若者たちからの相談に乗るコレコレさん(提供画像)

「警察に相談したら親に知られて怒られる……」

 1月下旬、ユーチューバーの『コレコレ』さん(31)の生配信で、とある女子高校生が苦しい胸の内を話した。

生配信で女子高生の被害が明るみに

 コレコレさんとは、チャンネル登録者数133万人の人気ユーチューバー。

 彼が注目されたのは、冒頭の女子高生からの相談だった。

 彼女は人気ユーチューバーのワタナベマホトからわいせつな自撮り写真を強要され、送ってしまった。もし、写真が流出したら──。恐怖におびえていた彼女は、コレコレさんに被害を相談。生配信でその事実が明るみになった。

 コレコレさんはまず、女子高生にワタナベの行為が犯罪であることを説いた。そして彼に電話をかけて直接、写真の消去を求めることを提案。結局、ワタナベは配信中に電話に応じなかったが、彼女は視聴者やコレコレさんの言葉に心を動かされた。

 当初は警察に行くことを拒んでいた彼女も、最終的にはまず親に被害を明かすことを決心した。

 ワタナベは元・欅坂46の人気メンバー、今泉佑唯との結婚を発表した直後だったが、この騒動で所属事務所との契約を解除された──。

(左から)ワタナベマホトと今泉佑唯

 このように視聴者から寄せられた相談を解決に導くのが彼の番組の人気コンテンツのひとつ。コレコレさんのもとには日々さまざまな相談が寄せられているという。

「相談者のほとんどは10代、20代の若者で、8割が女性です。僕はどんな人でも“相談が来たらまずは乗るよ”というスタンスです」(コレコレさん、以下同)

 雨上がり決死隊の宮迫博之や元・乃木坂46の白石麻衣などと同じくらいのチャンネル登録者数を持つコレコレさん。それほどの人気がありながら、視聴者参加型の番組作りをしているユーチューバーはほとんどいない。視聴者と直接会話し、送られてきたコメントを読み上げる。その距離の近さも人気の秘訣だ。

 親にも友達にも言えない、そんな悩みを抱えた若者たちが助けを求める。コレコレさんはまさに“駆け込み寺”的な存在なのだ。

「昔からテレビでお悩み相談コーナーってあるじゃないですか、それの延長線上のような感覚。生配信での『お悩み相談』は10年くらい前から始めました」

原点はお悩み募集、深刻な相談も増えた

 すると4年ほど前から“性被害に遭った”“犯罪に巻き込まれた”などの深刻な悩みを打ち明ける人が増えてきた。

「最も多いのはSNSを通じて受けた性被害。それから、金銭トラブルやいじめです」

 ネットでつながりやすくなったぶん、危険が潜んでいる。

「孤独で寂しいからかまってくれる人がほしい、と願う若者は多い。今はSNSやチャット(ネット上で会話ができる)機能のあるゲームで出会うこともあります。一緒にゲームをやって親しくなる。そうすると、SNSを使って連絡をとり合い、会おうということにもなります」

 一般人だけでなく、前出のワタナベのように、自分の知名度を利用して近づいてくるユーチューバーもいるという。

 若者にとって有名なユーチューバーは芸能人のような憧れの存在。ファン心理に巧みにつけ込み、自らの欲求を満たすために利用されるケースがある。

コレコレさんのメインチャンネル。生配信後はユーチューブに動画が残る。写真の日の配信で女子高生がワタナベマホトからの被害を明かした(写真は加工)

性被害だけでなく高額な金銭トラブルも

 例えば、コレコレさんに相談した16歳の女子高生の場合。

 彼女のもとに、憧れだった20代のユーチューバーから連絡が来た。すると彼女は“仲よくなりたい”という気持ちで舞い上がる。性的な関係に発展し、当然“付き合える”と期待。しかし、その思いを裏切るように男はことが終わったら彼女を捨てた──。

 こうした話は少なくない。

「高名なユーチューバーや芸能人であれば安心、信用できると思いがちですが、決してそうではありません」

 中には身体の関係だけでなく、金銭を要求されたという相談もある。被害額は平均20万~30万円、最高で300万円を貸したが返ってこなかった女性もいたという。

若者たちは知識もないので、自分が犯罪に巻き込まれている自覚がない。一緒にゲームをして、LINEなどで通話をして同じ時間を過ごし、少し優しくされたら、すぐ好きになってしまう。そこにつけ込む大人は大勢いるのです」

 ネットに対して危機感のない若者が非常に多いことも危惧している。

「僕も番組内で再三、注意をしていますが、例えばSNS上で名前を出し、制服姿の顔写真を上げていれば簡単に学校や個人が特定されてしまいます。個人情報が流出すれば何らかの犯罪に巻き込まれる可能性がある。常に危険な状態なんです」

 性犯罪や金銭トラブルなどの被害者になったとき、身近な存在である親や教師、友達に、なぜSOSを発することができないのか──。

「まず、性被害に遭ったことを誰かに相談することはなかなかできませんよね」

 多感な年ごろの若者にとって、このような悩みを打ち明けることは難しい。“親に心配かけたくない”“怒られたくない”という気持ちもある。

 では友人はどうだろうか。

「いまの子はなかなか心を許せる友達や、親友と呼べる存在がつくれない。なぜなら相談すると、その内容を聞いた友人がSNSに投稿して、拡散されてしまうおそれもあるんです。内容によっては、そこからいじめのターゲットになることも。だから友達にもなかなか明かせない」

相談もたらい回し、親に頼れない現状も

 だからといって警察や弁護士に相談するのもハードルが高い。行政や支援団体などの相談窓口も同様だ。

「相談したけれど、“警察や弁護士のところへ行ったほうがいい”など、結局たらい回しにされることが多いと言うんですね」

 たとえ親や先生に相談したとしても、彼らはネットにあまり詳しくなく、SNSでの被害の話が通じないという。また、相談窓口には次のような弱点があることも示唆する。

「多くの場合、悩みは聞いてあげればそれで落ち着くと思い込んでいるんです。それは昔の人の考え方で、いまの子たちはそうではないです。解決を求めているんです」

 コレコレさんのところに相談に来る理由のひとつに番組を見ている視聴者が非常に多いこともあげられる。その存在は、悩みを解決するキーパーソンにもなっているのだ。

女子高生がワタナベマホトからの被害を明かした日の配信では、リスナーから女子高生へのアドバイスや激励も多く寄せられていた(写真は加工)

「僕の視聴者には弁護士などの専門家もいますし、寄せられた悩みに関する知識を持った方もいますから解決率が高い。単に僕の力だけではなく、視聴者みんなで、ひとつの悩みを解決しようとしています。それに僕が間違ったことを言ったとしても、すぐに訂正してくれます(笑)」

 100万人以上の力が被害者に向けられているのだ。

「勘違いしている人はいますが僕が相談に乗っているのは正義感からではない。わざわざ僕のところに相談してくれたので話を聞くだけで終わらせたくない。僕のインフルエンサーとしての力を使って解決してあげたいな、という気持ちでやっているんです」


コレコレ/株式会社ライバー所属のユーチューバー。主にユーチューブなどでの生配信番組を中心に活動している