トシちゃんが、還暦!
先月28日に60歳の誕生日を迎えた、田原俊彦。その前日の27日の夜にはNHKBSプレミアムで『田原俊彦“還暦前夜!”スペシャルワンマンライブ』が放送され、『哀愁でいと』や『恋=Do!』『抱きしめてTONIGHT』などの代表曲や筒美京平メドレー、マイケル・ジャクソンへのトリビュート企画などを次々披露。キレのあるダンスと原曲キーそのままという年齢を感じさせないパフォーマンスには驚きの声も多く、「トシちゃん」がトレンド入りするなどの盛りあがりもみせた。
「ビッグ発言」当時の風向きは厳しかった
「相変わらず足も高い位置まで上がりますし、ターンなども速くてビシッと決まる。パフォーマーとしてのトシちゃんが、あらためて評価される番組になったのではないでしょうか」
と言うのはベテランのテレビ関係者。さらに続けて、
「名曲も数多く、還暦となったトシちゃん、再ブレイクするかもしれませんね。あのバッシングがなければどうなっていたでしょうか」(同)
トシちゃんへのバッシングというのは、1994年ジャニーズ事務所から独立後、長女誕生の際に開かれた記者会見がきっかけだった。当時、マスコミ嫌いで有名だったトシちゃんが会見するにあたり、「何事も隠密にやりたかったんだけど、僕くらいビッグになっちゃうと、そうはいきませんけどね」と、冗談めかして笑いをとったはずの“ビッグ発言”が、切り取られて世の中に拡散。そしてバッシングに発展し、田原俊彦は芸能界の第一線の輝きを失うことになってしまった。
「発言自体はトシちゃんらしいギャグだったので、いま思うとなぜあんなに叩かれることになったのかと思います。当時の世間の風向きは、なかなか厳しかったですよね」(同前)
'79年から放送されたテレビドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)の生徒役でいきなり注目を集めたトシちゃんは、翌年『哀愁でいと』で歌手デビュー。同年にデビューした松田聖子とともに、さまざまな賞の新人賞を獲得、二人のCMや歌番組での共演も話題を集めた。
「トシちゃんも聖子ちゃんも、今でも当時の雰囲気を漂わせながらパフォーマンスするので一定のファンは離れていません。この年になっても継続できるのはすごいことです。往年のアイドルが久しぶりに歌を披露すると、ガッカリするパターンもありますが、トシちゃんは体型も変わらず、サービス精神も忘れない。真の意味で“永遠のアイドル”ですね」(同前)
トシちゃんはジャニーさんの最高傑作
ジャニーズ時代のトシちゃんは、『金八先生』に同じく出演していた近藤真彦・野村義男と3人で“たのきんトリオ”として一世を風靡した。当時を知るジャニーズに詳しい芸能記者は「正直、歌も演技もそこそこ、というか、むしろ下手な部類だったかもしれません」と笑いながら続ける。
「だけどスターオーラは抜群でした。あの特徴的な『アッハハハハ』という笑い声に代表される底抜けに明るい雰囲気、それでいて、ふとした瞬間にみせる孤独そうな表情。その両面を併せ持つところが、まさにジャニーさんのドストライクだったのではないでしょうか。
ジャニーさんが大好きな『ウエスト・サイド物語』やジェームス・ディーン、そして今回の番組でも披露したマイケル・ジャクソン。それらの要素を持ち、お茶の間ウケするキャラ。そんなトシちゃんを“ジャニーさんの最高傑作”と位置づける人も少なくないようです」
タレントと友達のような感覚で接したいジャニーさんにとって、トシちゃんのキャラは相性抜群だったかもしれない。
「トシちゃんが過去の著書に書いていたのですが、ジャニーさんと一緒にタクシーに乗っていたとき、トシちゃんがオナラをしちゃったそうなんです。それを、『くさいよ、ジャニーさん!』とジャニーさんのせいにした。タクシー下車後にジャニーさんは『YOUはほんとに腹黒い!』と激怒したエピソードがあったそうです(笑)。独立後もメリーさんのもとをたびたび訪れたりしていたようですし、ジャニーさんもメリーさんも大好きだったのではないでしょうか」(同)
ジャニーズのカウントダウンコンサートなどで、時折トシちゃんの曲は後輩によって歌い継がれている。後輩たちにとって、年齢を重ねてもアイドル要素を失わず、一線で活躍しているトシちゃんの存在は大きいはず。
還暦を迎え、3月2日には『徹子の部屋』に出演し、『ザ・ベストテン』時代からずっと母のように慕う黒柳徹子とのトークは大いに盛り上がっていた。番組の最後に「引退は考えていないのか」と聞かれたトシちゃんは、
「できません!」
と断言。その理由は、
「ローンがたっぷり残っているからです!」
生涯現役アイドルとして活躍してくれそうだ。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