「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
2016ユーキャン新語・流行語大賞で「保育園落ちた日本死ね」の受賞者として笑顔であいさつする山尾志桜里氏(当時は民進党)

第56回 山尾志桜里議員

 多くの心理学者が指摘しているとおり、人が人を判断するとき、外見や学歴は大きな判断材料となりえます。小泉進次郎環境大臣や吉村洋文大阪府知事など、本来なら実行力で勝負すべき政治家がイケメンとして話題になるのも、大衆が「中身より外見」を求めてしまうことの表れかもしれません。有名企業に有名大学を卒業した学生が多く入るのも「有名大学の人は優秀なはず」というバイアスが働いているせいもあるでしょう。

 しかし、その人の人となりのようなものを見るときに欠かせないのが“カネ払い”ではないでしょうか。なぜなら、人はウソをつくけれど、カネはウソをつかないから。私ならどんなに弁舌さわやかで見た目がよくても、税金や借金など払うべきものを払わない人は信用しません。

 そういう意味で言うのなら、国民民主党の山尾志桜里議員はかなりヤバい人と言えるのではないでしょうか。

お金に対するセコさは
今に始まったことではない

 山尾議員が、マッサージや食事、そして「ある男性」の家に向かう際、「議員パス」を使っていたことを『週刊文春』が報じています。「議員パス」は選挙区内の移動や公務出張するときに新幹線、特急、指定を含むJR全路線を無料で利用できる特殊乗車券で、原資はもちろん税金です。

 交通費といっても、移動距離から考えるとせいぜい数百円。どんだけセコいんでしょうか。山尾議員はツイッターで《公私の別を大切にしている自分として、その区別が曖昧にみえる行動をとるのはよくないと深く反省しています。今後このようなことがないように十分に気をつけてまいります。本当に申し訳ありませんでした》と謝罪しています。

「不正利用はしていないよ、でもそう見えちゃったならゴメンネ☆」と言っているように聞こえますが、私に言わせると山尾議員の「このようなこと」は前にもありましたし、「公私の別」を大切にしているとは到底思えません。

 実は、彼女のお金に対するこすっからい話は今に始まったことではありません。2016年、民進党時代に事務所の経費として、地球5周分にあたるガソリン代を計上していたとして問題になりました。山尾議員は「元公設秘書が2011〜12年に165件、計217万円の不正利用を認めた」と説明していますが、不正で手に入れたカネの使途については「元秘書側に確認できなかったが、総支部や後援会などの政治活動に使われた事実はない」と説明しています。なぜ確認できなかったのに、断言できるのか不思議です。この他にも、あまり話題にはなりませんでしたが、2012年の収支報告書では2か月で約18万円ものコーヒー代が計上されています。

 一般的に人がカネにセコくなる理由を大きく2つにわけるとすると、1つめは「本当にお金がない」ことがあげられるでしょう。背に腹は代えられませんから、お金がないと、なりふり構っていられません。

 2つめは「自分大好き」な人が考えられます。企業においても昇進するたびに権限は増えていきます。それは役職に対して与えられる権利なわけですが、それを「自分の価値だ」と勘違……いえ、解釈する人は「これくらい、いいだろう。自分にはそれだけの価値があるはずだし、その分貢献している」と際限なく求めてしまうのではないでしょうか。

 国会議員の山尾議員が金欠ということは、考えにくい。となると、「自分大好き」タイプだと言えるのではないでしょうか。カネそのものが欲しいというより、「もっと欲しい、なんでも欲しい」という強い自己愛もしくは上昇志向のなせる業なのではないでしょうか。

 仮に山尾議員が自己愛が強くても、それは個人の資質ですから、他人がとやかく言う筋合いはありません。しかし、得てして自己愛が強すぎる人の欲しがる欲望というのは、とどまることを知らず、だいたいヤバいことをやらかします。しかも、山尾議員の場合、国会議員として歳費を与えられており、その原資は税金です。こう考えると、見過ごせない点がいくつもあります。

山尾議員と倉持氏はズブズブの関係

 2017年に『週刊文春』は、先の「ある男性」と山尾議員の不倫疑惑を報じています。当時、民進党だった山尾議員は幹事長昇進目前に、都内の高級ホテルで9歳年下の倉持麟太郎弁護士と密会。当時は二人とも既婚者でしたから、ダブル不倫です。山尾議員は男女関係を否定、ホテルは「一人で宿泊した」と釈明していますが、『文春』はそう来るだろうと思っていたとばかりに、翌週第2弾を投下。打ち合わせしていた部屋が、部屋のほとんどをダブルベッドが占めていて、とても事務作業ができるような空間でなかったこと、二人が翌朝5時までホテルに滞在していたと報じています。

