昨日までは誰もが憧れる存在だったのに、思いもよらぬことで人気がガタ落ち―。と思えば、嫌われキャラだったのにいつの間にやら愛されキャラに。一寸先は……芸能評論家・宝泉薫が、芸能界を生き抜く難しさを解く!
恋愛や結婚で「一寸先は闇」
芸能人の“好感度”を左右するスキャンダル。そのダメージで苦戦しているのが竹内涼真だ。
2017年のNHK朝ドラ『ひよっこ』でヒロインの相手役を演じて、ブレイク。
“国民の彼氏”とまで呼ばれていたが、昨年5月「恋人ポイ捨て」報道が飛び出した。
これは女優・吉谷彩子との3年愛を一方的に解消して、同棲していたマンションから放り出し、別の女優・三吉彩花に乗り換えたというものだ。“国民の彼氏”らしからぬスキャンダルがたたってか現在、放送中の主演連ドラ『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)も低視聴率にあえいでいる。
かと思えば、ハッピーなはずの話題で失速した人も。15年に女優・吹石一恵と結婚した福山雅治だ。“ましゃロス”に陥った女性も多かったが、本人の人気も“ロス”してしまった。
ただ、年齢的にきつくなっていたのも事実。結婚2年後に発表された『jazzとHepburnと君と』は『痛快TVスカッとジャパン』(フジテレビ系)のコーナー『胸キュンスカッと』のテーマソングだったが、ナオト・インティライミによる先代の曲のほうが視聴者ウケがよかった。福山の曲のヒロインはジャズとオードリー・ヘップバーンが好きな女子。若者向けのコーナーだけに、そんな女子、いまどきいるのかとツッコミを入れたくなったものだ。
また、水嶋ヒロは絢香との結婚により、所属事務所との関係が悪化。翌2010年に作家転向を宣言して、退社した。そのわずか1か月後に本名の「齋藤智裕」で書いたデビュー作『KAGEROU』が『ポプラ社小説大賞』を受賞。しかも、
「有効活用してほしい」
と、賞金2千万円を辞退したが──。あまりにもカッコよすぎる展開に、出来レース説もささやかれた。
ちなみに、賞金の一部は奄美大島への豪雨災害見舞いに使われたものの、中身はその出版社の刊行書籍500万円分。島民からは「あの本の山も、単なる売れ残りなんじゃないか」と皮肉られたりした。
一方、結婚で株を上げたのが山里亮太だ。ブサイク芸人の代表格だったのに、一昨年、蒼井優との“美女と野獣”婚で評価が大逆転。昨年からは『土曜はナニする!?』(フジテレビ系)という爽やか系の朝番組でMCも務めている。
なお、この枠でその前に放送されていたのが『にじいろジーン』。MCだったベッキーがゲス不倫で降板するなど、いろいろあって終了してしまった。そういえばベッキー、不倫後初の連ドラとなった主演時代劇『くノ一忍法帖 蛍火』(BSテレ東)では、入浴シーンでこんな意味深な台詞を言わされていたものだ。
「また、けがれてしまった」
そんな「けがれ」具合ではベッキー以上といえるのがアンジャッシュの渡部建。不倫騒動でクローズアップされた「多目的トイレ」について、先日、国土交通省が名称変更を検討していることも報じられた。なんにでも使えるわけではないことをアピールするためだという。
渡部もこの際、名前を変えて出直したほうがいいのかも?
