コロナ禍の巣ごもり消費が影響しているのか、から揚げ専門店の出店が相次いでいる。
大手居酒屋チェーンのワタミ株式会社はテリー伊藤氏とコラボした「から揚げの天才」を次々にフランチャイズ化。モンテローザグループは「からあげの鉄人」を'20年4月から展開し、今では259店舗まで拡大。すかいらーくグループはから揚げ専門店の「から好し」をファミリーレストラン「ガスト」内に併設する形で全国に展開。'20年8月の4店舗から始まり、今では1300店舗と急ピッチで拡大している。
この事態にSNSでは、
《昨年くらいからやたらから揚げ店増えてない?》《タピオカ屋が消えたと思ったらから揚げ店が出来てた》などの声が多く上がっている。
から揚げ店急増の秘密
ここにきてから揚げ店が急増している理由は「開業資金の安さにある」と専門家がからくりを明かす。
「最低だと35万円あれば開業が可能なんです。一般的な飲食店だと700万円はかかります。から揚げのテイクアウトのみだと冷蔵庫とフライヤー(揚げ物を作るための調理器具)があれば開業できてしまうんです」
低コスト省スペースで出店が可能なのだ。
「テイクアウト用途なら店舗立地も駅近である必要もない。賃料が安めのエリアでも構わないんです。さらに店員の数も多くはいらない。人件費も抑えられます」
2つ目の理由としては、
「調理が簡単なんです。飲食店の調理場経験がなくてもフライヤーがあれば誰でも同じ味が作れます。特別な技術がいらずに作れるというのも魅力のひとつですね」
開業資金の安さ、調理の簡単さが急増の秘密につながっていた。加えてコロナ禍のおこもりが追い風となっている。コロナが開けてもから揚げ爆風は続くのだろうか。
「タピオカと違ってから揚げはいつの時代も人気の食べ物ですからね。店舗数は減るかもしれませんが、ブームが過ぎ去るということはないんじゃないでしょうか」
“金賞”多すぎ問題
から揚げブームの到来とともに、ひとつの“怪”が生まれている。
《どのから揚げ店も金賞受賞している説》だ。
クマムシの長谷川俊輔も自身のツイッターでこうつぶやいている。
《え、からあげグランプリって 全部金賞なのかよ!!!! なんだこのカラクリ!!!! 逆に考えれば常に金賞を味わえるのか!!!》
これはいったいどういうことなのか。
そもそも「からあげグランプリ」とは?
「本当にうまいから揚げ店を決めるべく、2010年より毎年開催している人気投票企画です。
日本唐揚協会という団体が主催しているのですが、蓋を開けてみるとあの手この手の切り口で受賞させているのです。例えば《東日本しょうゆダレ部門》《西日本しょうゆダレ部門》などはまだわかります。《バラエティ部門》、《ニューウェーブ賞》、《ハイボールにピッタリの唐揚げ賞》などまであります」(全国紙記者)
'08年の設立以降、日本一のから揚げを決める『からあげグランプリ』は'10年から毎年開催されている。
4月14日に開催された「第12回からあげグランプリ」の内訳を見てみると、エントリー総数921店に対してノミネートは175店。うち、受賞が86店と、出品したすべての店舗が受賞しているわけではないようだが、街ではやたらと、
《からあげグランプリ金賞受賞》
の触れ込みを見かける。
いったいどういう仕組みになっているのか。
日本唐揚協会の専務理事の八木さんに噂の真相を聞くと、
「エントリーした店舗すべてが受賞しているわけではありませんよ。金賞を多く見かけるのは、受賞企業が支店を増やしているというのも関係していると思います」
と、疑惑を払拭。
「まず、自薦他薦問わず、から揚げ店を募集します。今年は921店舗が応募してきてその中で書類選考をし、175店舗がノミネートとなりました。自薦他薦でエントリーが重複した場合はどちらかを無効にしていますし、ブラック企業、無店舗などもはずします」
金賞をお金で買っている、などという声もあるが八木さんはそれを否定する。
「ノミネート費用は1万5千円ですが、それは授賞式イベントのライブ配信をするためで、どちらかといえば赤字です」
1万5千円で金賞が買えるとなればそれは安いもの。しかしそういったことは一切ないと力強い。
ノミネートの半数が受賞というのは多すぎる気もするが……。
「私どもが協会を設立した2008年にはグルメサイトなどに《からあげ》のカテゴリーがなかったんです。美味しいラーメン屋さんのようにから揚げというカテゴリーを作りたかった。地方に行ったときに、美味しいから揚げ屋さんを回れるきっかけにしたかったんです。
ラーメンにもしょうゆ部門、塩部門など細かくジャンル分けがありますよね。から揚げも同じです。
ですから賞が多くなったのです。グランプリも、店舗を落とすためのものではなく、世の中に知ってもらう機会になればと考えています」
金賞受賞が多い疑惑の背景には深い“から揚げ愛”があったのだ。
これからもから揚げブームの快進撃は続きそうだ!