熟年女性にベストな財テク“つみたてNISA”。「長く少しずつ投資することで資産を徐々に増やす」そのカラクリを理解して、ラクして貯金アップ! つみたてNISAの運用編。

 

つみたてNISAの始め方

●ステップ1:提出書類を用意
証券総合口座とNISA口座を開設の申し込みに必要な書類は(1)本人確認書類(免許証、保険証など)(2)個人番号(マイナンバー)確認書類(個人番号カード、通知カードといったマイナンバーの確認ができる書類)など

●ステップ2:金融機関に口座を開設する
証券会社を選んだら総合口座を開設する必要があり、同時にNISA口座の申し込みを。選ぶ際の比較ポイントは手数料、商品の多さなど。近年は手数料が安く、商品も多いネット証券が人気。

●ステップ3:税務署の審査
口座開設時の情報をもとに、各証券会社がNISA口座開設を税務署に申請し、ほかでNISA口座を保有していないかなど審査がかかる。税務署での審査は、約2~3週間ほど。

●ステップ4:投信つみたてプランの設定
税務署でのNISA口座開設の確認が完了すると、NISA口座開設の確認通知がくる。口座が開設されたら、投資のための入金手続きを行い、銘柄を選んで投資を始める。

タイプ別の選び方はコレだ!

 株式投資であれば、リスクを抑えるためにも“分散投資がおすすめ”とされることが多いが、つみたてNISAをする場合はどうなのだろう? 前編(『50代から主婦がコツコツ資産を増やすならコレ!「つみたてNISA」の始め方〈入門編〉』)でも解説してくれた投資家の竹内弘樹さんは、

「投資信託はさまざまな投資対象を盛り込んでいるので、ひとつの商品で、分散投資がされていると言えます。なので、投資対象は1つでも十分です」

 例えば、株式だけの投資信託でも、日本と先進国、新興国の株がミックスされているといった具合。ほかには、株式と債券の組み合わせだったり、株式と債券、リート(不動産投資)の組み合わせなどがある。ベーシックなのは各国の株が入っている株式投資信託。さらに積極運用のアクティブファンドか、指数連動のインデックスファンドかに分類される。

「リターンを大きく狙いたいなら、株式中心の投資信託に。逆にリスクを抑えたいなら、債券の割合が大きい投資信託をチョイスして」(竹内さん、以下同)

【投資信託の組み合わせ】
●投資地域
(国内・海外先進国・新興国)
●投資対象(株式・債券・リート「不動産投資信託」・バランス型)
●投資分類(インデックスファンド・アクティブファンド)
〈※株と同じように取引市場に上場されているETF(上場投資信託)もある。〉

大暴落で売却! コレは絶対にNG

 また投資をはじめる際に、最初に理解してほしいことがあると竹内さん。

「長い目で見ればプラスが見込めるつみたてNISAですが、運用の途中で大暴落が起きる可能性も。その際には、資産が大きく目減りすることがあります」

 リーマン・ショック級の大暴落が起きると、株式のみの投資信託ならば商品によってはマイナス25%〜マイナス50%の短期的な落ち込みが見込まれる。そんなとき、慌てて解約するのはダブー中のタブー。前編の記事で紹介したように、株価が落ち込んだときほど、淡々と投資を続ける姿勢が、勝利を導くからだ!

また株価が下がったら投資額を増やす、下がったら減らすなど、投資金額を変更するのもやめたほうが無難です。感情が入って失敗しやすくなります。つみたてNISAでは投資しているのを忘れるくらいがベスト。機械的に積み立て続けるほうが、結果的にいい成績が出やすいですよ」

月に少額ずつ解約するのもあり

 長期投資を目的としたつみたてNISAだが、20年を待たずに解約したい場合はどうしたらいい?

