「最初、企画書をいただいて読んだとき、この役はあて書きなんじゃないかなと思いました。台本を読んだら自分にもすごくしっくりきたし、“この役は私がやらなきゃ!!”って思いました。現場でも監督が“尾野さんってさ〜”って、ずっと私のことを聞いてくるんですよ。そんなに私のこと知ってどうするのみたいな(笑)。今回も私は、強烈なメッセージを伝える役目なんだなって思いました」
監督が信じてくれた
映画『舟を編む』など数々の話題作を手がけた石井裕也監督最新作『茜色に焼かれる』で尾野真千子が主演。7年前に夫を交通事故で亡くし、コロナ禍で経営していたカフェは破綻。花屋と夜の店のバイトでひとり息子を育てる田中良子を演じる。
物語は、弱者ほど生きにくいこの現代に翻弄されながらも、わが子への愛情を抱えて気丈に振る舞う母と子の人間ドラマだ。
「監督は“尾野さんならやってくれるんで”って、最初から信じてくれているというか自由に演じさせてくれました(笑)。でも、私は野放しにされればされるほど、“良子ならこうやるかな?”とか考えたりできるので、すごく楽しかったです。
しかも、今回は主役なのでいい意味でやりたい放題にできる。その分、共演者の方々に助けていただいたので、とても感謝しています」
自分の中で強くなり自分を知れた30代
女優としてさまざな作品に引っ張りだこの尾野は、今年11月で40歳。
「もうあっと言う間(笑)。30歳になるときは『カーネーション』の撮影現場でお誕生日会をしてもらったんです。
朝ドラを経験できたのはうれしかったですし、そのあともたくさんの仕事をさせてもらったり、結婚して離婚も経験して30代は自分の中で強くなれた部分もあるし、自分を知れた感じがあります。だから、いまは昔よりちょっと気が楽になったところも多少ありますね」
一方、こんな変化にも気づいたそう。
「自分では厚かましい話、まだ20代だと思っている部分もあるんですけど(笑)、昔ほど機敏じゃなくなったり、多少、身体の衰えを感じることもありますけどね」
そんな彼女のテンションの上がる瞬間がこれ。
「地方ロケがあると聞いたときです。しかも泊まりで! 私、ホテルに泊まるのが好きなんですよ。いろんなお店に行って食べたりしなくてもOK。だから、千葉とか近場でも撮影が遅くなったり、明日が早いから泊まりになってもいいですかと聞かれたら“はい、泊まります! ”ってテンション上がっちゃいます(笑)。
この作品では1回だけしかなかったので、どこでもいいのでまた泊まりのロケに行きたいです」
どうしても不安なんです
「セリフ覚えが悪いから毎回大変なんです。だから、覚えるときはいつもリビングに座ってひととおり台本を覚えて、次にお風呂でもう1回覚えて。そして、寝る前に布団の中で台本を持たずに全部ちゃんと言えたら合格。
もし言えなかったら、もう1回起きてまたちゃんと覚えて、また布団に入っての繰り返し。いつもセリフが入るまで安心して寝られないんです」