コロナに感染し58日間も入院していた鈴々舎馬風(写真は落語協会HPより)

 長い闘病生活だった。

 今年1月に実施した新型コロナウイルスのPCR検査の結果、陽性反応が確認された落語界の重鎮で、漫談家の綾小路きみまろ(70)や『笑点』の座布団運び、山田隆夫(64)らを弟子に持つ、鈴々舎馬風(82)が18日、都内の病院を退院したことがわかった。

 体調に異変を感じ、大事をとって入院したのが1月16日。以来58日間、約2か月間の闘病生活を送ったことになる。

一時は集中治療室に入っていた

 落語家の林家正蔵や春風亭一之輔ら多くの人気者が所属する落語協会(柳亭市馬会長)が、馬風並びに桃月庵白酒(52)が新型コロナに感染していると発表したのが、感染が疑われた数日後の1月20日だった。2人とも入院したが、若い白酒は1月下旬に退院。高齢者の馬風の入院は伸びるばかりだった。

「これまで、おかみさん(馬風夫人)と話しても、“大丈夫だから”としか言われなかった。当初、1~2週間と言われていた入院期間が延びて、どうなっているんだろうと思っていました」

 と弟子のひとりが伝える。

「一時、集中治療室に入っていたそうです。年齢も年齢なので心配しましたが、よく回復されたと思います。おかみさんと娘さんが付きっきりで看病していたそうです」

 落語家の仲間内には“重体説”も流れたという。

「ちょっとしたことに、尾ひれが何重にもついて広がる噂話が好きな業界ですから無理もないところはありますが、生き死にに関することですから、安易に口にするわけにもいきませんでした」

 と打ち明けるのは、中堅真打ち。

退院しましたが、ずっと寝たきりだったので、足腰が弱っていると嘆いていたそうです。(馬風)師匠の好物は、鰻のかば焼きに鰆の粕漬なので、タイミングを見て退院祝いに駆けつけたいですね」

 関係者によれば、普段から馬風師匠は感染に注意し、仕事の移動はすべて車。健康を第一に、夫人の手作り料理を、腹八分を目安に食べていたという。

「寄席の出演者は、若手の10代から大御所の80代までたくさんいます。馬風の感染が疑われた際も、楽屋で働く前座が感染したのがきっかけでした。着物を着せてもらったり濃厚接触もありますから、当初はうまく対策できていなかったようです。今は改善され、楽屋にいる時間が制限されたり、お茶も出さない、など万全です。実際、馬風師匠、白酒師匠以降、寄席での感染者は出ていませんからね」(演芸関係者)

 何はともあれ、無事退院を迎えた落語界の宝。早く高座復帰して、その闘病記をネタに爆笑をさらう日が楽しみだ。それが転んでもただではおきない芸人の姿である。

〈取材・文/薮入うらら〉