地元の兵庫県の児童合唱団で出会い、2000年に『あ~よかった』でメジャーデビューするや、同年のNHK紅白歌合戦にも出場した女性デュオの『花*花』。約6年の活動休止を経て、2009年に活動を再開した彼女たちが20年間の知られざるエピソードを明かしてくれた。
2000年のメジャーデビュー曲『あ~よかった(setagaya mix)』が50万枚を超えるヒットとなり、一躍人気アーティストの仲間入りを果たした女性デュオの『花*花』。2人の出会いは、地元の兵庫県高砂児童合唱団だった。
おのまきこ(以下おの)「100人ぐらい所属していたので、当時は面識がある程度で。その後、音楽の専門学校の入学式で再会したとき、私はうっすらと記憶があったので声をかけたところ、彼女はまったく記憶がなくて」
こじまいづみ(以下こじま)「私は10歳からこの顔なので、覚えてくれていたみたいです(笑)」
おの「児童合唱団のころの写真を見返したところ、隣で歌っていましたね」
専門学校ではこじまがボーカル、おのがジャズピアノを専攻。こじまが歌うときに、おのが伴奏をしたのがきっかけで一緒に活動をするように。
おの「オリジナルの曲も作るようになったのですが、専門学校の先生が“ライブハウスに出てみたら?”と紹介してくれて。そのときに、たまたま別のアーティストを目的に見に来ていたインディーズ時代のレーベルの方に声をかけられ、CDを発売することになりました」
こじま「自分たちからデモテープを送ったり、オーディションを受けたことはないので、ぬるっと活動をスタートさせた感じですね」
おの「実は“一緒に組もう”という話を1度もせずにここまで来てしまったんです(笑)」
当時は“品プリ”に住んでいた
インディーズで発売した『あ~よかった』が大阪のラジオ局FM802の番組から火がつき、それを聞いたレコード会社からスカウトされ、メジャーデビュー。
おの「もともと友人の結婚式用に作った曲なんです。CDになるとも思っていなかったので、“この曲でいいんですか”って感じで(笑)。予備知識がないままデビューし、言われるがままにお仕事をしていたので、社会科見学のような毎日でした」
こじま「当時から関西在住だったのですが、帰る暇がなくなって、ほぼ品川プリンスホテルに住んでいる状態でしたね。あまりにも毎日泊まっているので、フロントを通るとホテルの方に“おかえりなさい”と言われていました」
おの「もうホテルの部屋に表札を出そうかって話すぐらい泊まっていたよね(笑)」
セカンドシングル『さよなら 大好きな人』は、田村正和主演のドラマ『オヤジぃ。』(TBS系)の主題歌に起用され、53万枚の大ヒットに。同年の『紅白歌合戦』にも出場を果たす。
おの「おばあちゃんなど親戚一同が喜んでくれましたね。でも私たち自身は何も変わらなかったです」
こじま「2人で音楽をするのが楽しいから続けているだけで、紅白に出場するのが目標ではなかったので」
シングル曲のイメージから“癒し系デュオ”と紹介されることも多かった2人。一方、当時のインタビューでは、同時期に女性デュオとして活躍していた『kiroro』を引き合いに、“黒kiroro”と自分たちを称することも。
おの「癒すつもりはまったくなかったですから(笑)。“黒kiroro”と言っていたのも、どこか反発する気持ちがあったのかも」
こじま「ブラックミュージックなどに影響を受けて音楽を始めたこともあり、当時のライブでもそういった曲も演奏していたんです。ライブで私たちの音楽性を知ったファンも多かったと思います」
おの「それを好意的に受け取った方もいたし、シングル曲のイメージが強い人の中には“思っていたのと違う”と離れていった方もいると思います。だからといって、世間のイメージに寄せるつもりはまったくなかったですね」
こじま「そんな器用なタイプではないので。スタッフの方たちも私たちの性格を知っていたから、“癒し系の曲を作って”と言われることはなかったです」
順調に活動を続けていたものの、2003年に当時所属していた事務所の事業終了に合わせて、活動を休止することに。
こじま「当時流行したSARSの影響で、親会社の業績が悪化してしまったんです。それで子会社の音楽事業をやっている余裕がなくなってしまい、事務所を畳むことに。私たちもデビューから慌ただしい日々を送っていて、少しお休みしたいな……と思っていたところだったので、休止することにしました」
おの「事務所がなくなると聞いて、正直肩の荷が下りましたね。身体もしんどいし、気持ち的にも余裕がなくなっていたので……」
こじま「“うちに来ない?”と手をあげてくれた事務所さんもあったのですが、活動休止に関しては2人とも意見が一致しましたね」
10周年で「そろそろやる?」
約6年の活動休止を経て、デビュー10周年となる2009年に活動を再開することに。
おの「休止後はお互い別々で活動していたこともあって、気づいたら6年たっていたという感じでした。それで10周年が近づいてきたときにファンの方から“花*花の活動はしないの?”という声が増えてきたので、“そろそろやる?”みたいな感じで」
こじま「休止期間中、お互いソロで活動していたときに知り合ったアーティストや音楽が、花*花にフィードバックされたのはよかったですね。学生時代から休止前まではお互いが同じ方向を向いて吸収してきたものをアウトプットしてきたけど、離れて活動したことで吸収するものが倍になり、音楽性も広がりました」
おの「その間にいづみさんは母親になったこともあり、年々作るものが豊かになっている気がします。だから私も毎回、新曲が楽しみなんです」
こじま「まきちゃんは休止中にバンドでも活動をしていたこともあり、音が多角的になったなとライブやレコーディングで感じますね。2人でずっと続けていたら、表現できなかった音だなと思います」
昨年はデビュー20周年でコンサートも予定されていたものの、新型コロナウイルスの影響で中止になってしまった。
こじま「またしてもウイルスの影響を受けたか……という感じですが、今回に関しては世界規模のことですからね」
おの「配信ライブに挑戦したり、こういう時代だからこそ挑戦できたこともあったので、前向きに捉えています」
6月2日にはニューアルバム『ゴー・トゥー・アール・フォーティーファイブ』をリリース。こちらを引っさげて、7月には大阪でコンサートも開催予定だ。
おの「こういう時期なので、まだコンサートが開催できるかわからない部分もありますが、生でお客さんにお会いしたいですね」
こじま「20周年ライブは全国のファンの方に会いに行く、お礼参り的なツアーにする予定だったもんね。お客さんに会えるコンサートは楽しいぶん、終わると毎回寂しいんです。それで曲を作って、届けたいからCDを制作。それを引っさげてツアーをする……ということを繰り返していたら、気づけば20年以上続けてこられたという感じですね」
ファンがいる限りは音楽を続けたい
20年の活動を振り返り、こんなメッセージを。
おの「デビューしてから数年は短い期間でいろんなお仕事や貴重な経験をさせてもらえて、本当に感謝しかないですね。今、同じスケジュールをこなせと言われても体力的に無理ですから(笑)」
こじま「長い期間かけてようやく花を咲かすことが出来たと感じています。待ってくださるファンの方がいる限りは、細々でもいいので音楽を続けていきたいですね」
おの「解散するのは、どっちかが死ぬときかな(笑)」
こじま「その時々で感じたことを歌にしているので、同世代なら“これは私のことかも”と共感してもらえる曲があると思います」
おの「今後、更年期の気持ちを歌った曲を作るかもしれないし(笑)。いい感じで年齢を重ねて、みなさんの気持ちにフィットした曲をこれからもお届けできたらいいですね」