福山雅治さん、B'zなどのアーティストがランクイン

 物語終盤のクライマックス、2人の想いが成就するのか、また主人公の心情へ寄り添うように……ここぞという場面になると、絶妙のタイミングで飛び込んでくる主題歌。

 ドラマ好きの皆さんはもちろん、それほどドラマに関心がない方も、何度か目にした光景だと思います。こうした、文字通りドラマティックに使用される、ドラマ主題歌からは数多くのヒット曲・名曲が生まれてきました。

「ドラマ主題歌=ヒット曲」の法則はいつできた?

 この「ドラマ主題歌=ヒット曲」という法則は、いわゆる“トレンディ・ドラマ”全盛期の、1990年代初頭に確立されたものであるのは間違いないところ。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 その先駆けとなったのは、1991年1月スタート『東京ラブ・ストーリー』(フジテレビ系)の主題歌「ラブストーリーは突然に」(小田和正)、そして同年7月スタート『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)の「SAY YES」(CHAGE and ASKA)の2曲でしょう。

 いずれもシングルの売り上げが250万枚以上という歴史的なセールスを記録。これ以降、数多くのアーティストによって主題歌が作られ、ドラマを彩ってきました。

 このヒットの法則は、現在においても変わらず有効です。米津玄師も、あいみょんも、星野源も、Superflyも、Official髭男dismも、この“法則”に沿って、数多のヒット曲を生み出しています。

 こうしたドラマ主題歌が日本の音楽史の上で重要なファクターとなって、今年でちょうど30年。そんな節目の年(?)を迎えるにあたって、これまでに「最も多くドラマ主題歌を送り出したアーティスト」は誰なんだろうという素朴な疑問が浮かんだ筆者は、調査を敢行してみようと思い立った次第。今回はその結果を、カウントダウン形式で発表していきたいと思います。

 対象期間は、1991〜2021年1月クールまでの過去30年間。連続ドラマの主題歌として公式に発表されたもの。シリーズ作品などで同一の曲が使用されている場合は1曲として換算しました。30年という長期間なので、長く活躍し続けているアーティストほど有利なのは致し方ありませんね。

 では、トップ5を発表していきます。先に触れておくと、5位以上のアーティストはみな20曲以上も主題歌を提供しています。すごいことですよね。

5位 福山雅治 20曲

 初めてドラマ主題歌を提供したのは1995年、本木雅弘主演『最高の片想い』(フジテレビ系)の「HELLO」(実はそれ以前にも1994年、緒形拳主演『愛はどうだ』(TBS系)に「Good night」を提供していますが、こちらは挿入歌扱いでした)。

 以降、柴咲コウとのKOH+名義で『ガリレオ』(フジテレビ系/2007年)に提供した「KISSして」や、大泉洋主演『プラチナタウン』(WOWOW/2012年)の「道標」、そして波瑠主演『#リモラブ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系/2020年)の「心音」まで、20曲ありました。

 自ら出演しているドラマで、主題歌を手掛けることが多いのもトップ5入りの理由でしょう。

4位 Mr.Children 21曲

 1993年に4枚目のシングル「CROSS ROAD」を、斉藤由貴主演『同窓会』(日本テレビ系)に提供したのが最初。

『Mr.Children』桜井和寿

 以後、木村拓哉・萩原聖人主演『若者のすべて』(フジテレビ系/1994年)の「Tomorrow Never Knows」、和久井映見主演『ピュア』(フジテレビ系/1996年)の「名もなき詩」、妻夫木聡・柴咲コウ主演『オレンジデイズ』(TBS系/2004年)の「Sign」、山下智久主演『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~』(フジテレビ系/2008、2010、2017年)の「HANABI」などの名曲群から、有村架純主演『姉ちゃんの恋人』(フジテレビ系/2020年)の「Brand new planet」まで21曲。まさしくドラマを彩るアーティストとして君臨しています。

気になるトップ3!

