2021年4月1日、テレビ東京のお昼の人気映画番組『午後のロードショー』がめでたく放送開始25周年を迎えた。ファンの間では『午後ロー』の愛称でも知られる同番組は今、記念の特別ラインナップを放送中で、ゴールデンタイムに流しても遜色ない豪華な作品でファンを盛り上げている。平日の13時40分スタートという時間帯ながら、いまだに多くのファンの心を掴んで離さない番組の魅力とは?担当プロデューサーに聞いてみた!
『午後ロー』プロデューサーが語る秘話
「人事異動で2016年の下期より『午後ロー』の担当に就きました。学生時代から映画が大好きな人間で、昆虫パニックもの以外はオールジャンルで観ます(笑)」
と笑顔で話すのは、“地上波映画枠 最後の砦”と称される『午後ロー』を担当する、テレビ東京総合編成局・映画部の岡本英一郎氏(以下、「」内は岡本氏)。愛され続ける同番組は、1996年から今のスタイルで放送されている。
ファンの間では、テレ東のかつての人気映画番組『木曜洋画劇場』(2009年終了)と似てると話題になっているが、“差別化”はされていたのだろうか?
「テレビ東京には映画部という部署があり、映画部が『午後ロー』をはじめとする映画や海外ドラマの放送を担っています。『木曜洋画劇場』と『午後ロー』は、両番組ともにこの映画部が担当しており、時期によっては同じプロデューサーやスタッフが両番組に関わってきたので、番組のDNAとして共通するものがあるのでしょう」
『木曜洋画劇場』と『午後ロー』といえば、共に「ジャンジャンジャジャン、ジャン=クロード!」といった、俳優の名前を連呼するなどの強烈なインパクトのあるCMで愛されてきたが、そこにはこんな秘話があるという。
「『木曜洋画劇場』で予告CMを作っていた一部のスタッフが、『午後ロー』の予告も担当しているので似ているのだと思います(笑)。
今の『午後ロー』でも、かつての『木曜洋画劇場』
そんなアツい映画愛に満ちた『午後ロー』だが、普段はアクション映画やパニック映画と、コアな映画ファンが喜ぶラインナップが特徴的。こうした作品チョイスはどのようにして行われているのだろうか。
「配給会社さんから新規にご提案いただく作品が年間100~200本ありまして、それらをプロデューサーがチェックし、誰が見ても“おもしろい”と感じ、同時に視聴率が取れる映画を選ぶように心がけています。
ちなみに劇場公開直後の新作は、すぐには放送できませんが、『数年後に放送してやるぞ……』という布石として劇場でチェックしている作品も年間80~130本あります」
同番組は『ジョーズ』や『シャークネード』などの“サメ映画”や、劇場で公開されず、直接DVDリリースになった作品も多く放送し、こうしたジャンルだけで「○週連続サメ映画!」などの特集を組むこともある。他の番組では考えられないこうした構成についても気になるところだ。
「特集を組んで、より人目を惹くことで、知名度が低く埋もれがちな作品をいろいろな方に見ていただけますし、ファンの方にとっても見やすいだろうなと感じているため、積極的に組んでいます。
実際、“夏のサメ映画特集”については、よく『夏を感じる』とファンの方に話題にしていただけるので、夏のお約束として引き続き放送していきたいですね」
「最後の砦になってでも映画枠を守り抜く」
今回の放送開始25周年記念では、往年の名作に加えて地上波初放送作品も目白押し、加えて関東地区では11年ぶりの放送ということでSNSでファンが大いに盛り上がっている『プレデター2』など、怒涛のラインナップが話題だが、これらはどのように決まったのだろう。
「せっかくお祝いするなら派手にやりたいな、と。かつてのゴールデンタイムで放送されていた豪華な作品や新作を入れることで番組を盛り上げると同時に、コロナ禍で窮屈な生活を強いられるおうち時間を少しでも楽しんでほしいと思いラインナップしました。
また、我々が気合いを入れていいラインナップにすることで改めて映画のよさを感じてもらい、『たまには劇場に映画を観に行ってみようかな』と冷え込んでいる映画産業も盛り上がれば幸いです。SNSでの盛り上がりや要望についても、いつもスタッフのみんなでチェックしていますし、その想いは参考にさせていただいていますよ」
映画業界では近年、動画配信サービスが主流で、テレビでの放映は追いやられている印象がある。こうした現状について岡本氏はこう語る。
「テレビで映画を流す意義は3つあると考えています。1つめは余計な労力を使わずに“タダ”で楽しい映像体験ができる点。現在主流の動画配信サービスでは能動的に視聴する作品を選ぶ必要があり、それが意外と疲れるという方もいると思うんですよ。
2つめはテレビ局が作った吹替え版が楽しめるという点。昔は同じ作品でも各局でそれぞれ特色を出そうと独自の声優を使って、吹替版を作るというクオリティ合戦がありましたし、そうした文化の残り香を楽しんでもらえると嬉しいですね。
3つめは“ながら視聴”のしやすさという点。動画配信サービスは場合によっては作品ごとに料金がかかりますので、真剣に視聴しようとなるでしょう。しかし、地上波映画はお金がかからないうえ吹替え版を放送していますから、目か耳のどちらかの意識を向けていれば別の作業をしながらでもストーリーについていけるのがメリットだと思います」
同番組は予告CMで“地上波映画枠 最後の砦”というフレーズを使っていたことも記憶にあるが、このフレーズにかけた想いとはなんなのだろう?
「最後の砦になってでも映画枠を守り抜くという決意と覚悟です。先日、日本テレビさんの『映画天国』のレギュラー放送が終了するというニュースを聞いて、テレビで映画をレギュラー放送している番組の数がどんどん減ってきてしまっている現状に悲しみを覚えました。
だからこそ、今後も可能な限り新作や視聴率もいい邦画作品を織り交ぜながら、ギネスブックに載るような長寿番組を目指します」
最後に、ファンや読者に向けて岡本氏はこう話す。
「25年間もの長い間続けてこられたのは、ファンのみなさまが『午後のロードショー』を大事にしてくださったからです。本当に感謝していますし、心よりお礼を申し上げます。
そして同番組をあまり視聴されない方に伝えたいのは、普段は痛快アクション系のラインナップが多いですが、良質のサスペンスや祝日の邦画ですとか、心温まるような作品もありますので、まずは一度ご覧になってみていただきたいということですね。また番組も50周年を迎えられるよう、スタッフ一同頑張っていくつもりです」
どうか末長く映画の素晴らしさを届け続けてほしい。
(文=TND幽介〈A4studio〉)