現場となったキャンプ場は天竜川沿いで桜の季節を迎えていた

《ああ、やばいな。そう思ったのが学習発表会の二週間前》《私は、緊張感が元々うすい性格》(以下も本文ママ)

 小学校の卒業文集で『私なりの努力』と題して、自身が発表会でピアノの伴奏者に選ばれてからの過程を綴っていた少女が、自死の道を選んでしまった……。

名門女子中学生が
30代の容疑者とネット心中

 3月16日の昼ごろ、福岡市の無職・入江大(だい)容疑者(33)は、静岡県浜松市天竜区のキャンプ場から、

「自殺しようとしたが、死ねなかった。自分だけ生き残ってしまった」

 と110番通報。静岡県警天竜署員が駆けつけると、容疑者と、目張りされたテントから浜松市の中学3年生の匂坂絢乃(さぎさかあやの)さん(享年15)の遺体を発見。テントの中には自殺に使用された七輪や練炭が残っていた。

 入江容疑者は体調不良でそのまま入院。翌日に退院したが、15日に匂坂さんを車に乗せて浜松市内を連れ回したとして、未成年者誘拐の疑いで逮捕された。

「容疑者は福岡の地元では、明るく優しい人物として知られていたようです。匂坂さんとはSNSで知り合い、知らない者同士がネットを通じて連絡を取り合い、心中を試みるネット心中だったと思われます」(地元メディア記者)

 県内屈指の名門中学に通っていた匂坂さんが、卒業式の直前に、ネットで知り合った見ず知らずの男と一緒に自殺するとは、何があったのだろうか──。

 浜松市内で生まれ育ち、母方の祖父母、両親、妹と同居していた匂坂さん。父親は医師で、自宅から近い場所に最近、大規模なクリニックを開院していた。

 母親は近くの薬局で薬剤師として働いていて、何も不自由がない生活をしているように見える一家。

「お父さんは医師と思えないほどフランクな方。お母さんも非常に明るい方なので、娘に医者になれと厳しく迫るようなタイプではないと思いますよ。

 両親は忙しいだろうけど、家ではおじいちゃん、おばあちゃんがいるし、家庭での問題は特になかったのでは」(近所の住民)

読書好きの匂坂さんは、小学校では図書委員を務めていたことも

 小学校は地元の公立校に通っていた匂坂さんだが、当時の同級生が語る。

「小柄でおとなしくて、家で読書をするのが好きな子でした。外で遊ぶ姿はほとんど見たことがないです。

 特に国語が得意でしたが、ほかの科目もすべてよかった。学校ではトップクラスの成績でしたね」

 冒頭の文集で匂坂さんは、

《ピアノの伴奏者に選ばれました。と言っても、私以外の立候補者がいなかったので、オーディション無しの……》

《私は、まだ残りの日数に余裕があることを知って、練習時間を減らしてしまい》

 と自分を客観視することができる大人びた性格の少女だったようだ。

「子ども特有のはしゃぐようなところがまったくなかった。落ち着いた大人のような、本当に利発な子でした」(別の近所の住民)

 匂坂さんの自宅近所では、勉強や進学の悩みが原因だったのでは、という声がいくつか聞かれた。

「絢乃ちゃんのおばあちゃんはおしゃべり好きで、近所になんでも話してしまう。家の自慢話も多い。でも最近は、“孫娘が○○高校に合格した”とか、“○○高校へ進学することになった”とは聞いていない。絢乃ちゃんは志望校に進めなかったことを苦にしたのかも……」(同・住民)

「中学でいじめを受けて不登校に」
という証言も

 さらに、匂坂さんを知る関係者からはこんな証言も寄せられた。

「本人から、“中学校でいじめを受けていて、不登校になっている”と聞いたことがあります。いつごろなのか、どんないじめなのか、詳しいことまでは聞いていません」

 いじめが原因だとしたら、それから逃れられる卒業間近になぜ……という疑問も残る。

 一部で、匂坂さんが通っていた中学の「学校でのトラブルなどは聞いていない」とのコメントが報じられたが、週刊女性の取材では「現在、調査中」という回答だった。

通っていた中学校のホームページでも匂坂さんは紹介されていた

 匂坂さんの父親は事件後、

「私たち家族は、いまだ心の整理がつかない状態です」

 とコメントしている。改めて同居する祖母に聞くと、

「体調がよくないので、申し訳ありません」

 あまりにも突然の孫娘の死に、うちひしがれている様子がひしひしと伝わってきた。

《気付くと学習発表会の二週間前。私も、さすがに練習しないとまずいと思いました》

《必死に私は、練習しました》

 本番直前の緊張感をそう文集に書いていた匂坂さん。

 当日はミスなく演奏して安堵したようだが、

《発表会で学んだことを忘れないようにしたいです》

 と自らを律するように文章を締めくくっている。

 そんな努力家でストイックな匂坂さんは、中学でも勉強やトラブルに一生懸命、対処していたはず。

 それが叶わなかったとしても、自死以外に選択肢はなかったのだろうか……。