代役や10年ぶりの漫才、
リベンジに燃えた人たち
2月7日に終了したNHK大河ドラマ『麒麟がくる』。不祥事で降板した沢尻エリカの代役に抜擢されたのは、時代劇初挑戦の川口春奈だった。
だが、2013年に初主演した連ドラ『夫のカノジョ』(TBS系)が低視聴率で打ち切りになるなど、数字が取れないイメージもあり、荷が重く感じられたものだ。
それがふたを開けてみると、大好評。織田信長の妻・帰蝶として黒幕的な役割も堂々と演じ、ネットでは「帰蝶P」とも呼ばれた。実はこの人、SNSで一般人の盗み撮りについて、
《みんなはどうかわからないけどわたしはそれは嫌なんだよな。すごくすごくすごくすごくね》
と異議申し立てをするほど、強気な性格。そこが、ピタリとはまったのだろう。コロナ禍によるスケジュールのズレで、放送再開後は出番が減ったが、視聴者からは「待望論」が飛び出し、23日放送の総集編ではナレーターを務めることに。まさしく、女優としての下克上に成功したといえる。
その川口も出演したドラマ『教場』シリーズ(フジテレビ系)で失地回復を果たしたのが木村拓哉。SMAPの解散では分裂状態を招いた戦犯のように見られ、好感度を下げたが、警察学校の謎めいた鬼教官という主人公をオーラたっぷりに演じ、さすがキムタクという評価を取り戻した。
リベンジにはやはり、本業で結果を出すことが近道なのだ。
お笑いでは、一昨年、アンタッチャブルが10年ぶりに漫才を披露し、コンビ活動を再開した。2010年に柴田英嗣が女性問題で騒がれ、1年間謹慎したのを機に、別々で活動してきたが『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)で共演が実現。柴田にとってはまったくのサプライズだった。
そのため、相方の山崎弘也が登場して漫才が始まっても、引け目のある柴田は途中で切り上げようとしたが─。山崎が、
「いやいやいや、まだ終われませんから」
と制止。最後までやりきったのだ。この「まだ終われません」には、コンビ復活を待ちわびた山崎の10年分の思いがこめられていたのだろう。笑えて泣ける名場面だった。
そして、お笑い界史上最大のリベンジに成功したのが有吉弘行。1996年に森脇和成とのコンビ・猿岩石として大ブレイクし、歌でも大ヒットを飛ばしたが、解散後、一時は仕事がまったくない状態に陥った。
そこから、ピン芸人として、あだ名をつける芸で再浮上。さらに、バラエティー番組のMCとしてトップクラスにまで上りつめた。特に『有吉の壁』(日本テレビ系)では、芸人たちのさまざまなネタを褒めたりけなしたりしながら、それも笑いにしてしまうという、かつてのビートたけしみたいなことをやっている。
実は、たけしと有吉は似ていて、それは地獄を見てきたということ。たけしはバイク事故でまさに死にかけたが、ただ、仕事が途切れることはなかった。低迷期に「自殺しようかな……と思っていました」という有吉のほうがむしろ、芸人として死に近い場所をさまよったともいえる。
そんなところから倍返し以上のリベンジを果たした有吉。その奇跡こそが、芸人たちから一目も二目も置かれるゆえんだ。
“女子力”は必ずしも成功しない!
女子力と好感度。それは必ずしも一致しない。
例えば、吉田沙保里のケースだ。レスリングで“霊長類最強女子”と呼ばれ、引退後はタレントとしても活躍。カラコンやまつげエクステを取り入れておしゃれになり、深田恭子と仲よくしたり、大ファンというNEWSの増田貴久にはハグされたりした。
ところが、世間の女子からは「どこへ向かっているの?」という声が。女子力アップが、逆効果となった。格闘技で世界一になるよりも、国民栄誉賞をもらうよりも、好感度の維持は難しいのだ。
ちなみに、吉田にとっての分岐点はレスリング界のパワハラ騒動。その際、日和見的な態度をとったことがマイナスだったとされる。が、はっきりとものを言えばいいわけでもない、というのが、近藤春菜のケースだ。
芸能人の不倫について、MCを務める『スッキリ』(日本テレビ系)で「外野が騒ぐべきではないのでは」と発言。「正義感がキモい」と反感を買った。
また、吉田における深キョンや増田同様、吉高由里子らとの交流がやっかみや分不相応だという反発をもたらしている。
そしてもうひとり、政治的な発信を始めて、好感度を落としたのが小泉今日子。ただ、この人の場合、不倫をして、長年所属した事務所をやめたあたりから、世の女性の支持を失っていた。
