ロングセラーの「ゆかり」を生んだ三島食品のふりかけが、今じわじわ話題に。「ゆかり」の3人の妹、そして満を持して誕生した弟の「ひろし」!? 生産が追いつかないほどの人気の理由と、マネしたい食べ方アイデアを聞きました。
「ゆかり」は名前のつもりではなかった
今年の2月にふりかけの新商品、「ひろし」が発売されるやいなや、「『ゆかり』『かおり』『あかり』『うめこ』の四姉妹のとなりに見知らぬ男が加わった……」とSNSで話題に。
それがきっかけとなり、「ひろし」は品切れが続出するほど爆売れし、発売からたった2か月で年間の販売目標をあっさりクリアした。
話題になることを狙ってのネーミングかと思いきや、三島食品広報の佐伯俊彦さんは、「商品名がここまで話題になるとは、全く想像していなかった」と話す。
「『ひろし』は日本三大漬け菜のひとつである広島産の広島菜を100%使用した混ぜご飯の素。原材料の広島菜から『ひろし』と名づけました」(佐伯さん、以下同)
そもそも、四姉妹と言われている「ゆかり」シリーズの商品名も、女性名を意識してつけたものではなかった。
「それぞれの原材料の色や特徴にちなんだ言葉を、親しみやすいひらがな3文字で表したものでした」
ところが2〜3年前に1人のSNSユーザーが、ふりかけ売り場に並ぶ「ゆかり」「かおり」「あかり」の写真とともに「ゆかりは三姉妹だった」と呟いたことから、ふりかけ界では知らないものがいないほどの有名姉妹に。
「突然話題になったときは驚きもありました。しかし当時『三姉妹』として認知されるようになったことで、相関図を考えたりキャラクターイメージを想像されたりなど、商品により親しみを持っていただくことができ、結果的に大変ありがたいことでした」
ちなみに、「私の名前もそんなすてきな『ゆかり姉弟』の一員に加えたい!」という方のために、三島食品は「ふりかけ4姉妹メーカー」というアプリも開発ずみだ。
これはデジタル上で、希望の名前と配色の「ゆかり姉妹」パッケージ風画像を自由に作れるアプリで、三島食品のウェブサイトから簡単に楽しめる。一時はアクセス集中でアプリが停止するほど話題に。こういった面白みのある取り組みも、「ゆかり姉弟」が消費者に愛される理由のひとつだ。
「ひろし」はもともと「ひろこ」の予定だった
さらに昨年には、姉妹の末っ子としてカリカリ梅が原料の「うめこ」が誕生。
「実は『ひろし』は、前年に発売した『うめこ』の売れ行きが好調だったことから『ひろこ』と名づけられることに9割方、決まっていたんです」
しかし、商品名の最終的な打ち合わせの場で、「うめこ」の名づけ親でもある社長から「『ひろこ』は何か違う気がするので、ここはひとつ『ひろし』にしてはどうか」という鶴のひと声が。晴れて「ひろし」誕生の運びとなった。
「当時社内では男性名はどうなのかという意見もあったようです。しかし、商品の原材料で、会社の所在地である広島県の特産品でもある広島菜をもっと世間にアピールしたい、そのためにもシンプルに原料名を印象づける『ひろし』と名づけようよという社長の意見を聞き、多くの社員が賛同。初の男性名の商品の誕生に至りました」
「ひろし」はそんな社長をはじめとした三島食品社員の郷土愛あふれる思いが込められた名前だったとは……。なんだか聞いただけでもほっこり心が温かくなってくる。
これが“ひろし”です…!
●パッケージは、瀬戸内海のイメージと広島菜をアレンジしたデザインに。
●当初は「ひろこ」となる予定だったが、社長の鶴のひと声で「ひろし」に。
●青菜の混ぜご飯の素「菜めし」もあるが、「ひろし」は名前のとおり広島県産の広島菜だけにこだわった。
●原材料は広島産の広島菜100%。浅漬けを調味し、乾燥させている。
コト価値をもたらした「ゆかりペンスタイル」
数年前に大きな話題となった、ペン型の容器に入った「ゆかりペンスタイル」の誕生にも、そんな三島食品らしさ全開のちょっとゆるくて面白いいきさつが。
「前社長は『ゆかり』が好きで、どこへ行くにも持ち歩いていたのですが、既成の袋や瓶だとかさばるので、資材担当者が見つけたペン型の容器を『ゆかり入れ』として愛用していました」
そのペン型容器に入れた「ゆかり」を持ち、前社長が夜の街へお酒を飲みに行った時のこと。焼酎に「ゆかり」をふりかけようと、胸ポケットからそのペンを取り出したところ、周りにいた女性たちが「なにそれ? かわいい!」と大盛り上がり。
その様子を見た前社長は、これは「ゆかり」の名のとおり人と人との“縁”をつなぐいい商品になる! と直感。採算を無視して限定発売へと踏み切った。結果、ペンスタイルは大ヒット。
ふりかけとしての価値だけでなく、「コト価値」をもたらしてくれる商品として「ゆかり」のブランド力を高めるきっかけとなった。
異業種からの誘いが絶えない人気者に成長
話題性のある自社商品にとどまらず、最近は「コップのフチ子」で知られるカプセルトイメーカー「キタンクラブ」とのコラボポーチが発売されるなど、異業種と「ゆかり」のユニークなコラボレーションも続々登場している。
そこで気になるのは、次なる人物の登場。佐伯さんに今後の展望について聞くと、
「ご期待はいただいているので、企画チームが動いてはいますが、今は未定です。ただ社長は、やる気満々ですよ」
「ひろし」に次ぐ、名前も味もジワる新商品に期待だ。
三島食品広報・佐伯さんおすすめ超簡単アレンジレシピ
●ひろしとニンニクバターのパスタ
「ひろし」のうまみで味つけ不要!
茹でたパスタをニンニクとバターで軽く炒めてから「ひろし」としらすを適量加え、サッとあえれば完成。「ひろし」のうまみとシャキッとした歯ごたえが、後を引くおいしさ。
●ふりかけ三姉妹の3色ポテサラ
いつものポテサラが“映える”一品に
ポテトサラダを3つに分け、それぞれに「ゆかり」「かおり」「あかり」をお好みの量ふりかけるだけ。市販のポテサラでももちろんOK!
〈取材・文/中村明子〉