「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
婚約指輪を披露する福原愛(左・2016年)と谷亮子(右・2003年)

第53回 福原愛

 卓球女子メダリスト・福原愛(以下、愛ちゃん)の不倫疑惑を『女性セブン』(3月18日号)が報じました。同誌によると、夫と子どもを台湾に残し、愛ちゃんは横浜で会社員の男性とデートをし、高級ホテルや愛ちゃんの自宅で過ごしたそうで。

 愛ちゃんはマネジメント事務所の公式ホームページに《皆様に誤解や疑いを持たれる行動をとってしまったこと、大変申し訳ございませんでした》《一緒の部屋に宿泊した事実はありません》と直筆文を出して不倫関係を否定しています。ただし、《夫婦間で子供にとって何が一番なのか話し合っていることも、併せてご報告させていただきます》と、離婚を考えているような一文を付け加えているのも気になるところです。

 タレントにとって、不倫は疑惑であってもマイナスでしかありません。特に小さなお子さんがいる場合、「子どもをほったらかして!」と好感度を下げてしまうことは目に見えています。そういう意味で、愛ちゃんはヤバ女とみられることは避けられないでしょう。

「アピール大好き」は大成するのに必要な能力

『女性セブン』発売と同日、『週刊文春』は愛ちゃんが夫である卓球元台湾代表・江宏傑との離婚を決意していること、原因は夫からのモラハラや姑、小姑との関係悪化と報じています。国際結婚ということもあり、いろいろと難しい点もあるのでしょうが、モラハラがあったからといって不倫をしていいことにはなりません。この記事で愛ちゃんの好感度が戻ると私は思いません。

 さらに、愛ちゃんは結婚当初、ラブラブな姿をSNSで頻繁にアップしていたことから、「虚飾の結婚生活だった」と見る人もいるようです。結婚生活の内情はどうかわからないので、虚飾と決めつけるのはアレだと思いますが、それはさておき、芸能人やアスリートなど「人に応援してもらう職業の人」にとって「見られるのが大好き、アピール大好き」な性質は大成するのに必要な能力である気もするのです。

「見られる」ことを楽しむ女性アスリートと言うと、思い浮かぶのが元柔道日本代表、谷亮子(以下、リョーコ)です。日本のお家芸・柔道が低迷していたときに現れた天才少女・リョーコは、世界選手権で7連覇、2000年のアテネ五輪、2004年のシドニー五輪で金メダルを獲得して、日本中を沸かせました。当然、メディアは彼女を追いかけます。リョーコの成人式に密着した番組を見た記憶がありますが、嫌がっているような感じはしませんでしたし、自分から恋愛の話をするなどサービス精神も豊富でした。

「オリンピックには魔物がいる」とよく言われます。想像できない番狂わせが起きることから、こんな言われ方をするのでしょうが、こういうプレッシャーの強い環境においては、強い精神力が求められるでしょう。その際に「見られる」ことが好きな性質はプラスに働くのではないでしょうか。観客もしくは国民が自分を見ている、応援してくれると思うからこそ、実力以上の力が出せるのだと思うのです。

結婚後、リョーコは「嫌いな女」1位に

 リョーコは自分を見せる能力にも優れています。多くのアスリートがマスコミの質問に対し、「そうですね」「頑張ります」くらいしか言わないのに対し、彼女は「最高でも金、最低でも金」「田村で金、谷でも金、ママになっても金」というように、スポーツ紙の見出しとして、そのまま使えそうなキャッチコピーを自分で提供していました。“ひとり電通”とでもいいましょうか、自分に注目が集まるように仕向け、「見られる」ことを自分のエネルギーにし、実際に結果を出すという偉業をやってのけるのです。

 しかし、「自分を見せる」もしくは「人に見られる」というのは、塩梅が難しいもの。すべてを見せればいいというわけではなく、「見せない」部分が明確にあるからこそ、「自分を見せる」「人に見られる」部分が生きるのです。芸能人の場合、もともと本人に自己プロデュース能力が備わっていることもありますし、周囲のスタッフに頼ることもできるでしょう。しかし、アスリートの場合はそうはいかず、トゥーマッチになってしまうかもしれません。

 リョーコが現在の夫である元プロ野球選手・谷佳知と交際を始めたときのこと。当時の赤文字系雑誌が推したモテ服・白いワンピースを着て、オリックスのキャンプ地を訪れた彼女をワイドショーは追いかけます。おしゃれして彼氏に会いに行くというのはごくフツウのことですが、「私は幸せです」というアピールはほどほどにしないと、嫌われることになりかねません。しかし、「全国民は私の味方」を信じて結果を出してきたであろうリョーコには、このあたりの細かい感情の機微はわからなかったのでしょう。ちと浮かれすぎでした。

恋人のオリックス・谷佳知外野手のキャンプ地を訪ねる田村亮子(2001年)

 谷との結婚が決まった彼女は、自分でデザインした婚約指輪を披露したり、金メダルにちなんで打掛の色を金にしたなどのリョーコ情報を順次公開していきます。一種の「花嫁ハイ」がよくない印象を植えつけていたのか、参議院議員になった2010年に『週刊文春』が調査した「女が嫌いな女」で、リョーコは1位に輝いてしまいました。なんでも見せればいいというわけではないのです。

愛ちゃんのこれまでのやり方は通用しない

「見られる」ということに関しては、リョーコより愛ちゃんのほうが場数を踏んでいると言えるでしょう。愛ちゃんは4歳くらいのころから、「卓球の天才少女」としてワイドショーやバラエティー番組でちょくちょく見かけました。「オリンピックを目指している」と公言し、大人顔負けの腕を披露しますが、負けそうになったり、実際に負けると泣いてしまう。そんな姿がかわいくてウケたのだと思いますが、人に見られることに慣れたことが関係したのか、愛ちゃんは2008年の『FRIDAY』にテニスの錦織圭選手との路チューを撮られたりもしています。

 しかし、本業の卓球を怠ることなく、夢をかなえてオリンピック選手になります。「あの愛ちゃん」がオリンピック選手になったわけですから、メディアは過去映像も公開しつつ愛ちゃんを追いかけ、ますます愛ちゃんは「見られる」ことになります。

台湾のテレビで放送された福原愛と夫のキスシーン

 さらにSNSが出現し、私たちは好きな時に自分を「見せる」ことができるようになりましたし、フォロワーの多さがビジネスにつながる時代です。愛ちゃんは中華圏に多くのファンを持つそうですが、愛ちゃんが結婚式の様子や夫とのイチャイチャを「見せる」のは、ビジネスとしてもファンサービスとしても「当たり前」なのかもしれません。「幸せアピールをすると、うまくいかなかくなったときに恥ずかしいからやめておこう」と保険をかけるのは凡人の発想で、「今が幸せだから、アップする(先のことは知ったことではない)」というのが、「見られるのが好き」な人の発想なのではないでしょうか。

『週刊女性PRIME』は3月10日配信記事で、《福原愛、“台湾限定”発売のエッセイに書かれていた「離婚したがる理由」のすべて》、『女性自身』は3月9日配信記事で《福原愛 夫の帰国要請を拒否!親権失う可能性浮上も離婚決意か》と離婚は不可避のように報じるメディアは多いようです。

 離婚したからヤバい呼ばわりされる時代ではありませんが、お子さんがいる以上、「見せてはいけないもの」もあるはず。愛ちゃんは、これまでの「見られるのが好き」なやり方では通用しないことに気づく必要があるのかもしれません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」