かつて島田紳助に“枕営業”を強要されていたというマリエの衝撃告発により、出川哲朗に火の粉が降りかかっている。
彼女のインスタライブによれば、出川はその場に同席していたにも関わらず、18歳の少女だったマリエが言い寄られている状況を止めないどころか、“煽った”のだそうだ。「いいじゃんいいじゃん、マリエちゃん、紳助さんとやりなよ、面白いよ」(『日刊ゲンダイ』)と紳助をアシストし、舎弟ぶりをみせていたとの記事も。報道合戦が続くなか、出川の事務所はこの件について「お騒がせしているような事実はない」と否定している。
仮にもし出川がその場にいたとして、時の権力者であった紳助を止めることができたかといえば甚だ疑問だ。引退した紳助の代わりに、現在売れっ子でCMも多く抱える出川が集中砲火を受けるというのも、なんだか筋違いな気もするし──。
「抱かれた方がいいのはリアルガチ」
2000年代に「抱かれたくない男」ランキングで殿堂入り、ほかにも「嫌いな男」「砂に埋めたい男」など数々の不名誉な称号を与えられてきた出川が一転、好感度タレントの常連になり、老若男女に愛されるようになったのはここ数年のこと。『イッテQ!』を楽しみにしている子どもたちは、出川が“生理的にムリな男”の代名詞だったことを知る由もないだろう。
そんな当時を彷彿とさせるフレーズ、《いいじゃんいいじゃん、マリエちゃん》。2006年の彼ならいかにも言っていそうな言葉で、脳内再生も余裕である。記憶の底にあった“嫌われ出川”が喚起されよう。思い浮かべることができるぶん、不思議と現実味が出てきてしまう。
しかし、今ネットにアップされているマリエの“告発動画”をみても、その「いいじゃん〜」の箇所がみつからないのだ。これはどういうことだろう。
作為的にその箇所だけが切り取られているのか。あるいは、この騒動が急拡散される過程のなか尾ひれがついたか。一方、ネットを探すとこの疑惑のフレーズ以外にも、明らかに本人が言っていない言葉が創作され、シェアされていることがわかった。たとえばこちら。
《いやいや、マリエちゃん。紳助さんに抱かれた方が良いのはリアルガチだから》
いかにも出川っぽい口調で再現されているが、これに関してはリアルガセだ。騙されてはいけない。事実でない、リアル風な言葉だけがひとり歩きしているといった状態か。この文言は複数の「まとめブログ」に掲載されているが、なかには実際の発言だと信じてしまった人もいるだろう。
玉木マリエパスカルからの“削除依頼”
「やばいよやばいよ」「カンベンしてくださいよぉ〜」「マジですいませんマジで」「ぶっちゃけ」──。
こうしてみると、誰でも一度は使ったことのあるフレーズなのに、言い方ひとつで『出川語』と化してしまうのは凄いことではないだろうか。しかし、この能力がいまの彼にとって足枷となってしまっているのは事実。
現在、視聴できる限りのマリエの告発では、出川がほかの紳助の取り巻きと一緒に、「ヨイショヨイショ」していたと表現されていたが、上述したようなフレーズについては何度見ても確認できなかった。インスタライブ視聴者(約250人ほど)のうちの誰かが証言したのかもしれないが、それも定かではない。拡散力の高い匿名インフルエンサーやマリエを支援する活動家など、さまざまな視点から急速に拡散されゆくうちに、原型がなくなっていった可能性も大きいだろう。
現在、一部インフルエンサーがシェアし続けていたYouToube動画のURLを踏むと、
《この動画は、玉木マリエパスカルから著作権侵害の申し立てがあったため削除されました》
と表示される。この玉木というのはマリエの本名。つまり、本人がアーカイブの削除に奔走していることがわかる。
酒に酔いながらライブ配信していた彼女だが、ここまでの大騒動になるとは本人も思いもしなかっただろう。結局、出川のイメージは毀損されたまま、幕引きを迎えてしまうのだろうか。
とにかく、拡散力の高いSNSと、創作に強い現実味を帯びさせてしまう『出川語』との相性は良すぎることだけはわかった。本人にとっては迷惑極まりないだろうが。「いいじゃん、いいじゃんマリエちゃん」、“言ってそう”なだけで言っていないと信じたい。
〈皿乃まる美・コラムニスト〉