「顔はコワモテだけど、穏やかな性格の人ですよ。あんな凶暴なことをするとは思えない……」(近所の住民)
騒音で睡眠妨害されていた
事件は、5月15日の午後5時40分ごろに起きた。神奈川県平塚市に住むトラック運転手の井上尚昭容疑者(46)は、自宅から約40m離れた近隣宅に出向き、そこに住む片倉章さん(当時70)の腹部などを持参したナイフで複数回、刺した。騒ぎを聞いて駆けつけてきた容疑者の兄がすぐに119番通報し、殺人未遂の現行犯で逮捕された。病院へ搬送された片倉さんは約1時間後、帰らぬ人に。
取り調べに対し、容疑者は「片倉さん宅からの騒音で睡眠妨害されていた。殺そうとしたことに間違いはない」と容疑を認めている。
夜勤で昼夜逆転の生活をしていた容疑者。昼間の生活音には敏感だったようで、昨年10月、容疑者は騒音の苦情を神奈川県平塚署に相談している。その後も、片倉さんとの間には度々、騒音をめぐってトラブルが起きていた。
実際、どのような騒音だったのだろうか──。冒頭の住民は次のように説明する。
「片倉さんは保険外交員の妻と、30代の長男の3人暮らし。10年ほど前に大手生活用品メーカーを退職してからは、廃品を収集することが趣味になったようです。集めた物を電動のこぎりで切ったりしてました。だから騒音は確かにありましたが、私はうるさいとは感じていなかった」
別の住民からはこんな声も。
「片倉さんは敬礼して挨拶するなど愛嬌のある方。毎日数回、県道沿いに植えられている花に水やりをするため、台車にジョウロとタンクを乗せて歩いていました。その際、ガタガタと音はしたけど、気にならない程度でした」
殺意を覚えるほどの騒音とは到底思えないが──。容疑者はどんな人物なのか。
母から小遣いをもらっていた時期も
「彼は幼いころから目立たない子。中学校で同じ野球部にいたけど、あんまり記憶にない」(小中学校の同級生)
地元の県立高校を卒業後、自宅を出た容疑者。製菓会社に勤務していたが、会社の業績が悪くなって退職。その後はなかなか職が定まらず4、5年前からは実家に戻ってきていた。別の近所の主婦が証言する。
「両親と兄弟で住んでいたけど、その後、お父さんが亡くなって3人暮らしになりました。尚昭くん(容疑者)はプータローで親のスネかじりのときもあって、お母さんが小遣いを与えていたようです。彼はとても母親に可愛がられていて、マザコンぎみでした」
さらに“個人的な見解”と前置きをして、こう続けた。
「実は、昔から(容疑者の)お母さんが片倉さんのことを大嫌いでね。どんな経緯でそうなったのか、わかりません。でも尚昭くんが子どものころから、悪口や愚痴をこぼしていたみたい。母親に依存しがちな彼には、何かしらの影響があったんじゃないかな」
事件の詳細を聞こうと、自宅を訪ねたが、母親は何も答えてくれなかった。音の感じ方は、人それぞれ。騒音問題は永遠の課題だ。