事故現場で対立するシリアスなシーンに臨む沢村一樹(左)と波瑠

波瑠さん、沢村一樹さん、北村匠海さんらが撮影に参加していました。波瑠さんはお医者さんのような格好で、沢村さんと北村さんは救急隊員のようだったので、医療モノなのかもしれません。夕方くらいから撮影が始まりましたが、深夜まで続いたみたいです」(地元の住民)

 3月下旬のこの日は、祭り会場で事故が起こったシーンの撮影だったようで、事故に巻き込まれたという設定の通行人役を含め、50人ほどのエキストラが参加する大規模なロケだった。

「3月に入ってからこの周辺でよく撮影していますよ。今はオフシーズンで観光客も少ないから、大がかりなロケもしやすいのでしょう」(同・地元の住民)

 順調そうに見えるが、オンエアはまだ先のようだ。

このドラマは、今年の7月から始まる月9作品なんですよ。通常なら、初回放送日の1か月ほど前にクランクインし、放送後の反応を見ながら撮影を行うのが一般的なテレビドラマの流れですから、だいぶ早く撮影しています」(制作会社関係者)

月9ドラマが4本同時撮りの事情

 月9といえば、4月からは竹野内豊が11年ぶりに同枠の主演を務める『イチケイのカラス』がスタートする。

「こちらは昨年12月から撮影が始まっていて、そろそろクランクアップするとのことです。同じく月9枠だと、10月に放送予定の窪田正孝さん主演『ラジエーションハウス2』が3月にクランクイン。来年1月に放送予定の菅田将暉さんが主演を務めるドラマは、すでに撮影が終わっています」(フジテレビ関係者)

 1年先の作品も含め、実に4本の作品を並行して撮っている。なぜ月9はこんなにも早く撮影をスタートさせているのか?

 コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんはこのように語る。

「月9はNHKの大河ドラマや朝ドラと同じぐらい王道な作風のため、主演を誰が務めるかが極めて重要です。ただでさえダブル主演の作品も増えている昨今、人気俳優たちのスケジュールは争奪戦になっています。そんな中、どうしても人気俳優を起用した企画を立てるとなると、早撮りするしかないのでしょう」

 実際、10月期で主演を務める窪田は、当初9〜10月に上演される舞台『酔いどれ天使』で主演を務める予定だったため、クランクインが早まっていると報じられた。

来年1月の菅田“月9”も撮影済み

「来年1月期で主演を務める菅田さんも、来年放送の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』のメインキャストの1人。さらに4月期放送の日テレ系ドラマ『コントが始まる』の撮影も3月開始のため、空いているスケジュールが昨年12月から3月までしかなかったんです。

 事務所としても半ば断るつもりでこのスケジュールを提示したようですが、どうしても菅田さんを主演で起用したいフジテレビは、1年以上前のクランクインでGOを出したと聞いています」(前出・フジテレビ関係者)

月9主演が決定している竹野内豊、窪田正孝、菅田将暉

 そんな“主演ファースト”による前倒し撮影の傾向は、新型コロナウイルスの影響によってさらに加速してしまったようだ。

「いまだにコロナの収束が見えません。再び緊急事態宣言によって撮影が止まる可能性もありますし、月9に限らず、最悪の事態を想定して通常より早く制作するケースが増えています」(前出・制作会社関係者)

『働き方改革』による、現場の意識の変化も関係している。

「かつてドラマの現場は徹夜が当たり前でしたが、今では1日10時間までしか働いてはいけないといったルールが細かく設定されるようになりました。加えてコロナの感染対策にも気をつけなくてはいけませんからね。必然的に撮影は長期間にわたって行われるようになりつつあります」(同・制作会社関係者)

 現場に暗い影を落とした新型コロナだが、一方で思いがけない影響も。

「今の早撮りを支えているのは、コロナの影響で仕事のスケジュールが空いてしまった大勢のフリーの映画製作スタッフです。彼らを長期的に雇えばドラマの質は保ちつつ、安定した制作が可能です」(前出・フジテレビ関係者)

 ギリギリまで上がってこなかった台本が、早々に完成するようになったことも大きい。

『イチケイのカラス』は法廷ドラマですし、『ラジエーションハウス2』も医療ドラマと“職業”がモチーフとなっている1話完結作品は、時代の流れをあまり反映せずにすみます。脚本をすべて完成させてからクランクインすれば、ロケなどをまとめ撮りできるので経費削減につながるんですよ。俳優を抱える事務所としても、無駄なスケジュールを押さえなくてすむので喜ばれていますね」(前出・制作会社関係者)

 もちろん、早すぎる脚本の完成は時代性との乖離を生むおそれも。

「かつては『東京ラブストーリー』や『ロングバケーション』といったトレンディードラマを連発し、高視聴率が当たり前だった月9も、近年は低迷ぎみ。最近では、逆に流行を追わない“脱トレンディー”の流れが来ています」(芸能プロ関係者)

前倒し撮影に潜むリスク

沢村一樹らと共演。救急隊員に扮する北村匠海は、休憩中も真剣な表情を崩さなかった

 自身のブランドであったトレンディーを捨てて、早撮りで月9再興を試みるフジだが、前出の木村さんは、前倒しの撮影には取り返しがつかないリスクがあることを指摘する。

「2019年11月に大河ドラマ『麒麟がくる』に出演予定だった沢尻エリカさんが薬物の使用で逮捕され、収録ずみのシーンに撮り直しが発生しました。昨年10月にも、道路交通法違反の疑いで伊藤健太郎さんが逮捕されましたし、メインキャストが不祥事を起こすと、大きなトラブルにつながります

 伊藤は今年1月に放送されたスペシャルドラマ『教場2』(フジテレビ系)に出演予定だったが、“爆弾スキャンダル”により出演シーンが差し替えられることに。

「公式発表前だったため代役とは明かされていませんが、ジャニーズWESTの重岡大毅さんが演じた役は、当初は伊藤さんで撮影が進められ、すでに撮り終わっていたんです。早撮りに舵を切ったフジテレビのドラマ班スタッフは、とにかく出演者たちが不祥事を起こさないことを願いながら撮影していますよ」(前出・芸能プロ関係者)

“早撮り戦略”は吉と出るのか。すべてはキャストのプロ意識の高さにかかっているのかもしれない……。