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 1日10分、単純な動きで、なんと認知症まで防げちゃう! 特別な準備もいらず、簡単だから続けやすいと評判。脳神経内科でスポーツドクターの内野勝行先生がイチオシする踏み台昇降。さぁ今日から始めよう!!

認知症を防ぐ!  踏み台昇降

「筋肉は加齢とともに減っていきます。運動をしないと、筋肉だけでなく神経も衰えて、運動ができない身体になってしまいますよ!」

 と、警鐘を鳴らすのは、脳神経内科の内野勝行先生だ。

 年齢とともに筋肉量と神経細胞の数が減り、神経を使わないと情報を伝える神経節がヘロヘロになるのだ。

「筋肉は1年に1%落ちていくといわれていますが、これはあくまでも平均的な数値。個人差が大きく、運動をしていない人は、その数倍は減っていきます」(以下、内野先生)

 筋肉が減ると、太りやすくなるなど見た目も悪くなり、運動機能が落ちて転倒しやすくなるほか、高血圧など生活習慣病のリスクが高くなる。さらに、こんなリスクも!

「運動不足は認知症のリスクが高くなります。認知症の改善に運動療法が使われているくらい、認知症と運動には関係性があるのです。認知症の予防のためにも、40~50代からしっかりと貯筋をしておくことが大切です。 

 運動を行うと酸素が身体をめぐり、アドレナリンやドーパミンなどやる気ホルモンも出て、いいことばかりです」

 今運動をしておかないと、将来さらに大変なことになるという。

「マッスルメモリーといって、運動することによって筋肉が覚えた筋肉の動かし方の記憶があります。しかし、運動をしないと10年でマッスルメモリーが消えてしまい、運動情報がゼロになる。つまり、運動できない身体になってしまうのです」

 運動療法が必要になったときに、動けない身体になってしまうというのだ。

 そこで、内野先生のオススメの運動が、

「踏み台昇降です。足の大きい筋肉を動かすので、効率よく運動ができます。チンタラとウォーキングしているよりも、踏み台昇降をピシッと10分間、行ったほうがよっぽど効果的ですよ」

 スクワットがいいといわれているが、なぜ踏み台昇降?

「スクワットはもちろんいいのですが、正しいやり方で行わないと、大腿四頭筋といって股の前側の筋肉だけが発達してしまいます。

 スクワットは本来、股の裏側の筋肉、ハムストリングを鍛えることが目的です。踏み台昇降なら、股の表も裏も両方とも鍛えることができます」

 内野先生方式の踏み台昇降は、足だけでなく腕も使う。

踏み台昇降

「腕をしっかりと使うことで、肩甲骨付近にある褐色脂肪細胞が活性化して、脂肪が燃えやすくなります」

 まだまだ現役のミドル世代は、背中のハミ肉やウエスト周りのぜい肉も落としたい。
「踏み台昇降でポイントとなるのは、ひざを高く上げること、腕を曲げて大きく振ることです」

 たったこれだけで、正しく筋肉を動かすことができる。

「踏み台昇降がつらい人は、その場足踏みから始めてもいいでしょう。そのときも、ひざを高く上げて、腕を大きく振ってください。1日10分を目標にして、もの足りなければ踏み台昇降に移行しましょう。

 踏み台昇降だけだともの足りない場合には、8の字マラソンをオススメしています。歩く速さで全力で8の字に走ります。外で行ったら変な人ですが(笑)、狭い家の中でも大丈夫な運動ですよ」

踏み台はこれでOK! 代用品も紹介

 踏み台の高さは10~20cmでOK。市販のものを利用してもいいが、雑誌などを重ねて簡単に作れる。前のページでは100円ショップのものを利用。

□新聞紙を重ねたもの

 新聞紙を2つ折りにして、高さ10~20cmに積み上げる。面が斜めにならないように整え、ビニールの紐でしっかりと結び、崩れないようにする。

新聞紙を重ねたもの

□電話帳を使う

 古い電話帳でも10cm程度のものがあれば、そのままで利用できる。幅が欲しければ2冊並べ、その場合は、紐で結ぶかガムテープなどで固定を。

□100円ショップの椅子

 100円ショップの折りたたみ椅子でもOK。子ども用などは面が小さいので、なるべく大きい面のものを選んで。

100円ショップの椅子


□階段の1段目

 階段の1段目を利用。一般的な家庭の階段は20cm程度だが、高いところもあるので測ってみて。オフィスやマンションの階段でもOK!

階段の1段目

踏み台がない場合は「その場足踏み」!

 踏み台がない場合や踏み台を使うとキツい場合は、その場足踏みでok。歩くときよりもゆっくりペースで、筋肉を意識しながら行う。踏み台昇降と同じく10分が目標タイム。

〜その場足踏みの正しい方法〜

間違ったその場足踏み

:ひざが床と平行になるまで高く上げる。歩くようにゆっくりと足を交互に動かす。

:腕は90度以上に曲げて、肩甲骨を意識してしっかり後ろまで振る。
これはng

 足を後ろ側に曲げて、ひざが下がると足の筋肉が使えず、ムダな動きとなる。腕が伸びたり、後ろに上げないのも腕や背中の筋肉が使えていない。

〜足りない人は「8の字マラソン」をプラス!〜

 踏み台昇降がもの足りなくなってきたら「8の字マラソン」をプラス。全速力で走るスタイルで手足を早く動かすが、進む速度を歩く程度にする。家の中で8の字を描きながら行う。8の字は小さくてOK。

 手足を大きく早く動かすのがポイント。10分程度続けるのが目標だが、キツい場合は5分から始める。

加齢の波にのって軽やかに年をとろう

「アンチエイジングという言葉は、年齢に逆らうことではありません。加齢の波にのって軽やかに年をとっていくことです。しかし、現代人の筋肉の衰えは神経の衰えを超えています。波にのるためにも、運動が必要なのです」

 過度な運動やストイックな運動ではなく、自分に合った運動を行いながら、年をとっていくのがベスト。

「ウインドサーフィンをするように、年齢の波にスイスイのってけ、のってけ~♪という感じです」

 薬漬けの将来や病気の長患いを避けるために、運動は何よりも有効だとか。

「PPK(ピンピンコロリ)、朝起きたら三途の川だった(笑)を目指しましょう!」

内野勝行先生
教えてくれた人……内野勝行先生。脳神経内科医。スポーツドクター。金町駅前脳神経内科院長。帝京大学医学部医学科卒業後、都内病院の神経内科や千葉県の療養型病院副院長を経て現職。笑いを交えたわかりやすいレクチャーで人気