コロナ禍で、スーパーの売り上げは伸びているが、滞在時間は減っている。急ぐあまりに、簡単にスーパーのテクニックにひっかかってムダな出費が増加しているかも。本当に得か損かを見破って、賢い消費を!
安く買っても、使い切れなかったらお金のムダ
日々「なんとなく」行きつけのスーパーで買い物していませんか?
「食品という面では、コンビニ、スーパー、ドラッグストアが競争していますが、使い分けができるといいですね」
教えてくれるのは流通ジャーナリストの西川立一さん。
「コンビニは単身者や高齢者が使い切るのにちょうどいいサイズの商品が豊富。お惣菜もすごく力を入れてきており、おいしくなっています。ドラッグストアも、メインで買ってほしいのは薬ですが、集客のためお菓子やお酒、加工食品を安く売っていて人気です」
もちろんスーパーも黙ってはいない。
「スーパーも独自の手を打って逆襲しています。特に、PB(プライベートブランド)商品は要注目。かつては“安かろう悪かろう”の面もありましたが、最近は一流食品メーカーと共同開発した商品を増やし、品質も価格のお得度もなかなかのもの。生鮮食品でも、トップバリュのタスマニアビーフなどPB商品が登場し、品ぞろえや、価格でもがんばっていますよ」
お得な商品を新聞の折り込みチラシで探し、日々目玉商品を求めてお店をはしご……。
「そういう買い方は時代遅れになってきています」
と言うのは、節約アドバイザーの和田由貴さん。
「安く買っても、使い切れなかったらお金の無駄。食材をきちんと使い切る、それが食費節約の基本です」
これには西川さんも同意見。
「スーパー側も消費者の購買意欲を高めるよう、心理をうまくついてきます。1回あたりの購入金額を上げるため、商品を手に取りたくなるよう陳列に工夫をこらしたり、来店回数を増やすためにセールを実施したりしています。流されて買いすぎないように、その工夫を見抜いて、うまく利用しましょう」
西川さんのおすすめは、「数日~1週間分の献立をまとめて考えて、必要な食材だけをまとめ買い」すること。
一方、和田さんは、「あらかじめ予算を決めておき、スーパーで安い食材を見つけて数日分の献立をその場で組み立てる」方法をすすめる。自分に合った方法で、うまくスーパーを使いこなして!
「まずは買い物の前に冷蔵庫やパントリーをのぞいて残っている食材を必ず確認することを忘れずに。それだけでもムダ買いは減ります」(和田さん)
◆進化するチラシアプリ
新聞の定期購読をやめて、折り込みチラシが手に入らない……という人におすすめなのが無料のチラシアプリ。『トクバイ』『Shufoo!』など、スマホで近くのお店のチラシ情報をチェックすることができる。
・『トクバイ』
掲載店舗数が5万店以上。近くのスーパーやドラッグストアの特売情報がチェックできる。安売り食材を使ったレシピも!
●注目すべき! スーパーの仕掛け12(パート1)●
たくさん買ってもらうため、スーパーではさまざまな工夫をこらしている。お店の仕掛けを上手に利用して、お得に買い物をしちゃおう!
【仕掛け1】単価が安く、必ず買う野菜で誘い込む!
「野菜はどんなメニューにも使われますから、店内でいちばん目立つ入り口に野菜コーナーを置いて、お客さんを呼び込むわけです」(西川さん)。客をひきつけるには、新鮮な野菜を安く売ることが大事。野菜売り場がぱっとしない店は全体的に勢いがない。「用途も考えずに小松菜やもやしをカゴに入れてしまう“買い癖”がありませんか? それがムダの原因です」(和田さん)
◯店側の心のうち
単価が安い野菜で買い物に勢いを! さぁ、ジャンジャンお買い物をしてください!
【仕掛け2】目をひくPOPでお得感の演出
黄色い紙に赤字でくっきり値段が書かれていると、「安売り品だわ♪」と手にとってしまう。「でも、実はそれほど安くなっていないことも……。『本日限り』など期間を短く区切ったPOPを狙うと、お得度が高くなります」(和田さん)
【仕掛け3】“関連販売”で、ついで買いのスイッチオン
肉売り場に焼き肉のタレや調味料、ワイン。野菜売り場にドレッシングがあると、「これ買っておこう」とつい、カゴへ。「食材に関連したものを置いて購買意欲をかき立てる方法です」(西川さん)。ただ、ここに置いてある商品が安いわけではない。足を延ばしてドレッシング売り場に行けばもっと安いものがあることも!
◯店側の心のうち
あえもののタレや惣菜キットって、お客さんにとっては割高ですよね。でも、使う材料と一緒に置いておくと、売れるんですよね。
【仕掛け4】一見お得な2~3個のセット売り
「2個まとめると割引」「大容量パックの肉はグラム単価が安い」など、まとめ売りは魅力的。「単価を下げても数を多く売ることで、売り上げを増やしたい店側の思惑があります。肉や魚は冷凍できますが、特に野菜は使い切れる数、サイズを選んで」(西川さん)
【仕掛け5】旬のアイテムを買わせる陳列
「お得な商品は、目立つ場所、手に取りやすい場所にあります。野菜も壁際の棚よりも島のようになっている場所、通称『シマチン』にあるものがお得」(和田さん)。「売り場中央の加工品の棚も、『エンド』と呼ばれる棚の両端部分のワゴンにお得品があります」(西川さん)。ただ、お得だけではなくスーパーが買ってほしいものも陳列されていることをお忘れなく!
