「弁護士を通してください」
2月下旬、あるマンションの駐車場。ホンダのシビックから、大きな身体を揺らしながら降りてきた男は、記者が声をかけると怪訝な表情を浮かべ、そう言い放った――。
その男とは、2月2日、強制わいせつの疑いで逮捕された芸能プロダクション『ユニバーサルコレクション』(以下、ユニバ社)社長のA氏だ。
「'20年5月2日の午後、アイドルを目指していた当時12歳の少女を品川区内のレンタル写真スタジオに連れて行き、2人きりの室内で宣伝写真を撮った後、デビュー時の衣装を作るために採寸をするからと言って、裸にしたんです。メジャーを手にしたAは身体も触ってきたようで、帰宅した少女は怖くなって一部始終を両親に報告。被害届が出されて逮捕に至ったのです」(全国社会部紙記者)
ただ、少女はA氏が代表の『ユニバ社』ではなく、別の芸能プロ『B社』に所属。両社は業務提携を結んでいたようだが、なぜB社抜きのふたりきりで撮影が行われていたのか。B社の代表取締役である男性に話を聞くと、
「今回のような事件があったことを、私は知りませんでした。そもそも、被害者の少女と私が会ったのは1回だけ。昨年4月にAが被害者の少女を連れて来て、ウチの会社と契約をしましたが、その後“結局、あの子は契約を辞退した”とAから聞いただけです」
肉体関係があったアイドルも
A氏は契約書と一緒に《採寸に関する覚書》なるものを利用していた。週刊女性は《覚書》の現物を入手。そこには採寸を行う際に《衣類および身体等に接触すること》《脱衣を伴う場合があること》を所属タレントに同意させる文言が並ぶ。
「正直に言うとAには“借り”があって頭があがらなくて……。“覚書”のことも、おかしいと思いつつも何も言えずにいたんです。女の子を“俺が採寸した”と話すなど、以前から怪しいなぁ……とは感じていました。衣装を作るのに、パンツ1枚になる必要はありません。正確に測りたいなら、薄着の服を用意すればいい」(B社の男性)
夢への希望を膨らませた少女を誘い出し、言葉巧みに言いくるめて自らの欲望を満たすため、服を脱がせて“採寸”という名目で身体をまさぐり、写真を撮影……。
「“契約書”に書いてあっただろう」
嫌がる少女にそんな言葉をかけていたのだろうか。12歳の少女が“契約書”という言葉に抗えなくなる姿は、容易に想像できる。
そんなA氏は過去にもトラブルを抱えていた。別の芸能プロ関係者が話す。
「Aは数年前にも16歳の所属アイドルに手を出していたんです。Aは既婚者ですが、その子を愛人のように扱い、人前で堂々とその子の胸を揉むんです。肉体関係もあったようで、見かねた周囲の人が通報。警察沙汰になりましたが、警察は少女の同意があったとし、事件にならなかった。Aも事情を聞かれていましたが、ふてぶてしく“俺には最強の弁護士がついてる”と話してました」
これを機に、A氏は『ユニバ社』での芸能プロ事業をストップ。'17年にB社を設立し、『ユニバ社』の従業員だった前出の男性を代表取締役にした。自身は“会長”として裏で犯行に及んでいたというのが、今回の事件のあらましだ。
未成年に手をつけるなど、過去の余罪もあったというA氏だが、これだけではない。
事務所社長に直撃すると……
「会長が逮捕されたとき“まだやってたんだ”って思いました。女の子を裸にしてベタベタ身体を触るのは、Aの常套手段だったんです」
そう明かすのは、過去『ユニバ社』に所属していた当時高校生だった現役アイドル。
「私は事務所に入ってすぐ、会長から“衣装の採寸をする”と呼ばれたんです。事務所の隣は関連会社になっていて、普段は女性スタッフがいるのに、そのときは会長だけ。さらに会長がドアの鍵をかけるから“おかしいな”って。“上着を脱いで”と言われ、タンクトップ姿で腕の長さやウエストを測ってから“パンツだけになってください”って言われたんです」
忌まわしい記憶を、手繰るように話す。「芸能界ってどういうものかわからなかった」と語る彼女も、言われるがまま……。
「しぶしぶ脱いでパンツ1枚になったんです。胸やお尻を揉んでくるようなことはなかったのですが、メジャーを身体にあてられ、胸やお尻を触られました。“身体のシルエットを見たい”とも言われ、裸のまま写真を撮られちゃって……。本当に嫌だったけど、アイドルになりたかったので、ゴチャゴチャ文句は言わないほうがいいのかなって……何も言えなくて」
当時を思い出し、声を絞り出す。不安になり母親にも相談したというが、
「母も芸能界のことはわからないみたいで、そういうものなのかなぁって……」
芸能界という言葉に、少女だけじゃなく周囲も騙されていく。以前『ユニバ社』に所属していたという別の女性は、
「私は普通に業者の方に採寸していただきましたが、後から入ってきた女の子たちから“裸で撮影された”と相談されたことがありました」
と話す。見かねた女性は、あるときA氏を問い詰めた。
「最初は“やってないよ”と言うのですが、最後は“ごめんなさい、2度としません”と白状したんです。ある時期から、入ったほとんどの女の子に同じことをしていたって。写真データを消すように言ったんですが“どこにいったかわからない”と誤魔化されました。裸の写真が今も残っていると思うと、かわいそう」
事件も明るみになり、A氏も年貢の納め時。と思いきや、
「どうも今回の12歳だった被害少女と示談が成立したようで、不起訴になりました」(前出・全国紙記者)
A氏は釈放され、現在は神奈川県内のJR駅から徒歩で10分ほどの自宅マンションに帰っている。
そこで、過去の“余罪”についてA氏に話を聞こうと声をかけたのが、冒頭の場面だ。
――以前も女の子たちを裸にしていたようですけど?
「静かにしてください」
記者の声に驚き、人差し指を口に当て話す。
「やめてもらえます? 出て行ってください。この駐車場は私有地です」
――示談したんですよね。なら敷地外で話せませんか?
「えーと……イヤです」
そう話すと、無言のまま、傍らにいた妻らしき女性と、自宅マンションへと入っていった。
「Aさんの逮捕時の画像と事件の内容を報じているニュース記事が印刷された紙に、Aさんの部屋番号が書かれて、それがウチのポストに入っていました。怪文書みたいで気持ち悪いですが、こんな事件を起こした人がいれば、子どものいる親御さんは心配でしょうね……」(マンションの住人)
同じ私有地に、こんな男がいるなんて、気が気じゃない。