「多くの保護者が犯行内容に驚いています。根っからの子ども好きが高じて先生になったような人なんです。子どもにとってはいい大人のお手本で、保護者の信頼も厚かったので……」

 と在校児童の保護者はショック冷めやらぬ様子で話す。

 児童、保護者らの信頼を裏切る嫌疑で警視庁に逮捕されたのは、東京都杉並区の区立小学校の教諭・永井貴久容疑者(37)。

永井容疑者が勤めていた小学校には激震が走った

 警視庁によると、昨年9月6日、新宿区内のネットカフェで女子中学生A子さん(14)が18歳未満と知りながら、現金2万円を渡してわいせつな行為をしたとする児童買春の疑いが持たれている。

「永井容疑者は援助交際をにおわせるツイッター投稿をきっかけに数年前にA子さんと知り合い、これまでに複数回、会っていた。1月27日に逮捕された当初はA子さんと会ったことだけ認めて“わいせつなことはしていない”などと容疑を否認していたが、取り調べが進む中で“完落ち”したようだ」(全国紙社会部記者)

 被害生徒を引っ張りこんだのは新宿・歌舞伎町のネットカフェだった。ツイッターで引っかけ、周囲から不審に思われるホテルを避け、足を踏み入れることに比較的、抵抗感の薄いネットカフェを選ぶあたりローティーン心理を熟知しているといえる。

 勤務先小学校の在校生保護者によると、学校では事件を受けて校長が全校児童に事情説明を行ったという。

「校長先生は“永井先生はお金を払って女の子の身体を触り、それは悪いことだと言って警察が捕まえました”などと説明したようです。高学年の児童は理解できたかもしれませんが、低学年の子は永井先生がいなくなったわけをどこまで理解できたでしょうか」

 と在校生の保護者は話す。

保護者たちは「いい先生」と口をそろえる

 同小は今年創立70周年を迎える歴史を持ち、校歌は言語学者で国語学者の金田一春彦さん(故人)が作詞している。

 周辺住民は「昔からずっと評判のいい学校で、こんな不祥事は初めてなんじゃないか」と残念がる。

「みんなのえがおにあえてうれしい」と勤務先小学校のフェンスにメッセージが。事件に笑顔ではいられなくなった

 永井容疑者は身長約180センチのやせ型で、得意教科は算数。4年生のクラスを受け持っていた。冒頭の保護者をはじめ、複数の保護者が「いい先生だった」と口をそろえる。

「受け持ち児童の面倒をみるだけでなく、全校児童に目が行き届く。ほかのクラスの児童にも算数を教える機会があって、教え方が上手だからか、算数が苦手だった子も得意になったみたいですよ」(在校生の母親)

 目が細く、いつもニコニコしていて、初めて会う保護者にも自分からあいさつするなど好感度は高かった。

 卒業生の保護者は言う。

「担任教師ではなかったのに、卒業後も顔を覚えてくれていて道ですれ違うたびに声をかけてくれるんですって。まじめで偉ぶるところがなく、子どもとは友達のようないい関係をつくっていました」

 教え子に性的好奇心をみせるそぶりなどいっさいなかったという。

 一方で、

「事件が起きた以上、学校は在校生や卒業生に被害がないかしっかり調べるべき。評判のいい先生だからこそ、子どもは被害を訴えにくいかもしれないんだから」

 と在校生の父親はクギを刺す。

 校長に取材を申し込むと、取材窓口は杉並区教育委員会に一本化しているとのこと。

 そこで同教委に対し、永井容疑者の勤務評価や、校内での被害調査をする予定があるかなどを尋ねると、

「少ない情報を集めて事実確認をしているところ。さまざまな対策をしているが、捜査段階でもあり、答えられることはない」(担当者)

 とにべもなかった。

高層マンションで妻子と暮らしていた

 永井容疑者の“教師の顔”について、別の卒業生はこう話す。

「男子とも女子とも遊んでくれる先生で“鬼ごっこ”が得意でした。体力があって、逃げるのも追いかけるのもうまかった。誰にでもやさしく、すぐに怒ったりしないので男子からも女子からも人気がありました」

 その人気ぶりはなかなかのもので、学校では永井容疑者の“ファンクラブ”がいくつも存在していた。

 なぜ、歌舞伎町で犯行におよんだのか。

 永井容疑者は杉並区内の高層マンションで妻子と暮らしており、自宅にA子さんを連れ込むことはできなかったとみられる。教え子と変わらない年ごろの少女を毒牙(どくが)にかけたのが事実ならば、微笑(ほほえ)ましい“ごっこ”ではなく鬼の所業といえる。

◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)

〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する