【仕掛け6】曜日セールで本当に安いのは週末じゃない!?
働いている人がまとめ買いする土日や週半ばの水木は購買意欲を高めるため、セールをする店が多いのはご存じのとおり。「実は、セールのない火曜日も穴場。集客のために安く売っているコーナーがあったりします。1度チェックしてみては?」(西川さん)
◯店側の心のうち
こちらは毎日仕入れているので、毎日売れてほしい! 今はコロナで来店時間も分散してほしいので日々集客の仕掛けはしてますよ!
【仕掛け7】産地直送販売で地元感UP
野菜売り場などでよく見るのが、農家直送売り場。「収穫してその日のうちに農家さんが店に持ってきて並べるものですね。新鮮でおいしいし、生産者の顔が見えて安心だと大好評です。ただ、安いとは限らないですね」(西川さん)
●注目すべき! スーパーの仕掛け12(パート2)●
【仕掛け8】タイムセールや雨の日セールで売れ残り回避
雨の日や強風の日は、買い物に行きたくなくなるもの。「そういうときこそ安く買い物をするチャンス。集客のためにセールをする店が多いですからね。平時も、客の少ない13時~16時はタイムセールをやるところが多いですね」(西川さん)
【仕掛け9】見切り品を並べて売り切る
見切り品狙いで夕方遅くにスーパーへ……。
「肉や惣菜を狙うのならそれでOK。でも、野菜や日配品の見切り品を狙うなら、午前など早い時間がおすすめ。これらは、すいている時間に品出しをしつつ、入れ替えで見切り品をワゴンに並べるからです」(和田さん)
【仕掛け10】加工品セール期間は棚卸し整理
調味料や缶詰などの加工品は各メーカーの新商品が出る前の2月と8月に棚卸しのためセールをすることが。「“調味料10%割引”など、カテゴリーごと安くなるセールや一律〇%オフのお客様感謝デーなども狙い目です」(西川さん)
【仕掛け11】調理サービスでファン獲得
鮮魚コーナーの「調理します」という貼り紙。お店の人に頼むの、ためらっちゃう……。「魚を買ってほしいからやっているサービスです。遠慮せず頼みましょう。わたを取るだけじゃなく、三枚おろしなどもしてくれます」(西川さん)。安い魚をおろしてもらったほうが、調理ずみパックを買うより安いことも!
【仕掛け12】お客様感謝デーで買いだめさせる
20日、30日など決まった日に「お客様感謝デー」などとして、「ポイント付与率をアップ」や「一律5%オフ」を実施する店は多い。この日は店内が大混雑するわけだけど……。
「意外と目玉商品は少ないです。普段値下がりしにくいPB商品などだけ買って、あとは安売りのときを待ちましょう」(和田さん)
◆和田流ムダ買い撃退スーパーのまわり方
その日の予算を決めてから出発。「米などの大物を除いた1日あたりの予算を決めておくといいですね」。出かける前に特売情報をチェックして献立を立てておくのもいいけれど、チラシ以外の安売り品があれば、臨機応変に取り入れて。
(1)まずは何も買わず1周すべし
チラシ情報も押さえたうえで、まずは店内を1周。野菜や魚は仕入れの関係でチラシ以外の安売り品が出ることがある。それらをふまえて献立を組み替えて。
(2)肉、魚売り場へ
献立の要となる肉や魚から決める。「残りの金額でほかの食材を買うようにすると、予算を守りやすいですよ」。献立が確定することで、野菜などの「なんとなく」買いもなくなる。
(3)日配品売り場へ
パン、牛乳、ヨーグルト、豆腐や納豆などの日配品。「これらは1日にどのくらい食べるか決まっていますから、まとめ買いする日数分だけ購入しましょう」
(4)野菜売り場へ
「野菜は、肉や魚、日配品を確保したあと、残った金額で買うようにします」。旬の野菜は栄養価が高くおいしいうえに、安売りになっていることが多いので、上手に活用して。
◆プロが選ぶここスゴイ! スーパー
・和田由貴さん
オーケーストアが大好きです。近隣の価格をリサーチして、確実に安い価格で出してます。本日の特売みたいなチラシを出すのではなく、いつも安い。だから安心して買えます。
・西川立一さん
西友やドン・キホーテは、他店の価格を調べて地域でいちばん安い値段で売る方針です。特に西友は他店のチラシを持って行けば、それと同じ価格で売ってくれますよ。
節約アドバイザー。消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザーなどの資格を持ち、幅広く暮らしや家事についてアドバイス。耐える節約ではなく快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱
教えてくれたのは……西川立一さん
流通ジャーナリスト/マーケティングプランナー、株式会社ラディック 代表取締役。スーパーなど流通・サービス業界全般にわたる現状分析、未来予測、マーケティングに精通している