 続いてトップ3ですが、同数で並んだのが2組ありました。1組目は……

2位 B‘z(稲葉浩志含む) 22曲

 1991年、沢口靖子主演『ホテルウーマン』(フジテレビ系)に提供した「ALONE」が彼らにとって最初のドラマ主題歌。続いて1994年の植木等主演『新空港物語』(テレビ朝日系)の「Don’t Leave Me」、萩原健一主演『外科医 柊又三郎』(テレビ朝日系/1995年)の「love me,I love you」と、最初の頃は渋いドラマへの主題歌提供が続いていましたが、1997年の安達祐実主演『ガラスの仮面』(テレビ朝日系)の「Calling」がミリオンセラーに。

 さらに2000年の木村拓哉・常盤貴子主演『Beautiful Life~ふたりでいた日々~』(TBS系)での「今夜月の見える丘に」は、ドラマ自体の平均世帯視聴率(関東地区)が32.3%、最終回は何と41.3%という社会現象にまでなる特大ヒット作となり、主題歌も当然の如くミリオンセラー。

 その後も、伊藤英明主演『海猿 UMIZARU EVOLUTION』(フジテレビ系/2005年)の「OCEAN」、2009年の山下智久主演『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』(フジテレビ系)の「イチブトゼンブ」、2017年の木村拓哉主演『A LIFE~愛しき人~』(TBS系)の「Still Alive」、織田裕二主演『SUITS/スーツ』(フジテレビ系/2018、2020年)の「WOLF」、そして稲葉浩志のソロとして、玉山鉄二主演『誤断』(WOWOW/2015年)の主題歌に提供した「水路」も含め、22曲に上ります。

2位 サザンオールスターズ(桑田佳祐・原由子含む) 22曲

 実は筆者が、トップ1に本命視していたのが、このサザンオールスターズでした。

 1991年以降で彼らの最初のドラマ主題歌は、中井貴一主演『ふぞろいの林檎たちIII』(TBS系/1991年)の「いとしのエリー」。これは1983年の第1シリーズからの継続で、1997年の第4シリーズでも引き続き使用されています。

『横浜アリーナ』ライブを成功させた左からパーカッションの野沢、ベース関口、キーボード原、ボーカル桑田、ドラム松田

 以後、賀来千香子主演『ずっとあなたが好きだった』(TBS系/1992年)の「涙のキッス」、奥山佳恵主演『悪魔のKISS』(フジテレビ系/1993年)の「エロティカ・セブン」、香取慎吾主演『透明人間』(日本テレビ系/1996年)の「愛の言霊~Spiritual Message」、松嶋菜々子主演『Sweet Season』(TBS系/1998年)の「LOVE AFFAIR~秘密のデート」。

 2000年代は、岸谷五朗主演『神様のいたずら』(フジテレビ系/2000年)の「この青い空、みどり 〜BLUE IN GREEN〜」、滝沢秀明主演『僕だけのマドンナ』(フジテレビ系/2003年)の「涙の海で抱かれたい〜SEA OF LOVE〜」、西島秀俊・香川照之主演『流星ワゴン』(TBS系/2015年)の「イヤな事だらけの世の中で」、そして賀来賢人主演『ニッポンノワール~刑事Yの反乱~』(日本テレビ系/2019年)の「愛はスローにちょっとずつ」まで、サザンオールスターズとして14曲のドラマ主題歌を提供。

 さらに、桑田佳祐として、1994年の中山秀征主演『静かなるドン』(日本テレビ系)に提供した「祭りのあと」、山下智久主演『プロポーズ大作戦』(フジテレビ系/2007年)の「明日晴れるかな」、有村架純主演の朝ドラ『ひよっこ』(NHK総合/2017年)の「若い広場」など5曲。

 また桑田夫人=原由子も1997~1998年の佐藤夕美子主演の朝ドラ『甘辛しゃん』(NHK総合)の「涙の天使に微笑みを」(朝ドラ主題歌は、原坊のほうが先だったんですね)など3曲ありますので、合計22曲です。

1位は小田和正、山下達郎、ユーミンではない

 残すところ、後はトップ1の発表だけとなりましたが、他の気になるアーティストについても言及しておきましょう。

 冒頭に、ドラマ主題歌=ヒット曲の先鞭をつけたとご紹介した「ラブ・ストーリーは突然に」の小田和正はというと……中居正広・常盤貴子主演『最後の恋』(TBS系/1997年)の「伝えたいことがあるんだ」、深津絵里主演『恋ノチカラ』(フジテレビ系/2002年)の「キラキラ」、比嘉愛未主演の朝ドラ『どんど晴れ』(NHK総合)の「ダイジョウブ」、二宮和也主演『ブラックペアン』(TBS系/2018年)の「この道を」など、合計16曲でした。

 個人的な印象では、サザンオールスターズと並んで多いかなと思っていたのが、山下達郎。

 1991年以降では、沢口靖子主演『赤ちゃんが来た』(NHK総合/1994年)の「LAI-LA-邂逅」が最初(それ以前にも数曲あります)。その後も、松嶋菜々子主演の朝ドラ『ひまわり』(NHK総合/1996年)の「DREAMING GIRL」、草なぎ剛主演『先生知らないの?』(TBS系/1998年)の「いつか晴れた日に」、香取慎吾主演『薔薇のない花屋』(フジテレビ系/2008年)の「ずっと一緒さ」、木村拓哉主演『グランメゾン東京』(TBS系/2019年)の「RECIPE」など、元SMAPの方々との相性もよく、13曲。

