緊急事態宣言に伴い、路上飲酒の問題が話題に上るなど、改めて公共の場でのマナーを考える機会も増えている。そこで女性500人に「不快だと思う行為」についてのアンケートをとったところ、世の中に多数存在する「オジサン」の問題行動に対して、リアルな悲鳴が聞こえてきた。今回まず取り上げるのは、アンケートで不快な行動のトップに挙がった「タバコの煙・タン・ツバ」を吐きまくる3Tオジサンの生態についてだ。
「大きな音で思いっきり、カァーッ、ペッ! とタンを吐き捨てるオジサンが不快です」(37歳・女性・専業主婦)
「ジョギングをしている初老の男性とすれ違いざまに、タンを吐かれた。マスクもしていなかったので、飛沫で感染するのでは……と怖かったし、なにも他人とすれ違うときに吐かなくても」(58歳・女性・専業主婦)
こういった意見は数多く寄せられ、全体の65%の人が不快だと回答したのが、タンやツバを吐く行為。コロナ禍で飛沫に対する危機意識も高まるなかで、なおさら嫌悪感を覚える人が増えている。さらにほぼ同数で63%の人が激しい怒りをあらわにしたのが、歩きタバコだった。
「オッサンが吐く煙を吸いたくない」(44歳・女性・専業主婦)
「まさに最近、歩きタバコの老人を見かけました。杖をついて歩いているのに、もう片方の手にはタバコ。そこまでして吸いたいのかな? って感じです」(60歳・女性・専業主婦)
令和版、困ったオジサン図鑑
●Komatta-OJISAN 001
歩きタバコオジサン
生態
寒くもない日に「白い息」を吐いている人がいたら、
歩きタバコオジサンかも。公道でもガマンできず、
紫煙をまき散らしているよ。
●Komatta-OJISAN 002
タン、つば吐きオジサン
生態
突然「カァーッ! ! 」っという音がしたら、
それはタン、つば吐きオジサンの攻撃の合図。
たまに失敗して、口元から糸を垂らしているよ。
欲求を抑えられないオジサンたち
2020年4月からは受動喫煙を防ぐ対策が全面施行されているなか、それでも喫煙欲を抑えられないオジサンに集まる視線は、当然ながら冷たい。では、なぜオジサンたちは迷惑行為を繰り返すのか。
「こうした問題については『社会的迷惑行為』というテーマで多くの研究がなされています」と教えてくれたのは、公認心理師の塚越友子さん。
「迷惑行為をする人は、他者の感情に思いが馳せられない、共感力や想像力が足りないことが原因だと思われるかもしれませんが、実はそうではないんです。社会的迷惑行為については、ふたつの自己制御能力というものが関わっており、ひとつは自分の感情や行動を抑制する能力、もうひとつは自分の意見を主張する自己主張という能力です」(塚越さん、以下同)
たしかにどちらも社会生活で必要な能力だが、迷惑行為とはどうつながるのだろう。
「前者の能力が高い人は迷惑行為を止められ、後者の能力が高い人は迷惑行為を行いやすい傾向があります。社会のなかでも積極的に発言する立場にあり、自己主張能力を伸ばしてきたのがいわゆるオジサンだとすると、オジサンの迷惑行為が目立ってしまう理由はこのへんにあるかもしれませんね」
「仕方ないじゃん!」仰天の言い訳
男性300人にとった別のアンケートでは、40%が歩きタバコや路上喫煙を、29%がタンやツバを吐く行為を自覚してやっていることが判明した。周囲への配慮に欠いた行動について、当事者のオジサンたちの反論の声を聞いてみると……。
「特に理由はありませんが、いつものクセで無意識のうちにタンやツバを吐いてしまう」(50歳・男性・自由業)
「人通りの極めて少ないときや場所を選んで、携帯灰皿を片手に持って吸っている。加熱式タバコだから紙巻きタバコよりマシだと思う、極力気を使ってるつもりですが……」(54歳・男性・会社員)
「そもそもタバコを吸える場所自体が少ないから仕方ない」(45歳・男性・会社員)
かなり自己中心的
もちろん「自分はやらない」といった声も多かったものの、当事者たちによる言い訳は、かなり自己中心的!
「これらの意見には認知的不協和という理論が当てはまります。何らかの欲望と抑制のなかで矛盾が起こったときに、それっぽい言い訳で正当化し、望ましくない行動に舵を切ってしまうのは典型的なケース。
自分を優先して他人に不快感を与えるのは、社会的迷惑行為の定義そのもの」
とはいえ、女性たちの怒りの声はまだまだ収まらない。実際、身のまわりに被害が出ているのだ。
「犬の散歩をしていたら、オジサンが吐いたタンに愛犬が近づいてなめてしまい、腹が立った」(53歳・女性・パート)
「子どもが小さいころ、歩きタバコの男性とすれ違った。直前でタバコに気づいて避けたが、タバコの火がちょうど子どもの目の高さで避けなかったらと思うとゾッとした」(49歳・女性・専業主婦)
こういった迷惑行為に解決策はあるのだろうか。
「迷惑行為はオジサンに限った行動ではないのは大前提なのですが、社会的迷惑行為を解決するのは難しいんです。実は注意しても変わらないという研究結果もあるため、いまは静観しつつ、仕方ないではすまない機運を高めることも大事ですね」
困ったオジサンたちとの戦いは、まだまだ続きそうだ。
路上の困ったオジサン遭遇録、こんな珍種も!
●誰か止めて! チャリンコ暴走オジサン
「チリンチリンをやたら鳴らしてくる」(36歳・女性・専業主婦)、「自転車のオジサンを避けたら、同じ方向によけてきて罵声を浴びせられた」(50歳・女性・パート)と、自転車マナーにも苦情が。
●ブッサイク! すれ違いざまに点数つけられた
「派手な格好をしているといちゃもんをつけてくる」(30歳・女性・会社員)、「すれ違いざまに“ブッサイクやなぁ”と言われた」(58歳・女性・建設業経営)など、街中で人の外見を採点する無礼者も!
●何人たりともここは通さぬ! 弁慶オジサン
「歩道ですれ違うとき、端によけようとせず、真ん中を堂々と歩き幅をとる。自分がよけるという概念がない」(46歳・女性・会社員)という意見も多く、わが物顔で闊歩するオジサンは日本中に生息。
お話を伺ったのは……
塚越友子さん●公認心理師、臨床心理士、産業カウンセラー。2008年に東京中央カウンセリングを開業。個人カウンセリングを行うほか、自殺予防や家族心理学、産業心理学、コミュニケーション論などの知見を生かし、メディアなどでも多数活躍。
(取材・文/吉信 武)