横浜市戸塚区で飼育中のアパートから逃げたアミメニシキヘビが22日夕に屋根裏で見つかった騒動の結末は、専門家の眼力のすごさをまざまざと見せつけた。
潜伏先予測が的中し発見・捕獲したのは、静岡県にある国内最大の爬虫類・両生類の体感型動物園「iZoo(イズー)」の白輪剛史園長。一般社団法人日本爬虫類両生類協会の理事長も務める。飼い主と面識がなかったにもかかわらず、助言を請われて引き受け、周辺住民がおびえる逃走劇を終わらせた。
本誌が捜索の前々日に電話取材した際、
「私はアパート内部にいまだ潜んでいる可能性が高いと思っています。点検口から屋根裏を警察がチェックしているが、見落としがあるかもしれないので人間が入って確かめないといけません」
と建物内部の再捜索に向け調整しているところだった。
無事に捕獲した白輪園長は、
「点検口から上半身を乗り出し、ライトで照らしたときに“いるじゃん、あそこに”って。鉄骨の上で丸く団子状になっていました。外気温は高くなってきたとはいえ、アミメニシキヘビにはまだ寒く、屋根裏には断熱材もあったため、少しでも高温を求めて高い場所にのぼったんでしょう」
などと理路整然と語った。
本誌は発見前、ヘビの手がかりを求めて白輪園長に「糞」「脱皮」などについて質問。鳥の糞に似て歯磨き粉のチューブぐらいの固さのそれや、今回のヘビの大きさからボロボロと剥がれ落ちる抜け殻の特徴について話してくれたが、「でも、この外気温では糞も脱皮もしないはず。それに私は建物内部にいると思っていますから」と自信たっぷりだった。
発見直後、白輪園長は、
「これだけ人海戦術で屋外を探して見つからなかったのだから、室内にいると確信を持っていました」
と報道陣に語った。
捕獲はまさかの「手づかみ」
捕獲に際しては、ヘビの尻尾を別のスタッフがつかんで引っ張る中、白輪園長が頭をつかんで抱きかかえるようにして鉄骨から引き剥がした。襲ってくることもなく、おとなしいとの印象を持ったという。
発見の知らせに現場に駆けつけた飼い主の男性は、
「近隣の方や捜索に協力いただいた方々にご迷惑をおかけしました」
とあらためて謝罪。ヘビはしかるべき機関に譲渡する。
白輪園長は逃走初期のころ、
「このままヘビを見つけられないのは避けないといけません。死骸であっても必ず見つけないとこの騒動は終わらない。行方知れずで都市伝説にしてはいけないんです」
と胸の内を明かしていた。
捕獲したヘビの健康状態は良好そうだという。専門家らしい推理が、人間にもヘビにもハッピーエンドをもたらした。
◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)
〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する