昨年1月、初めて撮影された新型コロナウイルス。現在では複数の「変異株」も……。都市部では病床数が不足し、感染しても自宅療養せざるをえない現実に直面している。感染していない今のうちに、準備しておくことで最悪の事態は避けられる。自宅に備えておくべきモノ・コトは何か──。
「連休は夫の実家の田植えを手伝いに帰省を考えていましたが取りやめました」
そう話すのは東京都に住む40代前半の会社員の女性。家族は40代後半の夫と、この春、中学校に入学したばかりのひとり息子だ。
「義両親は高齢ですし、私たちからうつしてしまったらと考えると怖いので……」
女性は家族と自宅にこもり、動画配信サイトの映画三昧で連休を過ごすことに。
新型コロナウイルス(以下新型コロナ)の暴風が列島に吹き荒れ続ける。感染者数は全国的に増え続け、第4波が押し寄せてきている。
変異株の脅威
「年末にも東京都で1日1000人ほどの感染が確認されていましたが、実は現在の状況は年末より危険なんです」
感染症の専門家、岡田晴恵さんはそう警鐘を鳴らす。
理由のひとつに挙げられるのが「変異株」の存在だ。
「東京都内の感染者のうち約90%が新型コロナの変異ウイルスによるものです。特にイギリス型のウイルスは感染力も高く、増え続けています」(全国紙社会部記者)
専門家らは今後、変異ウイルス感染者が1日につき、120%増のスピードで増え続ける可能性を懸念する。
「対策が緩いままだと170%増となる危険もあります。2週間後には東京都内だけで変異ウイルスの感染者が1日2000人。入院患者は6000人を超えるのでは、と危惧している専門家もいます」(前出の社会部記者)
すでに大阪府では確保していた病床数をはるかに超えた1万5000人以上が入院。ホテル療養もできない状況だ。受け入れ先が見つからず、救急車の中で47時間以上も待機させられた人もいたという。
新型コロナは職場や介護施設、学校などから各家庭に持ち込まれる。高齢者以上に増えているのが働き盛りの世代や若者たちの感染だ。
「変異ウイルスは若者でも重症化するおそれがあります。基礎疾患のない50代でも亡くなった人や、20代30代でも人工呼吸器になった人がいます。子どもの感染も目立つ。今は全世代に要注意の病気に変化した。『変異株』はこれまでと別のウイルスと考えたほうがいい」(岡田さん)
必要な準備3箇条
患者が急増して病床が足りず、発症しても入院はできず、自宅療養が必要となる可能性を強調する。万が一を考えて元気なうちに備えるべき。
まず、記事の最後にある『絶対にそろえたい物リスト』参考に、家族で必要なものを話し合い準備すること。
食料品や日用品は感染時だけでなく、不要不急の外出をしないためにも役に立つ。
日持ちする根菜類やフリーズドライや冷凍の野菜を準備、肉類や魚も小分けにして冷凍しておこう。冷凍庫が大きければ業務用の食材をまとめて購入しておくのもありだ。
次に家族の中で看病する人を1人決めておくこと。必ずメガネ、マスク、手袋、防護服代わりのビニールのカッパを用意。これらを着用し、看病にあたることが鉄則だ。
看病をせず、症状が出ていない家族もウイルスを広げる可能性があるので外出は控える。
3つ目は看病について。
水分補給はこまめにさせること。体温、病状、顔色、食欲などを日付、時間とともにメモし、状態を記録しておく。小さな変化も見逃さないように気をつけて。
さらには症状に合わせた市販薬を飲み、安静にすることで多少の症状改善が期待できる。
薬局にも相談を……
どれを飲んだらいいのかは薬局で薬剤師に相談を。ただし、市販薬はあくまでも代用案。原則は政府や厚労省などの指針に従うように。
そしてかかりつけ医に、万が一感染したときのことを相談しておくこと。連休中の対応についても聞いておくことが大事。
「今は変異ウイルスに感染しないことが身を守る。気候的にもよい季節、積み重なってきたストレスから外出したくなる気持ちもわかります。ここは堪えどき」
そう岡田さんは訴える。大阪府や東京都では、連休に合わせて緊急事態宣言が出された。拡大を防ぐには今がチャンス。命を守るために、ひとりひとりの行動がカギとなる。
体調の変化には敏感に!
●「顔色が悪い」状態って?
(1)顔色、手足、唇、爪などの色が青黒い
→呼吸不全、心臓の異常など。
酸素不足で唇が青紫色に変わる場合がある。
(2)顔色や全身の皮膚が白い。皮膚が冷たくなっている
→心臓のポンプ機能が低下している可能性がある。
(3)顔色や全身の皮膚の色が赤みを帯びている
→高血圧、熱中症など。
新型コロナの発熱で赤みを帯びることもある。
●「ショック」症状って?
血圧が低下し、血液が全身に行きわたらず生命の危険がある状態のこと。
・顔色が青白い
・呼吸が浅くて速い
・脈拍が弱くて速い
・皮膚が冷たく湿っている
・ぐったりしている
●正常値96~99%
●軽症96%以下
●中等症1(呼吸不全なし)96~93%
●中等症2(呼吸不全あり)93%以下
※重症度を分ける基準は主に「酸素飽和度」。酸素飽和度が96%を下回らない限りはいくら高熱があったとしても中等症・重症に分類されるわけではない。
絶対にそろえたい物リスト
<日用品>*のものは入院やホテル療養時にも役に立つ
□ティッシュペーパーやトイレットペーパー*
□せっけん、ハンドソープ、洗濯洗剤など
□アルコール除菌スプレーや除菌シート*
□塩素系漂白剤
□使い捨てマスク(1人につき1日2枚は消費)
□使い捨てビニール手袋(1日4枚は消費)
□ビニールのレインコート
□各種サイズのビニール袋(ゴミ袋サイズ、コンビニ袋サイズなど)
□ゴーグル(もしくはメガネ)
<食料品(最低でも2週間分)>
□主食(お米やおかゆ、シリアルなどの食べやすいもの)
□冷凍やフリーズドライ、根菜類など日持ちする野菜類
□菓子類(特にチョコレートやビスケットなど)*
□ゼリー状栄養補助食品*
□レトルト食品・インスタント食品・缶詰(果物など)*
□冷凍食品(冷凍の肉や電子レンジで調理できるうどんなどもあると便利)
□経口補水液
□スポーツ飲料(粉末状のもの含め)
<薬剤など>
□総合風邪薬*
□解熱剤*
□胃薬
□水まくら・冷却ジェルシート*
□うがい薬
□常備薬
<その他>
□体温計(予備含め2本あるといい)*
□飲料水
□多少の現金*
□パルスオキシメーター
□下着やパジャマ*
□タオル(バスタオル・フェイスタオル)*
□シーツ
□かかりつけ医の連絡先や緊急連絡先など記したメモ*
<入院時にすぐに持って出られるようにひとつの袋にまとめる>
□保険証と身分証
□携帯電話とその充電器
□コップ
□暑さ・寒さを調整できる衣類(ひざかけなど)
□基礎化粧品(化粧水やリップ)・爪切り
□メガネ
□補聴器(替えの電池も)
□スリッパ
□ピンチハンガー
※注意……自宅療養で必要な品物や量は家族構成で変わる。これらのほかに自分と家族には何が必要なのかを話し合い、元気なうちに用意すること。