「株式市場は変動するので、必ずしも20年後が運用資産のピークになるとは限りません。利益が乗ってきたら好きなタイミングで解約してOKです。ただし、積み立てを目的としたこの制度では、元本+運用益に対して運用益が発生する“複利”で運用できるので、運用期間は長いほうがより大きなリターンが期待できます

 解約する際には、一括で解約してもいいが、少額ずつ解約するのも一手。運用金額を残しておけば、利益が増える可能性もあるからだ。

「つみたてNISAは、どの商品を選んだとしても、運用終了の直前に思いもよらぬ大暴落が来ない限りは損をする確率は限りなくゼロに近いと言えます。数年後のリターンを楽しみに、少額からでもぜひ運用をスタートさせてみてください」

つみたてNISAの素朴な疑問 Q&A

 いざ始めてみると「?」と思う細かな疑問点をピックアップ。事前にチェックし、スムーズにスタートを。

Q)つみたてNISAを始めたら、どのぐらい口座を確認すべき?
A)放っておくぐらいがいちばんです

投資初心者であれば、動向が常に気になるものだと思います。しかし、こまめに確認をして一喜一憂していたら長期投資が気持ち的に負担になってしまうことも。確認は数か月に1回程度でもいいと割りきりましょう。

Q)20年たったら必ず解約しないとダメ?
A)解約しなくても大丈夫

つみたてNISAの非課税期間は最長20年だが、20年たったら全額解約しなければいけない…ということはない。運用を続ける場合、20年以降の運用益には課税されるが、投資信託を持ち続けることもできる。また解約時には、一部だけ解約するなど、好きなタイミングで解約することができる。

Q)40万円の非課税枠は、翌年に持ち越せる?
A )持ち越せません

40万円というのは、1月から12月までの1年間に使える枠。あくまで1年間で使える金額となる。仮に9月から月2万円のつみたてNISAを始めた場合、12月までの4か月間で合計8万円を投資することになり、枠としては32万円が残ってしまうが、それを翌年以降に繰り越すことはできない。

Q)自分で好きなときに投資信託を買える?
A)買えません

つみたてNISAは「定期的に」「継続して」商品を購入する必要があるため、「自分でタイミングを見て買う」「年に2回好きなときに買う」などはできない。毎月1回定額を積み立てるのがオーソドックスだが、それ以外にも週に1回や毎日積み立てを行うことも可能。また毎月の積み立てに加えて、ボーナス時に積立額を増額できる金融機関も。

Q)1回あたりの積立額に上限はある?
A)年に何回積み立てるかによって違いが

例えば毎月(年12回)積み立てをするなら、40万円÷12回で、1回当たりの上限は3万3333円。また年の途中から積み立てを開始する場合、9月から始めたとして、その年に4回積み立てができるので、40万円を4で割った月10万円が上限に。ただ積み立は分散投資が適しているので翌年は必ず積立額とタイミングの変更を。

Q)積み立てている商品を、途中で変更することはできますか?
A)できる

「1月から6月までA投信を積み立てていたが、7月からはB投信を積み立てたい」という場合は、設定の変更をすればOK。A投信はそのままつみたてNISA枠内で運用を続けることもできるし、解約して現金化することも可能。ただし、解約した場合は、NISA枠ではなくなる。また、解約したお金でつみたてNISA枠内の他の投信を買うことはできない。

Q)投資信託の分配金再投資コースを選んだ場合、分配金は再投資できる?
A)できるが、購入とみなされる

分配金とは投資信託の利益から投資家に還元するお金のことで、決算時に支払われることがある。これを年間40万円の範囲内であれば再投資することは可能。ただし、40万円の枠を消費することになる。金融機関によっては再投資できない場合も。

Q)選ぶ商品によってはハイリターンは可能?
A)ハイリスクを負わないハイリターンはない

長期の安定した運用ができる、といった目的で選ばれた商品が多いので過度なハイリターンは期待できません。ただ、その中でも国内より海外、債券より株式、リートの割合が多い商品を選ぶことによってハイリターンの可能性も。ただリスクもあることを忘れずに。

(取材・文/樫野早苗)

《PROFILE》
竹内弘樹 ◎ライフパートナーズ株式会社代表取締役。投資信託・株初心者アドバイザー。独学で株式投資を学び、ウェブサイト「やさしい投資信託のはじめ方」を設立。わかりやすい解説と堅実な投資手法に定評が。