 不倫も問題ではありますが、私がもっと気になるのは、このホテル代はどこから出ているかということなのです。「打ち合わせだ」と山尾議員が言うからには、経費として計上している可能性は高いのではないでしょうか。しかし、『文春』の報道から考えるのなら、二人が男女の関係でないというほうが無理な話でしょう。税金を使って、高級ホテルで不倫ってアリなんでしょうか? いつもうやむやになってしまうことが気になります。

 男女関係を否定した山尾議員ですが、その後、倉持氏を自身の政策顧問として起用することを発表しました。2019年の『週刊文春』では、国会に無届で二人が海外旅行に行ったことが報じられていますし、今回の「議員パス」不正使用の際も、山尾議員が倉持氏の自宅を訪れています。山尾、倉持両氏はすでに離婚しており、不倫には当たりませんが、カネの絡んだズブズブの関係で「公私の別を大事にしている」とは思えません。

 しかし、山尾議員が必死に倉持氏を囲い込む女心もわからないでもない。そうでもしないと、倉持氏をつなぎとめるのは難しそうだからです。

 2017年二人の不倫報道が出たころ、『週刊文春』は倉持氏の過去の婚約不履行についても報じています。倉持氏が弁護士事務所を開設するまで結婚を前提に同棲していた女性がいたそうですが、その女性に突然別れを切り出し、倉持氏はキャビンアテンダントの女性と結婚してしまいます。

 弁護士になるまではフツウの女性に支えてもらい、弁護士になったらキャビンアテンダントという“美ブランド”の女性に乗り換える。こういう「自分にとってどちらがプラスか」を常に考えているかのような男性と一緒にいたいのなら、何か“ご褒美”を与えないといけないでしょう。野心家で移り気な若いオトコに差し出したのが政策顧問という地位と肩書きだったのではないでしょうか。

政治家の不正を
放置・黙認したままでいいのか

 ギブ&テイクの成り立った関係のような感じもしますが、これでうまくいくのかというと、そうも思わないのです。自分の利に敏感な人は常に「もっと、もっと」ですから、「これで十分だ」ということはないと思います。

『週刊文春』によると、現在、倉持氏は夏目三久似の女性と親しくしているそうです。倉持氏は独身ですから誰と交際しようと自由ですが、もし、男女の関係が続いているなら、山尾議員に対するひどい裏切りとみることもできるでしょう。しかし、話はいたってシンプルで、元カノや前妻にひどいことをする人は、今の彼女にも同じことをするということではないでしょうか。加えて、山尾議員と倉持氏は「もっと欲しがる」「自分のことしか考えない」という意味で似たもの同士であり、お似合いのヤバカップルと言えると思います。

 同誌は山尾議員の「議員パス」不正利用に加えて、倉持氏の前妻が昨年自殺したことも報じています。倉持氏と離婚する際、前妻は生活と健康上の不安から長男の親権を手放さざるをえず、離婚後はうつ病もわずらっていたそうです。不倫は誰かが傷つくことは避けられませんが、最悪の結末を迎えてしまいました。が、おそらく山尾議員も倉持氏も何の痛痒も感じないタイプだと思います。

 普通、芸能人は不倫がバレると会見を開きます。イメージ商売ですし、スポンサー対策も兼ねているのだと思いますが、本当に問題にすべきは政治家の不倫ではないでしょうか。

 国からお金をもらっていて、国のお金を簡単に使うことができる。仮に不正を働いたとしても発覚しなければ、その原資を納めている納税者には気づかれない。そんな立場の人が不倫をするというのは、大げさに言うと、納税者への侮辱もしくは国の私物化といえるのではないでしょうか。

 日本には姦通罪がありませんから、不倫に対する刑事罰はありません。倉持氏の前妻の自殺も、山尾議員がほう助したわけではありませんから、関係ないと言われたらそれまででしょう。しかし、法に触れないなら、何をやっても許されるのか。テレビやネットでは芸能人の不倫のニュースは長引きますが、政治家のそれは2〜3日で終わってしまいます。おそらく、今回もうやむやになってしまうのでしょう。

 政治家のヤバいことを放置して黙認する国民はヤバくないのか。そろそろ、真剣に考えたほうがいい時期だと思います。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」