清水章吾がチワワのくぅ~ちゃんと共演したアイフルのCMが話題になったのは2002年。渋いバイプレーヤーが“カワイイおじさん”として超有名人に。
「最初はお断りしたんです。犬や子役が共演相手だと、どんなにいい演技をしても“食われて”しまいますからね。どうしてもと言われて、3か月だけということで受けました。本契約ではなく、ギャラは1回80万円。人気が出て契約が延長されても金額が上がることはありませんでしたよ」
くぅ~ちゃんはオーディションで300匹の中から選ばれたという。
「最終審査は7匹にまで絞られていました。きれいすぎる犬は落とされたんです。CMの監督は“別れ際の男と女”のようにしたかったので、瞳がウルウルのくぅ~ちゃんが選ばれたんですね。実は私にあまりなついてくれなくて、海辺で一緒に走るシーンは私から逃げ回っていたんです。キスする場面では、私の顔にバターを塗って撮影したんですよ(笑)。
そういえば“くぅ~ちゃん死亡説”が流れたこともありましたね。3年たったころ急になついてきたんですが、くぅ~ちゃんの子どもにコッソリ代えられていたのかもしれません」
最初のCMが話題となり、シリーズ化されて4年も続く大ヒットに。
「チワワの人気が上がり、価格が高騰。相場10万円だったのが40万円になり、世田谷のペットショップでは100万円に。チワワを買いに行ったら、“清水さんのおかげで儲けさせてもらったから無料でいい”って言われましたよ(笑)。CMに出演して有名になりましたが、マイナス面もありました。例えば、フチなし眼鏡をかける役はアイフルのイメージになるからNG。アコムや武富士などほかの消費者金融のスポンサー番組には出られず、サスペンスものは出演が減りましたね」
「ナオミよ」を撮りにN.Yへ
エステティックTBCのCMでは、スーパーモデルのナオミ・キャンベルと共演した。
「娘がエステで変身して“ナオミよ”って出てくるやつです。ナオミさんの自宅近くならOKという条件だったので、ニューヨークまで撮影に行きました。このCMはちゃんとした契約だったのでそれなりのギャラだったはずですが、別れた奥さんが社長をしていた会社に入金されたので額は知りません。私は3万円のお小遣いをもらっただけでした」
清水は40年連れ添った妻と2019年に離婚。『週刊新潮』にDV疑惑を報じられると、睡眠薬を飲んで自殺を図った。
「自殺未遂は前にもあったんです。2010年に『相棒』に出演したとき、本番でセリフが出てこない。水谷豊さんが“清水さんは長いセリフができる人なのにおかしいな”と言ってくれて、救急車を呼んだら脳梗塞でした。生命保険のCMを降ろされ、美輪明宏さんに誘われていた舞台も降板。ストレスでうつ状態になり、睡眠薬を飲んでしまいました」
そのころは埼玉県本庄市に住んでおり、現場までは3時間かけて車を運転していた。
「妻と連れ子にぜんそくの持病があって引っ越したんです。帰り道は疲れきって居眠り運転をしそうになり、帰っても2時間ほどの睡眠でまた仕事へ。無理がたたって脳梗塞になってしまったんですね。家族からは“働け働け”とプレッシャーがあり、心身ともにドン底で、1度目の自殺未遂でした」
焦る気持ちとは裏腹に、仕事の幅は狭くなっていく。
「サスペンスのチョイ役でもいいからってお願いすると“清水さんは目立ちすぎて犯人だとすぐバレて使えない”と断られる。そういうことが重なって再び追い込まれ、2度目の自殺未遂をしてしまいました」
2019年は3度目の自殺未遂だったことになる。睡眠薬を飲んで意識が薄れる中、清水の目に映ったのは愛犬の姿だった。アイフルのCMが終了してから、清水と犬との関係は深まっていたのだ。
「最多で犬を13匹、猫を3匹飼っていました。もともと犬が大好きだったんですよ。私は日大鶴ヶ丘高校から学部付属の農獣医学部に進みました。でも、獣医になるための研修で、犬を殺さなければいけないのがつらくて大学を中退したんです」
「ポエチは死ぬな!」
チワワと共演したCMでブレイクしたのも、犬が好きだったことが招き寄せた運命だったのかもしれない。
「特に可愛がっていたのがポメラニアンのポエムちゃん。“ポエチ”って呼んでいます。ペットショップで売れ残っていたようで、相場が15万円ほどなのに『特売』で5万円でした。買うことを告げると、店員さんがエンエン泣きだしたのでビックリ。聞くと、その日に売れなかったら処分されるところだったそうです。ギリギリのところで命を救えた。ポエチとは運命的な出会いだったんですよ」
清水が睡眠薬を飲んで横たわると、それまで吠えたことのなかったポエチが白目をむいて大騒ぎした。
「あの世までついてくるのかと思い、“ポエチは死ぬな!”と叫びました。3日間たって意識が戻ったとき、ポエチが目の前にパッと現れてから消えたんです。私が息を吹き返したのを見届けるように。それで私は救われたんです」
しかし、清水は今、ポエチに会うことができない。
「15歳なので、先は長くないと思います。元奥さんの家に行って“ひと目でいいから会わせて”と頼むも“出てけ!”と追い返されて……」
清水は現在、アパートでひとり暮らし。財産も失い、生活保護に頼っている。
「ずっとお小遣いをもらえなくなっていましたから。イベントのギャラをもらえなかったり、ファンミーティングのお金を主催者に持ち逃げされたりしたことも。一昨年は駅の観光センターでバイトしていました。レジ打ちが遅いって、中年の女性店員さんに怒られながら。ビル掃除やポスティングのバイトもしましたよ。車が好きで何十台と乗り継いできましたが、衰えを感じたこともあって運転免許を返納し、車とは縁を切りました」
30歳以上も年の離れた彼女
すべてをなくし自暴自棄になってもおかしくない。しかし、なぜか清水は意気軒昂。
「こういう生活も、役者としてはいい経験になっていると思います。もちろん、また芝居をやるつもりですよ。芸能界は性格的には合わないのですが、今はカムバックするのがたったひとつの望みですね。コンテナ4台分の衣装も残っていますし、キッチリやりきりたいんです」
アイフルのCMばかりが知られているが、清水は役者として長いキャリアがある。
「20歳でデビューし、朝丘雪路さんや美空ひばりさんの舞台に出ました。テレビでは昼メロにたくさん出演しましたね。1973年にはNHK朝ドラ『北の家族』で高橋洋子さんとダブル主演。当時の朝ドラは、ヒロインだけでなく女性受けのいいイケメン役(笑)も主役だったんです」
『白い巨塔』や『噂の刑事トミーとマツ』で熱演。バラエティーでは『欽ちゃんのどこまでやるの!』で“隣の二枚目”役を演じた。
近年は復活に向けてSNSも活用。Facebookには3500人以上のファンがついており、積極的に交流もしている。
「残りの人生は楽しくしたいですね。幸い、公私ともにサポートしてくれる30歳以上も年下の彼女ができました。私にも責任はあるし、キッチリ籍を入れて、可能ならば彼女には私の子を産んでもらいたいですね」
ナント! 78歳にして結婚と子づくり宣言。アイフルのCMにならうなら“無理のない計画を”。