《現在特に症状はないものの、今後は感染防止拡大を最優先として保健所等のご指示に従い、回復に取り組んでまいります》
4月13日、山本耕史に新型コロナウイルス感染の陽性判定が出たことが、所属事務所のHP上で発表された。これにより、4月23・25日に出演予定だった舞台『シブヤデアイマショウ』を降板。山本は、いわゆる“無症状”のようだ。
「ご家庭には奥さんである元女優の堀北真希さん、それに幼い2児の子どもたちもいるだけに心配ですね。第4波とされる中、誰もが感染しうる状況で致し方ないとはいえ、彼が感染したことでまた“聖火リレーの意義”が問われるかもしれません」(スポーツ紙記者)
現在、感染が広がる主要都市で「緊急事態宣言」に代わる「まん延防止等重点措置」の適用が検討されている。それでも行われる「東京2020オリンピック聖火リレー」について、公道の利用の中止、もしくは聖火リレー自体の中止を検討する自治体も出始めている。
“ノーマスク”で走る姿に違和感
3月25日に福島県のJヴィレッジからスタートした聖火リレー。“第1走者”を務めたサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」のメンバー(2011年時のメンバー)をはじめ、各界の著名人らが全国各地でトーチをつないでいる。
そんな彼らをひと目見ようと、特に芸能人が走る区間の沿道には応援する人が集まり、一時的に密になる場面が各種報道で伝えられた。そして主役であるランナーたちがマスクを着用しない、いわば“ノーマスク”で走っている姿に違和感を覚える人もいたのでは。
そして山本もまた4月4日、岐阜県が推薦する聖火ランナーとして関ケ原町内を走っていたのだ。彼の場合、コロナ感染時の状況と時期が明確にされていないことから、少なからず聖火リレー時に自身が感染した、また他者に感染させた可能性がなかったとは言い切れない。これから走るランナー、また受け入れる自治体にも不安が広がりそうだ。
岐阜県の県庁地域スポーツ課によると、山本が走ったのはミニセレブレーションが行われた笹尾山登山口から笹尾山山頂までの山道。関ヶ原の合戦における「石田三成陣跡」の碑が建つ屈指の名所だ。ゴールの山頂には数十人の観覧客の姿があったものの、沿道ではマスクを着用したスタッフが伴走しただけで、山本の周囲で密になるような状況はなかったようだ。
とはいえ、主役である山本はマスクを着用していなかったのだが、これはどういった判断によるものなのか。
「(東京オリンピック・パラリンピック競技大会)組織委員会として、走行時において一定の距離を確保した上で、マスクを着用しないことを可能とする、というルールになっております。
今回もですが、他のランナーの方を見ていただくとわかるように、沿道と距離をとり、セキュリティーを務めるランナーの方もマスクをしっかりした上で走り、また声を出さないとか、唾液などが飛ばないような形で運営することで“マスクをしなくても走れる”というような状況でして、組織委員会のルールと照らし合わせても問題ないということです」(岐阜県庁地域スポーツ課)
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のHPには、聖火リレーの《感染症対策について》として《聖火ランナーの遵守事項》が書かれている。主な事前対策として、
《実施2週間前から当日までの間、会食をしない、密集する場所への外出を避けるなど、新型コロナウイルス感染リスクの高い行動をご遠慮ください》
《体調が悪い場合や感染が疑われる場合は、速やかに、保健所や診断書に報告・相談をお願いします》
などを呼びかけている。しかしPCR検査については、《走行前72時間以内のPCR検査又は抗原定量検査を推奨します。検査費用については組織委員会が負担します》と、あくまで“推奨”であって“義務”としていないのだ。
また当日の対策として、体調が悪い場合の参加見合わせ、検温と消毒、体調管理チェックシートの提示などの措置が取られるとのこと。そして、気になるランナーのマスク着用に関してはこう書いてある。
《マスクをご着用ください。(ただし、走行時においては、一定の距離を確保した上で、マスクを着用しないことを可能とします。)》
各自治体はこのルールにのっとって、山本を含めたランナーがマスクを着用しなくてもいい、と判断しているようだ。
参加は聖火リレーだけではなかった
ところが、山本が参加したのは聖火リレーだけではなかった。2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』で石田三成役を演じただけに、完走後にゆかりの地である関ケ原町が主宰したトークショーにも参加。マスク着用を義務付けられた、約200名の観覧客を前に登壇したのだ。
同町の教育委員会教育課に当日の様子を聞くと、
「山本さんは元気で(体調不良等は)まったくないように見えました。トークショーではマスクは外されていましたが、観覧客はもちろん、聞き手の方との距離は十分にとっていました。時間にして1時間程度で、マスクなしで接触があったのはその聞き手の方のみですが、体調は問題ないと聞いております」
感染防止対策はしっかりとられていたようだが、楽しみにしていた観覧客へのサービスの側面もあったのだろう。マスクの着用は省かれたようだ。
マスク着用では“うまみ”がない
「聖火リレーに参加を決めた芸能人もマスクで顔を隠されては“うまみ”がありませんからね。でも、テレビでは見栄えの面でマスクなしで走っているところばかり抜かれますが、実際には各自治体は出走直前までマスク着用を促し、マスクなしのフォトセッション時も十分な距離をとって気をつけていますよ。
それでも、有名芸能人であれば聖火リレー以外のところでも現地の営業イベント等に呼ばれる可能性もあるわけで、全国に“出張”させる立場の組織委員会としてはマスク着用を曖昧なルールにするのではなく、多くの国民に納得してもらえるような明確な基準を設ける必要も考えないといけないのかも」(全国紙記者)
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会広報局に「聖火ランナーはマスクをしなくてもいい」とする理由を問い合わせると、メールにて次の回答が送られてきた。
「走行時は周囲と一定の距離を確保しているため、マスクを着用しないことを可能としています。ただしご希望される方には走行時もマスクを着用いただいております」
あくまでもランナーの判断に委ねている、ということだろうか。では、「今後、ランナーにマスクを義務付けるか」について、
「今のところその予定はございません。上記のとおりご希望される方にはマスクを着用いただきます」
東京五輪の開幕まで100日となった4月14日、小池百合子都知事は「コロナとの闘いを超えて開催できる大会にしていく。そしてまたそれを皆さんと共に果たしていく、そのような大会へと向かっていきたい」と、あらためて開催への強い意志を示してみせた。
ドタバタが続く組織委員会と共に、強いリーダーシップをもって国民や自治体、そして矢面に立ちながらも五輪のために走る聖火ランナーたちを牽引してほしい。