元SKE 48メンバー北川綾巴(本人のツイッターより)

 推しているアイドルと、50万円で個室で一緒に焼肉を食べられる。

 それを高いと感じるだろうか、はたまた適正と感じるだろうか。

北川綾巴が肉を焼いてくれる

 元SKE 48メンバー北川綾巴が、これまでの活動経験を活かし、かねてから興味を抱いていたプロデュースやマネジメントに挑戦するため、名古屋を拠点としたアイドルグループを結成するという。4月に1次審査をスタートし、6月には合格者発表、9月にお披露目を目指す。

 活動の準備資金として、クラウドファンディングで目標金額500万円を提示。北川は、クラウドファンディングの募集サイト上に「コンセプトはかわいいだけでなく、カッコ良さとエモさも兼ね備えたグループを作りたいと思います!」と意欲を語っていた。

 クラウドファンディングでは支援の金額によって「リターン」が設定されていて、2000円では「お礼メール」、3000円は「限定生写真(※5枚購入につき1枚に直筆サイン)」、5000円だと「限定タオル」、7000円で「限定Tシャツ」などが支援者のもとに送られてくる。

 当然リターン内容は高額になるほどプレミアム感が増していき、5万円で「デビュー衣装の切れ端(北川の直筆サインとシリアルナンバー付き)」、10万円では北川が支援者の名前を呼んで起こしてくれる「宛名付きサイン入り目覚まし時計」と、どんどん豪華になってくる。

 そして、設定されている中で最も高額なものが冒頭の、50万円で「北川綾巴と個室で焼肉を食べながら語る権利」である。

 焼肉を一緒に食べたあとには宛名とコメント付きの2ショットチェキも撮影できる。時間は約90分、個室には北川と同行スタッフ、支援者の3人で入り、北川が肉を焼いてくれる。新型コロナウイルスの感染防止のため、握手などの接触行為は禁止。限定2名のみの募集。

「普通の感覚なら50万円という金額に驚いてしまいますが、強めのアイドルファンだったら、これは妥当な価格だと感じられるのではないでしょうか」

 と、ある芸能ジャーナリストは言う。

北川綾巴のクラウドファンディング 50万円で「北川綾巴と個室で焼肉を食べながら語る権利」

1万円で握手1分40秒だとすると

「北川さんが所属していた48グループの握手会は、個別握手の場合、握手券1枚でだいたい10秒です。よく知られるとおり、握手券は購入したCDに入っているもので、仮に1枚1000円だとして、1分握手したいのなら6枚(6000円)購入が必要。1万円(10枚分)出せば1分40秒握手ができます。これを90分に換算すると54万円になるため、焼肉90分50万円という価格とちょうどいい金額になります(笑)。『全国握手会』という握手会の場合はもっと短くて5秒ほどで終わることもありますから、コアなファンには価値があるかと思います。ここに焼肉代も含まれるので、一見、高いようだけど、よく考えられた設定ですよね」(同前)

 このような独特の金銭感覚は、アイドルファンの世界ではそれほど珍しいものではない。CDの購入額が、ひとりで100万円を越したり、コンサートでいい席を手に入れるため数十万円を使う人もいるという。

「最近は某ジャニーズとアイドルグループメンバーの“パパ活”が話題になったこともあり、今回の北川さんの個室焼肉も“パパ活だ”という声がネットに上がっていましたが、ファンにとっては納得の額ではないでしょうか」(同前)

 以前からCDの購入枚数に関しては賛否あるが、48グループに限らず、それはファンが推すアイドルへの愛を示す指標になっている。そこを基準として考えると、前出のジャーナリストの計算も理解できる。

「現在は握手ではなくオンライン上やアクリル板越しの『お話会』や『ネットサイン会』がCD特典になっていますが、コロナ禍でもアイドルビジネスは好調のようです。アイドルだけでなく、アニメファンや接客系の飲食店のキャスト、コレクターの世界にも“推し”への投資が行われ、投資する側は満たされているようですね」

 と、テレビ局関係者は“ファンが存在するジャンルは”どんな状況下でも強いと言う。

 4月2日時点、北川綾巴の「個室焼肉90分50万円」の支援者は1名いる模様。一緒に美味しい焼肉を食べながら、これからつくられるアイドルグループの構想や夢についてお話できるのは、夢のような90分といえるのかもしれない。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