“試練”の連続だった最新の主演映画。物語では終末期医療に向き合う医師役を熱演したが、プライベートは高齢の夫とマイペースで庶民的。あたかも、そんな暮らしが彼女にとって、あたたかい“停車場”のようで……。
東京での救急救命医を辞め、郷里・金沢の『まほろば診療所』で在宅医療を行う医師として働くことになった女性が、患者と家族、そして命に向き合っていく──映画『いのちの停車場』。老老介護や終末期医療、尊厳死……目の前の現実に戸惑いながらも“自分らしい生き方”を模索していく主人公・白石咲和子を演じた吉永小百合(76)。2年ぶりとなる主演映画の待ちに待った公開なのだが、どうやら手放しで祝う心境ではなかったらしい。
主演映画がやっと公開
「昨日、映画が封切りを迎えました。とてもうれしいことなのですが、とても残念なこともありました……」
公開翌日の5月22日、オンラインで行われた舞台挨拶でそう切り出したのは、ほかならぬ吉永だった。
「演劇は大丈夫だけれど、映画はダメということをうかがって、大変ショックを受けましたし、悲しかったです」
晴れ舞台で大女優自ら、偽らざる胸の内を語ったのにはわけがある。新型コロナによる映画館の休業要請だ。
「『停車場』も“公開を延期すべきでは”とギリギリまで話し合いがされていました。批判覚悟で封切りに踏み切りましたけど……。コロナに翻弄され苦しむすべての映画関係者の気持ちも代弁したんでしょう。ご自身も“やっと公開まで漕ぎつけたのに”と」(映画配給会社関係者)
“漕ぎつけた”と吉永が思うのも無理はない。コロナ禍だけでなく、患者役で出演している伊勢谷友介が大麻取締法違反で逮捕されるという前代未聞の事件まで発生。
「出演シーンのカットを検討するどころか“吉永さんの名前に傷がつく”と、一時は映画のお蔵入りまで検討されたほど。“作品に罪はない”ということで、出演シーンもそのまま使うことになりましたが、映画の宣伝ポスターやチラシには伊勢谷さんの写真も名前も入っていません」(同)
悪いことは重なる。
「11月には『停車場』製作の陣頭指揮を執っていた東映の会長が亡くなってしまって。会長は吉永さんと40年以上もタッグを組んできた最大の理解者。『停車場』も彼からのオファーだったから引き受けたんです。吉永さん、ショックでしばらく誰とも口を利けなかったそうですから……」(スポーツ紙記者)
だが、そうした苦労のかいあってか『停車場』は見事なスタートを切る。公開初日からの3日間で観客動員16万人超、週末興行ランキングは堂々の1位。
さらに、吉永の願いが叶ったのか、東京都内の映画館に出されていた休業要請が緩和された。『停車場』のロケ地・石川県金沢からも安堵の声が上がった。撮影をサポートした『金沢フィルムコミッション』の担当者も胸をなで下ろした1人。
「撮影は去年の10月でした。金沢には“弁当忘れても傘忘れるな”という言葉があるほど雨が降るんです。撮影は屋外が多かったので、お天気がいちばん心配だったんです。
でも映画のスタッフは“大丈夫、吉永さんがお天気を連れてくるから”と。そしたら本当に撮影の期間、ずっとお天気に恵まれて驚きました」
ロケに店舗を提供した寿司店には後日、こんなお礼が。
「コロナ対策で、撮影中はお話しすることはできなかったんですが、後日、吉永さんから色紙をいただきまして。“感謝を込めて”と直筆メッセージが書かれていました」
見物人による“密”を避けるため、ロケ場所や撮影日時は極秘で行われたのだが、大女優のオーラは隠せない。
「店の前で撮影が始まると“吉永小百合がいる!”とすぐバレて、みるみるうちに100人も集まっちゃって(苦笑)」(ロケ地の鮮魚店店員)
だが、そんな吉永もプライベートとなると一転、存在感を消し去り続けてきた。
吉永小百合のプライベートは……
'73年、28歳のときにフジテレビのプロデューサーだった岡田太郎さんと電撃結婚して以来、吉永が自らの私生活を語ることは少ない。ふたりで暮らす東京都内の自宅近くを週刊女性が訪ねても、夫婦そろってはおろか、吉永ひとりの目撃談もごくわずかだ。
「だいぶ前に駅のホームでお見かけしたことがあるんです。すっぴんで帽子をかぶっていらっしゃって。あれは“サユリスト”でも気づかないんじゃないかな」(近所の住民)
飲食店の店員も口をそろえる。
「吉永さんと同じマンションに住んでる人たちからは“エレベーターで会う”と聞くんだけど、街中で見かけたことは1度もない。吉永さんは“オーラ”を消すのがすごくうまいらしいよ(笑)」
吉永の姿が唯一、頻繁に目撃されていたのは意外な場所。
「区民プールでよく泳いでいるって。ほら、区民プールって60歳以上はタダで泳げるじゃない?(笑)。20分とか30分とかで帰ってしまうみたいだけど」(別の住民)
最近、吉永はこうしたトレーニングに力を入れている。
「2年前からジムに通い始めているそうでね。週に1度、スクワットだとか階段昇降だとか筋トレを。水泳もその一環で、1度に2000メートルも泳いじゃうんですって」(プロダクション関係者)
“永遠のヒロイン”吉永も76歳。女優業を続けていくには体力づくりは欠かせない。だが、理由はほかにもあった。
「ご主人の岡田さんのためでもあるんです。吉永さんの15歳上の岡田さんは90歳。7、8年ほど前には大病を患って長く入院していたこともあったそうですから。一時は“吉永小百合が老老介護している”なんて噂があったほど。吉永さんが生活全般を支える必要もあるんでしょうね」(同・プロダクション関係者)
だが、週刊女性は5月下旬、そんな噂話を吹き飛ばす岡田さんを目撃。半袖のTシャツにブルーのジーンズというなんとも若々しいいでたちで自宅マンションを出ると、スタスタと近くのコンビニへ。90歳とは思えない、ピンと伸びた背すじと軽やかな足取りだ。
吉永にも変化が。あれだけ私生活を明かそうとしなかった彼女が、先ごろ出演したトーク番組で岡田さんとの生活を照れながらこう語った。
「『停車場』では聴診器や血圧計などを扱わなければいけないので、夫に患者役をしてもらって練習しました(笑)。リタイアしてからは、料理をよくするようになりました。料理番組を見ては、おいしいものを作ってくれます。シチューとかソテーとか……」
劇中登場する“まほろば”とは“理想郷”という意味だ。結婚から48年、吉永と岡田さんの“まほろば”は今、この瞬間なのかもしれない。