「去年の3月でいったん定年退職されて、4月から再雇用で人生の第2のステップを踏み出されたばかりだったので、本当に驚いています……」
そう話すのは、情けない不祥事を起こした先生の同僚だった学校関係者。
落書きで中学教師が現行犯逮捕
1月中旬ごろから、神奈川県平塚市内の新興住宅街の丘陵にあるガードレールに卑猥(ひわい)な落書きが相次いでいた。
「書いては役所がペンキで消し、書いては消しの連続で、最後はそれでも追いつかず、テープで隠してあった」(地域住民)
いまではペンキで塗り直してあり判然としないが、その内容はというと……。
「縦5センチ、横10センチぐらいにカタカナで女性の名前、女性器の名称、女性器のマークが5か所ぐらい落書きされていました。
最初はガキのいたずらだと思っていたけど、まさか先生とは。その女性の名前は同僚の先生ではなくて、教え子の名前というウワサになっています」(別の地域住民)
落書きが続いたため、神奈川県警平塚署員が張り込んでいたところ、1月31日、日曜日の朝5時26分ごろ、男が油性ペンで落書きをしたので、器物損壊の疑いで現行犯逮捕された。
捕まったのは現場から約300メートルのところに住む、秦野市立中学校の教師・山口勝久容疑者(61)だった。
「落書きしたことは間違いありません」
と容疑を認め、余罪もほのめかしているという。
一連の犯行は名前の女性をおとしめる意味だったのか、欲求不満のはけ口だったのか──。
数学の教え方がうまいと評判の先生
山口容疑者は、自宅から車で30分ほどの隣接する同県秦野市で長く教鞭(きょうべん)をとっていた。
「スキンヘッドの強面(こわもて)の顔と同じで、厳しく怖いところもあるけど、ジョークで笑わすような面白いところもあった。数学の教え方がうまいと評判の先生」(元教え子)
2018年には「優秀授業実践教員」として県から表彰されて、ローカルニュースにも取り上げられたことが。
教科書を離れて面白い言葉で公式を覚えさせるなど、《印象派路線を開拓》と紹介されていた。
公共物に卑猥な落書きをするとはとんだ印象派だが、秦野市教育委員会は、
「数学の教師で前任の中学校では、美術部の顧問。現在の中学校では剣道部の顧問でした。非常に研究熱心で、教え方が素晴らしく、ほかの先生の模範のような先生だったので、とても残念です」
とコメントし、謝罪した。
そんな表の顔をもつ山口容疑者だが、私生活では“奇行”が目立っていた。
「早朝からラジオ体操など、ラジオを大音量でかけながら庭いじりをするのが日課でした。でも、体操をする姿は見たことがない。庭いじりをしていなくても、玄関からラジオの音が響いていて、けっこう耳障りだった」
と自宅近所の住民。
ほかにも、
「奥さんの庭いじりはまったく見たことがないの。10年前に奥さん、娘さんと引っ越してきたんだけど、娘さんは結婚したのか、最近は見かけないし、奥さんもいるのかどうか。2人は妙によそよそしいし、夫婦とは思えない感じ」(別の近所の住民)
父と息子だけを置いて引っ越した
近隣の厚木市の田園地帯で、長男として生まれ育った山口容疑者について、親族が語る。
「お父さんは左官職人だったけど、当時は建設ブームだったので、実入りがよくてね。
勝久さんはまじめでおとなしく優秀だったけど、弟さんと比べると、愛嬌がないというか、寄せつけない感じ。世間話などできない堅いタイプだった」
容疑者は地元の公立高校から大学に進学して、教師の道に。30歳前後で結婚し、長女と長男をもうけたが、25年ほど前に同居していた母親が急逝。
「その後もお父さんを含めて家族5人で暮らしていたんだけど、10年前にお父さんと息子だけを置いて平塚へ引っ越したのよ。
息子は高校生だったから転校できない事情があったのかも。息子に大学へ進学しないのかと聞くと、“うちはお金がないので行かない”と言っていました」(同・親族)
教師の給料があれば、大学に行けないことはないはずだが、家族間で何らかの不和があったのかもしれない。
祖父と孫だけの生活が数年続いたあと、息子は就職して独立。容疑者の父親だけの生活になっていた。
「5年前、お父さんの姿が見えないので、近所の人と民生委員、警察が家をこじ開けて入ると、中で倒れていてね。
数日たっていたようで、病院に搬送された。その間、勝久さんはいっさい連絡をとっていなかったみたい。親子なのに……」(同)
一命をとりとめた父親だが、その後、他界。容疑者は近所の人を葬儀に呼ぶこともなく、挨拶さえしなかったという。
家族やその周辺の人々とは向き合わず、“優秀”な先生になった容疑者だが、子どもじみた行為で、そんな名誉もフイにしてしまった。