「身長は165センチ、100キロくらいでデカくて、こちらが挨拶すると返してくれるけど会話はしない、とてもおとなしい青年。まさか、あの子がねぇ……」
いつもの容疑者と事件との落差にそう驚くのは近所の住民。
今年の1月中旬ころ、埼玉県さいたま市桜区の自宅から、
「仕事がイヤになった」
と告げて家出していた樺沢勇人容疑者が、3月15日の午前10時ごろ、2か月ぶりに帰宅した。
行方不明者届を警察に出していたため、母・知美さんは警察に連絡。
「息子が帰ってきました。届けを取り消してください」
そんなやりとりをしている最中に、
「ギャー!」
という悲鳴が響きわたった。
すると、樺沢容疑者が電話口にそのまま出て、
「母親を包丁で刺してしまいました」
と告げたのだった─。
刑務所に入ろうと思った
埼玉県警浦和西署員が急きょ駆けつけると、自宅には背中などを刺されて血まみれで倒れている母親と、その傍らで呆然と立ち尽くす息子の姿があった。
樺沢容疑者は、殺人未遂の現行犯で逮捕されたが、母親は病院へ搬送後に死亡。容疑は殺人に切り替わった。
「何もかもイヤになってしまって、母親を殺して刑務所に入ろうと思った」
などと供述しているというが、いったい何があったのだろうか─。
さいたま市の閑静な住宅街に住む樺沢一家は、容疑者のほかに両親と弟の4人家族。
「共働きのお宅で、お父さんはよく近所のスーパーに自転車で食材を買い出しに行っていました。
お母さんは町内会の班長を務めていて、会費集めなどもする明るくてしっかりした人でしたよ」(冒頭の住民)
地元の中学、高校を経て大学を卒業した樺沢容疑者は、昨年4月に近隣のスーパーに就職。
「高校時代、大学時代は近くの同じ系列の別のスーパーのレジでバイトをしていました。
彼の高校の前身は農業高校ということもあって、食べ物が好きなのかな。買い物で会うと、ニコッとはにかんだように笑ってね」(別の住民)
仕事がイヤになり家出したと報じられているが、
「“仕事がイヤになった”と報じられていましたが、失態があったとか、怒鳴られたとか、特別にトラブルや問題もなく、勤務していました。どんな理由で辞めたのかは、捜査中でもあるのでコメントしかねます……」(スーパーの本社広報)
女子中学生アニメが大好きだった
退社、家出、刺殺と行動が突発的にも思えるが、容疑者の中学時代の同級生が語る。
「カバちゃんは、勉強もスポーツも特に目立たない、地味でおとなしい生徒でした。卓球部にいましたが、腕前は同学年10人中、6番目くらい。体重があるわりには、意外に器用でした」
卓球以外にも好きなものがあったそうで、
「暗いオタクで、『ゆるゆり』というゆるゆるした女子中学生の日常を描いたアニメが大好きでした。でも、アニメの話で盛り上がっても、急に真顔になってテンションが下がることも。そういう不気味なところはありましたね。
アニメの女子キャラの話はしていましたけど、同級生の異性の話はまったく聞いたことがない」(同級生)
いかにも衝動的な行動や事件を起こすような人物には見えないが……。
この同級生が続ける。
「でも、2回キレたことがありました。1回目は、クラスのイジメっ子にいびられたとき。2回目は、卓球部で同級生にイジられたとき。“コノヤロー!”などと大声を発しただけで、ケンカにまではなりませんでしたけど。ため込んでため込んで、一気に感情を爆発させるタイプなのかもしれません」
母親が新興宗教にハマっている
樺沢容疑者は、こんなことも同級生に打ち明けていた。
「実は母親が新興宗教にハマっていて、ウザいんだよ」
家族との関係は微妙だったようなので、久しぶりのわが家で待っていたのは母親からの叱責だった可能性もある。
それにキレた容疑者が、電話中の母親に刃物を向けたのだとしたら……。
同級生はこう厳しい言葉を投げかける。
「僕もそうですが、社会に出たらつらいですよ。アルバイトと違って、勤務時間も長いし、最初は給料も安く、責任も重い。
でも、この状況で会社を辞めたら、次の仕事もなかなか見つからない。だから、みんな耐えているんです。彼は甘えていますよ」
樺沢容疑者の耳には痛い話のはずだが……。また感情に身を任せてしまうのだろうか。