平成から令和にお代替わりして2年余り。祝福ムードで新たな時代を迎えることができたのは、上皇さまが天皇として約200年ぶりの生前退位を選択されたからだった。
「昭和から平成へのお代替わりの際は、昭和天皇の葬儀に関連する儀式が1年間続き、国民は自らの判断で経済活動を自粛しました。それをご覧になった上皇ご夫妻は“再び同じことがあってはならない”と憂いていらしたのです。
上皇さまは、昭和天皇の崩御から1年10か月後に行われた『即位の礼』の数日前に“喪儀と即位に関する行事が同時に進行するのは避けたい”と述べられたそうです」
そう振り返るのは、ジャーナリストで文化学園大学客員教授の渡邉みどりさん。
美智子さまと同世代の渡邉さんは、日本テレビ放送網に入社後、皇室を60年以上にわたって取材し続けている。
「美智子さまとは『日本記者クラブ』創立40周年記念の会合でお話しさせていただきました。私は、美智子さまのご親戚のひとりと古くから知り合いだったため、そのお話で盛り上がりました。美智子さまからは、私の仕事についても質問していただき、大変名誉なことでした」
渡邉さんは、'59年に行われた上皇ご夫妻の“ご成婚パレード”や昭和天皇が崩御された際の報道番組で活躍する。美智子さまについての著書は15冊を超え、4月には“終活”をテーマにした『美智子さま いのちの旅―未来へ―』(講談社ビーシー/講談社)を出版した。
「美智子さまの“終活”へのお取り組みからは、私たちも学ぶことがたくさんあります。
'10年7月ごろ、上皇さまは長年胸に秘められた生前退位のご意向を初めて、ごく一部の宮内庁関係者に伝えられました。“人生の終い方”について、本格的にご家族とお話しされるようになったのは、'12年に上皇さまが心臓のバイパス手術を受けられた後からです」
上皇さまが大きな手術を経験されたことで、美智子さまは“やがて来るお代替わりについて相談しなければならない”とお考えになった。
「上皇さまが退院されて間もなく、天皇陛下と秋篠宮さまを御所にお招きして月1回の“懇談”を行うように。この話し合いをすすめたのは美智子さまといわれており、上皇ご夫妻のみでなく、ご家族や宮内庁関係者も忌憚なく意見を出し合う場でした」
国民に寄り添い続けてきた美智子さまの“終活”からは国民への配慮が感じられる。
「昭和天皇崩御の際、儀式や陵を造営する費用として投じられた国民の税金は、約100億円にも及びました。経済活動の停滞ぶりを目の当たりにした上皇ご夫妻は“国民生活への影響が少ないのが望ましい”と考えられるように。ご自身については“国民のためになるべく簡素にしたい”と、早いうちから準備を進めることになったのです」
'13年11月、宮内庁は“今後の御陵及び御喪儀のあり方についての天皇皇后両陛下のお気持ち”と題し、葬儀と陵の見直しを発表した。
「経済的な負担を含めた国民生活への配慮と“時代に沿った葬送をしたい”という上皇ご夫妻の意向を受け、約400年ぶりに土葬から火葬へ変更されました。一般社会では火葬が通例であり、上皇ご夫妻が“国民とともに歩みたい”とお考えになっていることも変更の理由でした」
陵については、おふたりが抱かれるお互いへの深い愛情が反映されているという。
「合葬を提案された上皇さまに対し、美智子さまは“畏れ多い”とお返事されました。そして、“皇后陵をそれまでのように大きくしないで、天皇陵のそばに置くことは許されることでしょうか”と相談されたのです。その結果、おふたりの陵は同じ敷地内に寄り添うように並ぶ“不離一体”の形となり、敷地面積は、昭和天皇と香淳皇后の陵の8割程度となります」
火葬にすることで儀式を簡略化し、お墓を小さくして建設費用を節約するというのは、国民を第一に考えてこられた美智子さまらしいご判断だといえる。
美智子さまが30年以上前から計画し始めた“終活”に一生懸命、取り組まれているのは次世代のためでもある。初孫の眞子さまもそのひとりだ。
「'05年の夏、上皇ご夫妻は満蒙開拓の引揚者が入植した栃木県那須町の『千振開拓地』をお訪ねになりました。美智子さまは、ちょうど那須御用邸に滞在中の眞子さまを開拓地にお連れになったのです。眞子さまは母方が満州からの引揚者で、当時は中学2年生でしたが、藤原ていさんの本『流れる星は生きている』をお読みになり、ご存じだったとか」
それから16年がたち、小室圭さんとの結婚に突き進まれている眞子さま。しかし、小室家に関するトラブルが次々と報じられ、結婚反対の国民も少なくない。
「美智子さまは、結婚問題を静かに見守っておられます。眞子さまには“私も苦しんで結婚を決めました。あなたも自分で考えて決めたのだったら……”というような声をかけられたと聞いています」
結婚が確定し、眞子さまが皇室を離れる際には、元皇族としての品位保持を目的とする約1億5千万円の一時金が支給される見込み。だが、原資が国民の税金であるだけに、反発する声も後を絶たない。
「小室さんは、金銭トラブルが報じられてからお金にだらしない印象がついてしまっています。そのため、一時金はおふたりのものにせず、慈善団体や災害復興などに寄付すれば、納得できる国民も増えるのではないでしょうか。
美智子さまは、ご自身の終活を通じて“税金を使う以上、格段の配慮が必要”と示されてきました。おふたりにも、そのお気持ちを継承してほしいとお考えでしょう」
美智子さまの“最後の大仕事”は、おふたりの目にどう映っているだろうか─。