第55回 小泉今日子
芸能人は「芸能人であり続けるために、努力すること」も仕事のうちなのではないでしょうか。どんどん新人が入ってくる中で、自分のオリジナリティーを出さなくてはすぐに古くなってしまう。こうなると、歌や演技などの本業はもちろん、生き方や考え方でも大衆を魅了するための自己プロデュース能力が求められるのかもしれません。
'80年代に正統派アイドルとしてデビューした小泉今日子。歌手や女優業のほか、文筆家、プロデューサーとしても活躍していますが、それも卓越した自己プロデュース能力のなせる業ではないでしょうか。
不倫宣言で「外堀をうまく埋めた」
しかし、最近の小泉サンはちょっと精彩を欠いています。小泉サンは2018年に大手事務所からの独立と、妻子ある俳優・豊原功補と不倫宣言をして話題になりました。最近あまり話題にならないなと思っていましたが、4月1日発売の『女性セブン』(4月15日号)によると、実は豊原は1年前に離婚が成立していたそう。
『女性セブン』の直撃で「バレた」ようですが、この報道に合わせたかのように、小泉サンの露出が目立つようになってきます。3月27日発売の『Numero TOKYO』では「自分を愛すること」についてのインタビューに答え、WEBメディアの『現代ビジネス』や『CREA WEB』に登場し、4月5日からオーディオ配信プラットフォーム『Spotify』で、本をテーマにゲストと対談するポッドキャスト番組「ホントのコイズミさん」をスタートさせることを発表しています。豊原が離婚したということは、豊原と小泉サンの関係は不倫ではなくなったわけですから、表に出ても問題ないと判断したのかもしれません。
「不倫略奪なんてヤバい」と小泉サンに嫌悪感を持った人もいるでしょうし、そういうプライベートはどうでもよく、彼女が好きという人もいるでしょう。感想は人それぞれですが、前代未聞の“不倫宣言2018”は「不倫を終わらせるために有効に働いた、外堀をうまく埋めた」という意味で、小泉サンの高い自己プロデュース能力が光っていたように思います。
小泉サンと豊原の来し方を振り返ってみましょう。2015年に『FRIDAY』が二人の関係を報じました。バツイチ同士のオトナの恋愛とあり、好意的な記事だったように私は感じましたが、実は豊原は離婚しておらず、妻子がいたのに記事では触れられていなかったのです。なぜ既婚者を独身扱いしたかについては不明ですが、大人の事情、もしくは忖度があったのではないかと一部で言われていました。
「不倫をしてもバレず、マスコミに叩かれないなんてトクじゃん」と思う人もいるかもしれませんが、小泉サンに結婚願望があった場合、実は損なのではないでしょうか。小泉サンと不倫関係にあっても、マスコミが報じない。となると、豊原はわざわざけじめをつける必要はなく、小泉サンと妻子の間をふらふらしていられるのですから。
実際、2018年2月に豊原が開いた会見によると、豊原は数年も不倫関係にありながら、その時点で妻と離婚の話をしていないという何ともヤバい状態。しかし、小泉サンが不倫宣言したことで、豊原も会見をせざるをえなくなり、日本中に「妻子と小泉サン、どちらを取るか」をはっきりさせることを“公約”させられたわけです。
豊原は小泉サンから「離れられない」
スポンサーの声を重視するテレビ局が、不倫をしている俳優を積極的に起用するとは、考えられません。だからこそ、不倫を自分から明らかにした小泉サンを「ウソのつけない人、潔い人」と言う人もいるのだと思います。しかし、この会見は豊原への経済制裁につながるという意味で、小泉サンに利があるのでないでしょうか。なぜなら、不倫を公言することで、豊原は活動できる場所が少なくなり、経済的にも打撃を受けることが明らかだからです。
一方、小泉サンは大手事務所からの独立を発表、2020年まで女優業を休んでプロデューサー業に専念することを発表し、豊原は小泉サンのプロデュースする舞台の主役を務めています。見ようによっては、豊原の生活は「小泉サン頼み」なわけで、豊原は小泉サンから「離れられない」といったら、深読みがすぎるでしょうか。
深読みついでに言わせてもらうと、小泉サンの「2020年までの休業」というのも非常に意味深です。というのは、夫婦が5年以上別居していると夫婦関係が破綻しているとみなされ、離婚が認められることもあるそうなのです。豊原が妻子と別居を始めたのが2015年だそうですから、2020年は別居5年目の勝負イヤーです。小泉サンは豊原の離婚が成立するまでは表立った活動を避けて潜伏すると決めていたのではないでしょうか。
……なんて書くと、小泉サンがハメたみたいな言い方に聞こえるかもしれませんが、仮に小泉サンが豊原包囲網を敷いたとしても責められないでしょう。なぜなら、何年も交際をしながら豊原がはっきり決断しないことで、小泉サンと豊原の妻子、双方の傷が深くなるばかりだからです。国民的アイドルだった小泉サンは「不倫オンナ」という不名誉なレッテルを貼られ、片や妻子は、いつ帰ってくるかもわからない豊原を待ち続けなければいけない。これだけ不倫が長引くと「家庭に戻れ」という時期はとっくに過ぎていますから、どちらを選ぶかははっきりさせるしかないでしょう。
二人の結婚のタイミングはかなり難しい
意地で豊原を勝ち取ったかに見える小泉サンですが、もう不倫ではないから問題なし、万々歳とは言えないと思います。不倫にいい悪いはないと思いますが、やはり家庭を壊したとなると、印象が悪くなることは否めません。こうなると、結婚のタイミングも難しくなってくるのではないでしょうか。前述の『女性セブン』の取材に対し、豊原は再婚について「そんなことは具体的に何も考えていません」とコメントしていますが、人の気持ちなんて簡単に変わります。「結婚は二人がしたいときにすればよい」というのは一般人の話であって、芸能人の場合、結婚や離婚がイメージを左右することは今更説明するまでもないでしょう。
小泉サンといえば俳優・永瀬正敏と離婚後、2006年に20歳年下のKAT-TUN・亀梨和也との熱愛が報じられたことがあります。バツイチとなっても、20歳下と臆することなく自由に恋愛を楽しむ姿は、独身女性の憧れでした。しかし、そんな小泉サンがすぐに豊原と結婚すれば、「結局、結婚したかったんだ」と捉えられたり、一方で「自由に恋愛したくても不倫になってしまう、それなら、早く結婚したほうがいいのでは?」という昭和的な教訓として受け取る人もいるかもしれません。
結婚しないで交際を続けるスタイルも、もちろんアリですが、このスタイルが支持されるのは、「結婚なんてしていないけれど、すごくうまくいっている」ときでしょう。どちらかの心変わりや浮気など、二人がうまくいかなくなったら、「人を不幸にする恋愛はうまくいかない」とか「やはり結婚したほうがよかったのでは?」という否定的な意見も出てくるでしょう。
小泉サンの人生ですから、ご本人がしたいようにすればいいわけですが、スターというのは大衆の願いを背負うという宿命を持っているのではないでしょうか。小泉サンが輝くことで、自分が肯定されたように感じて希望をもらうファンもいるはず。こうなると、失敗は許されない。運も実力も持っている人ですから、下手を打つとは考えにくいですが、「次の一手」が小泉サンの真価を決める気がします。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」