俳優生活27年。舞台、ドラマ、映画で、存在感のあるバイプレーヤーとして活躍する、女優・池谷のぶえさん。2017年から出演しているNHKのバラエティー番組『LIFE!~人生に捧げるコント~』でも、ウッチャンこと内村光良やシソンヌなど笑いのプロと比べても見劣りしない爆発力のある面白さを披露し、昨年出演したドラマ『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)では、座敷わらし役を演じて話題に。今年5月に50歳を迎えるベテラン女優のロングインタビュー【後編】では、「生活のルーティン」「一大決心の引っ越し」「結婚観」などについて、じっくり語っていただきました。

*前編はこちら(『LIFE!』で大人気、池谷のぶえは「めちゃくちゃ自己肯定感の低い人」だった

池谷のぶえ(撮影/森田晃博)

「健康的な生活をするようには心がけています。運動は苦手なので、歩くくらいしかしないですけど、野菜中心の食事をとること、睡眠を6時間はとること、お風呂はしっかり湯船につかることとか……。毎朝、小松菜とバナナのスムージーを作って飲むこともずっと続けていますね。それが飲みたくて朝起きるくらいなので、身体にはいい気がします(笑)。

 健康のために特に食べるようにしているのが大豆食品。更年期が始まりますからね。でも、更年期にいい影響を及ぼすエクオールを作る腸内細菌を持っているのは、日本人女性では5割程度で、2人に1人は大豆製品を食べても体内でエクオールを作れないらしくて。ネットで3000円~4000円くらいの検査キットを購入して調べられると聞いたので、これからやろうと思っています」

 健康のためではないが、家で晩酌することはめったにないそう。

「リモート飲み会のときは飲みますけど、1人飲みは楽しくないから(笑)。たぶん私はお酒が好きというよりは、みんなで飲むことが楽しくて、飲み会の空間が好きなんだと思いますね

70までこの部屋にいるのって──

 ツイッターにもたびたび手料理の写真をアップするなど、料理上手でも知られている池谷さん。後輩の俳優たちや演劇仲間を自宅に呼んで料理を振る舞うホームパーティーを開きたいという目的もあって、一大決心して昨年2月に引っ越しを決行した。

20年間住んでいた郊外のアパートから東京に引っ越しをしました。28歳のときに茨城の実家を出てひとり暮らしを始めてからずっと同じところにいて、この先20年いたら70歳。70までこの部屋にいるのってどうなんだろう……。自分を変えなきゃダメだと思って、重い腰を上げました。

 6畳と4畳半のキッチンにバストイレ別の普通のアパートで、仕事に行くにも遠くて不便だったので、周りからもずっと引っ越すように言われていたんですけどね。居心地がよかったというより安心感があったんですかね、なかなか動けなくて(笑)」

 新しい家の住み心地は?

「今のところ快適です。でも、実質初めての引っ越しみたいなものなので、勢いで引っ越してしまったところもあって、いろいろ勉強にはなりました。採光とかゴミ収集のこととか……。自分がより快適でいるためのチェックポイントがわかったので、なんならすぐさま次の部屋に引っ越したいくらいです(笑)」

 引っ越しの目的のひとつだった、ホームパーティはコロナ禍で……。

引っ越した直後に、少しだけ開くことはできました。仲間に来てほしくて引っ越したんですけど、うまくいかないですね。コロナ禍が終息したら料理を振る舞いたいと思います

50代からの人生で準備したいこと

 現在、独身。これから先の結婚についてはどのように考えているのか。

両親があまり仲のいい夫婦じゃなかったというのもあってか、結婚に希望を持てないんですよね(笑)。結婚というものに憧れはありますし、私が理想とする普通の生活をしてみたいなとは、ぼんやり思いますけど、あまり食指が動かないというか……。でも、これから先の人生にパートナーがいたほうが、寂しくないだろうなとは思います。誰かいたらいいなと。出会いがあればいいなという気持ちもあって、東京に引っ越してきたのもありますから(笑)。でもこればっかりは、簡単にはいかないですよね(笑)」

 50代からの人生で準備しようと考えていることは?

「やっぱり舞台を続けていきたいので、身体が動けるようにケアをすること。動けなくなってきたら、その都度、変化を受け入れて、びっくりせずにつきあっていきたいと思います。それと、今までやってこなかったのですが、老後のお金のことはちゃんと考えなきゃって思っています(笑)。あとは終の棲家(ついのすみか)は欲しいです。それは考えますね」

 今いちばん幸せな瞬間は、「仕事で褒められたとき」だという。

「その瞬間は本当にうれしいので、そのために頑張るっていう感じなのかもしれないです。褒めていただくとモチベーションが上がりますし、元気になります。なんだか子どもみたいで、50歳からの生き方の話じゃないですけど(笑)」

 これから先の人生のイメージは?

たくさん褒めていただいたおかげで(笑)、ここ数年、やっと自己肯定感がだんだん高まってきているんですね。なので、このままいければ、今後の人生もどんどん楽しくなるような気がします。この先どうなるんだろうという仕事の不安とかはもちろんありますが、未来は穏やかな感じはしています」

池谷のぶえ(撮影/森田晃博)

(取材・文/井ノ口裕子)

〈PROFILE〉
いけたに・のぶえ 1971年5月22日、茨城県出身。’94年、劇団「猫ニャー」(のちの「演劇弁当猫ニャー」)の舞台俳優としてデビュー。’04年に劇団解散後は、舞台のみならず、映像作品にも出演の幅を広げる。’21年1月、『獣道一直線!!!』にて「第28回読売演劇大賞」優秀女優賞を受賞。

●公演情報
シス・カンパニー公演『ほんとうのハウンド警部』
(2021年3月5日~31日、Bunkamura シアターコクーン)
作:トム・ストッパード/翻訳:徐賀世子/演出:小川絵梨子
出演:生田斗真、吉原光夫、趣里、池谷のぶえ、鈴木浩介、峯村リエ、山崎一
〈公式サイト〉http://www.siscompany.com/hound/
●公演情報
イキウメ『外の道』
(作・演出:前川知大)
2021年5月〜7月、東京・大阪・豊橋・北九州公演予定
〈公式サイト〉https://www.ikiume.jp
●出演中
『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK総合/不定期放送)準レギュラー
アニメ『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(NHK Eテレ/火曜18:45~)レギュラー
●連載中
雑誌えんぶの情報サイト「演劇キック」にて【池谷のぶえの「人生相談の館」】
福岡のエンタメ情報誌シアタービューフクオカにて「めずらしく体調のいい日に」