そのあたりから見えてくることがある。それは、女子力とは「女子」に「好」かれる「力」だということ。女子に嫌われるようでは「好」感度にもつながらない。
田中みな実にしても、その女子力がプラスになりだしたのはここ数年だ。もっぱら男性向けに使われていると思われていた魅力が、女性向けにシフトチェンジし、手本として使えるようになってからである。
それゆえ、彼女がまた男性のほうを向き始めると、その好感度は危うい。最近は北村匠海がお気に入りで、6日放送の『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)では本人に向かって「好きなんです!」とアピール。山里亮太から「とんでもない野良猫」とからかわれると、
「ニャー!」
と、ぶりっこポーズをしていた。元カレ・藤森慎吾と北村がちょっと似ていることから、好みはブレてないようだが、女子力の使い方もブレないほうがよさそうだ。
なお、女子力を上げる努力が好感度にしっかり直結した人もいる。有村藍里だ。朝ドラ女優である妹・架純と比較されるなどして、コンプレックスを抱えていたが、2年前に整形を決意。全身麻酔をしたうえで、6時間にも及ぶ大手術を受けた。
本人いわく「最初の1週間」は、
《顎の骨を切る手術をしているので、下顎の鈍痛が一日中ずっと続くんです。(略)もちろんまだ口を開くことができないし、気分がすぐれないから食欲もわかない。だけど、薬は飲まなくちゃいけないから胃と肌がどんどん荒れていく……》(with online)
というつらい状態。整形後の評価がおおむね好意的なのは、痛みと引き換えに自分を変えた切実さに共感できる人が多かったからだろう。
出川や江頭にみる好感度の変化
抱かれたくない男。そう呼ばれる存在がいつの世にもいる。
そのなかにはタモリのように、好感度を上げて長年「お昼の顔」として親しまれた人も。最近だと、出川哲朗や江頭2:50も昔とはずいぶんイメージが変わった。
まず、出川はリアクション芸人としていじられるだけでなく、冠番組『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』(テレビ東京系)を持つまでに飛躍。いまや老若男女に愛されるタレントだ。
その転機といえるのが、2011年から3年間、MCを務めた子ども番組『大!天才てれびくん』(NHK Eテレ)。10代前半だった岡田結実らを相手に、それまでほとんどやっていなかった仕切り役をこなした。おかげで、いじることもできるようになっただけでなく、この世代の子どもたちから絶大な親近感を得ることに。その数年後、大ブレイクを果たすわけだ。
一方、江頭については、芸の幅が広がったわけではない。むしろ、最近はユーチューブなどでもそのハイテンション芸を披露し、その持ち味を職人的に極めようとしている印象だ。
そのかたわら、ボランティア活動で話題に。きっかけは、10年前の東日本大震災だ。正体を明かさないまま、トラックで飲料水や紙おむつを被災地に運ぶ姿が「発見」され、ネットで「実はいい人」説が広まった。これについて本人が、
「いや、違うんだよ。ほかの芸能人はお金をものすごい金額で寄付してるじゃない。俺はお金ないからさ、身体で払ってきただけなんだよ」
と語ったことで、ますます好感度がアップしたわけだ。
逆にあの震災で、ちょっとたたかれたのがトータス松本。ACが制作した『日本の力を、信じてる。』というCMに出演した際、シャツのボタンをふたつはずしていたことなどが偉そうだと言われてしまった。
実はこの人、テレビ運がないというか、19年前の初主演ドラマ『ギンザの恋』(日本テレビ系)では数字がとれず、全10回の予定が7回で打ち切りに。
現在放送中の『おちょやん』(NHK総合など)でもヒロインの父という本来おいしい役なのに「朝ドラ史上最悪の毒親」と呼ばれ、視聴者からかなり嫌われている。本人も1月29日放送の『あさイチ』(NHK総合)で、
「テルヲ出てくんなって言われたらわかるんですけど、トータス出てくんなって言われるとへこむんですよね。俺じゃないねんけどって」
と、こぼしていたほどだ。
話を「抱かれたくない男」に戻すと、今まさにそういう存在なのがクロちゃんだろう。ただ、この人の場合は今後、好感度が上がる状況が想像できない。というか、キモくないクロちゃんは芸能界にいられないような気さえするのだ。
人気とはまた別モノという意味で、好感度は謎が深い。だからこそ、芸能人はそこに翻弄されるのである。