 もう1人、筆者が本命視していたのはユーミンこと松任谷由実。

 1970年代からドラマに主題歌を提供していますが、1991年以降で最初は、一色紗英主演『その時、ハートは盗まれた』(フジテレビ系/1992年)の「冬の終り」、賀来千香子主演『誰にも言えない』(TBS系/1993年)の「真夏の夜の夢」、筒井道隆主演『君といた夏』(フジテレビ系/1994年)の「Hello,my friend」、安田成美主演の朝ドラ『春よ、来い』(NHK総合/1994~1995年)の「春よ、来い」、長瀬智也主演『ムコ殿』(フジテレビ系/2001年)の「7 TRUTHS 7 LIES〜ヴァージンロードの彼方で」、そして木村佳乃主演『恋する母たち』(TBS系/2020年)の「知らないどうし」まで、13曲でした。

 達郎・ユーミンは、本当に思っていたよりも少なかった印象です。

1位は国民的アイドルグループ「嵐」

 お待たせいたしました。トップ1の発表です。そのアーティストは……

1位 嵐(ソロ名義含む) 35曲

 昨2020年いっぱいで活動を休止した嵐が堂々の第1位でした。

 彼らの最初のドラマ主題歌は、松本潤主演『金田一少年の事件簿(第3シリーズ)』(日本テレビ系/2001年)の「時代」。

 2002年には、岡田准一主演で、櫻井翔も出演した『木更津キャッツアイ』(TBS系)の「a Day in Our Life」、2003年には、櫻井翔主演『よい子の味方~新米保育士物語~』(日本テレビ系)の「とまどいながら」、二宮和也主演『Stand Up!!』(TBS系)の「言葉より大切なもの」の2曲。

 2007年には、松本潤主演『バンビ~ノ!』(日本テレビ系)の「We can make it!」、二宮和也・櫻井翔主演『山田太郎ものがたり』(TBS系)の「Happiness」、松本潤主演の『花より男子リターンズ』(TBS系)の「Love so sweet」と3曲も。

 2009年には、櫻井翔主演『ザ・クイズショウ』(日本テレビ系)の「明日の記憶」、相葉雅紀主演『マイガール』(テレビ朝日系)の「マイガール」の2曲、2010年も、櫻井翔主演『特上カバチ!!』(TBS系)の「Troublemaker」、大野智主演『怪物くん』(日本テレビ系)の「Monster」、松本潤主演『夏の恋は虹色に輝く』(フジテレビ系)の「Love Rainbow」、二宮和也主演『フリーター、家を買う。』(フジテレビ系)の「果てない空」と、実に1年で4曲の量産。

 以後も毎年複数のドラマ主題歌を生み、2018年の、松本潤主演『99.9-刑事専門弁護士(シーズン2)』(TBS系)の「Find The Answer」、相葉雅紀主演『僕とシッポと神楽坂』(テレビ朝日系)の「君のうた」、また矢野健太 starring Satoshi Ohno名義でリリースした、大野智主演『歌のおにいさん』(テレビ朝日系/2009年)の主題歌「曇りのち、快晴」まで含め、実に35曲!嵐としてリリースした58枚のシングル収録曲の内、34曲がドラマ主題歌で、そのほとんどがメンバー出演の作品でした。

 ちなみに、同じジャニーズ事務所所属で、やはりメンバー出演ドラマの多かったSMAPのドラマ主題歌はソロ名義も含め、13曲ですから……嵐のケースは事務所やレコード会社の戦略だったのかもしれません。

 以上、皆さんの予想はどこまで当たったでしょうか?

(文中敬称略)


小林 偉(こばやし つよし)Tsuyoshi Kobayashi メディア研究家
メディア研究家、放送作家、日本大学芸術学部講師。東京・両国生まれ。日本大学藝術学部放送学科卒業後、広告代理店、出版社を経て、放送作家に転身(日本脚本家連盟所属)。クイズ番組を振り出しに、スポーツ、紀行、トーク、音楽、ドキュメンタリーなど、様々なジャンルのテレビ/ラジオ/配信番組などの構成に携わる。また、ドラマ研究家としても活動し、2014年にはその熱が高じて初のドラマ原案・脚本構成も手掛ける。