5月18日、田村正和さんが亡くなっていたことが発表された。追悼企画として5月20・21日に放送されたのは、『古畑任三郎ファイナル~フェアな殺人者~』(フジテレビ系)。
「2006年の再放送なのに、視聴率は13・4%を記録。田村さん演じる主人公の古畑が、当時野球選手だったイチローさん演じる殺人犯と対峙するストーリーでしたね」(スポーツ紙記者)
久しぶりの古畑の登場は大反響だったが、もうひとつ話題になったことが─。
「自転車ですよ。古畑が愛用するセリーヌの高級自転車で、物語には欠かせないアイテムなんです。ネット上では、懐かしむ声が上がっていました」(同・スポーツ紙記者)
この自転車は、ブリヂストンがフランスの高級ファッションブランド『セリーヌ』とコラボして限定販売され、世界に30台しか出回っていない。
「24金メッキを使った、超豪華な自転車で、値段は1984年の販売当時で30万円もしました。『古畑』で使われていたのは、都内にある自転車店が店内で展示していたもので、撮影のたびに借りていたんですよ」(テレビ局関係者)
「売ってくれ」と頼まれたけど
番組が終了して15年たった今も、その自転車店に保管されているという。店主を訪ねてみると、懐かしそうに目を細めながら話してくれた。
「あの番組で使ってもらうようになってから、見にくる人がいっぱいいたね。いろんな人から売ってくれと頼まれたけど、全部断ってきた。今はお店を営業してないから、晴れの日とか、連絡して見にくる人がいる日は店の外に飾ってる。雨の日は、自転車が傷んじゃうから外には出さないんだよ」
自転車はかなり年数がたっているため、多少の傷は見られたが、故障はしていない。店主の“愛”がうかがえた。
店内を見渡すと、田村さんのサインがあった。テレビ局を通じてもらったものだと話すが、これは珍しいこと。
「彼は撮影現場のスタッフとも気さくに話すタイプではありませんでした。人と接するのに、自分なりの距離感があるので、めったにサインにも応じない」(前出・テレビ局関係者)
店主に田村さんへの思いを聞くと、表情を曇らせた。
「もう1度、ドラマで使ってくれないかと首を長くして待ってたんだけどね。田村さんには会ったことがなかったから、一度会いたかったな……」
愛車の輝きを守り続けた店主に、田村さんも草葉の陰から感謝しているだろう。