、私たちが不満をもつのもしかたがない。
大谷さんは知事に限らず700人いる国会議員の給与額についても言及する。
「通常の国会議員の歳費(給与)は月約130万円。知事は災害が発生してもすぐに対応できるよう24時間待機し、このコロナ禍でも連日のように対応を協議、各都道府県の先頭に立っています」
ほとんどの知事が国会議員より月給はもらっていない。
「このコロナ禍で国会議員たちはどれだけの仕事をしているのでしょうか?」
自民党、公明党の議員が緊急事態宣言下の夜8時以降に銀座のクラブを訪問し、問題になっていたが……。国会中継でいつも寝ている議員だって多い。彼らの給与も税金だ。
冒頭の看護師はこう話す。
「国民が政治家の仕事ぶりを判断して、給与額を見直すシステムがあってもいいんじゃないかな。県民がもっと目を厳しくすれば、みんなまじめに仕事をするんじゃない?」
私たちの財布から払われる知事の給料。その期待値は1か月の給与よりももっと高いことを忘れないでほしい。
知事の給与ランキング
1 神奈川県 145万円
2 埼玉県 142万円
3 千葉県 139万円
4 広島県 138万9000円
5 福岡県 135万円
6 茨城県 134万円
6 岐阜県 134万円
8 宮城県 131万円
8 群馬県 131万円
10 静岡県 130万1000円
11 富山県 130万円
11 石川県 130万円
11 福井県 130万円
14 長野県 129万2000円
15 香川県 128万5000円
16 兵庫県 127万3000円
17 青森県 126万円
17 佐賀県 126万円
19 山梨県 125万円
19 滋賀県 125万円
21 山形県 124万円
21 熊本県 124万円
21 宮崎県 124万円
21 鹿児島県 124万円
25 岩手県 123万円
25 沖縄県 123万円
27 大分県 120万1300円
28 京都府 118万8600円
29 愛媛県 118万8000円
30 栃木県 116万1000円
30 山口県 116万1000円
32 鳥取県 115万1000円
33 和歌山県 113万7400円
34 長崎県 113万4000円
35 福島県 112万2000円
36 島根県 111万6000円
37 愛知県 110万3200円
38 高知県 109万8000円
39 奈良県 109万2600円
40 大阪府 106万4000円
41 岡山県 103万2000円
42 三重県 102万4000円
43 新潟県 102万0800円
44 徳島県 97万5000円
45 秋田県 96万8000円
46 北海道 96万6000円
47 東京都 72万8000円
※総務省「知事(市町村長)・副知事(副市区町村長)の平均給与月額」より抜粋。月の給与は低くとも、各種手当や退職金が支給されるので4年間で総額1億円超になる