ただでさえ難しいと言える女性同士のつきあい。特にママ友というと、年齢から、学歴、出身地とバックグラウンドがそれぞれ異なるため、価値観の違いから意見も相違してしまいがち。
なかでも、夫の職種や収入の違いから生まれる経済格差の問題は大きいものです。子どもという共通項以外では、仲良くなれそうな要素がなくても、同じ幼稚園や小学校に通っている手前、つきあいも避けられない。ライターでママ友研究家でもある筆者が、そんなママ友づきあいに悩んでいるママにスポットを当てます。
年上ママとのつきあいがストレスに
3歳になる女児を育てている洋子さん(仮名・26歳)は、日常生活の些細なことで、ほかのママよりも収入が少ないことを恥ずかしく感じるそうです。
「うちはデキ婚なのですが、1つ年下の夫はシステムエンジニアとして転職したばかりで、まだ給料も少ないんです。幼稚園のママ友と一緒にランチに出かけた際、自分だけドリンクバーをつけなかったりと、プチ節約をしているときはちょっと惨めな気持ちになります」
確かに、子どもの出産年齢はそれぞれ違うため、ママ友と言っても20代から40代のママが同じクラスになることも珍しくはないようです。
「年上のママさんは、モンクレールのダウンを着ていたり、明らかに持ち物が高そうなんです。うちは娘にリサイクルショップで買った服を着せています。私はGUとかしまむらを着ているのですが、プチプラだと思われているのだろうなって不安になるときもあります」
洋子さんは、子ども同士の仲がいいためにママ友づきあいが避けられないのが悩みと言います。
「普段からキッズカフェや、フードコートなどに行き慣れているママさんだと、お金を使うのに抵抗がないんです。私はやりくりしながら外食をしているので、そんなに頻繁にはキッズカフェにも行きづらい。そう言えればいいのですが、貧乏って思われたくないので、言いづらいんですよね……」
フリーランスの夫の収入が激減
麻衣子さん(仮名・38歳)は、6歳になる息子が今年小学校に入学しました。同じ小学校には、2歳上の学年に娘を通わせています。ずっと専業主婦でしたが、息子の入学を機に、数か月前からファミレスで調理のパートを始めました。
「娘を出産するまでは、クレジットカード会社の営業部で働いていました。正社員だったのですが、コールセンターのマネージャー職になり、スタッフの管理やクレーム対応などに追われ、残業が続きました。仕事をやっていても正当な評価をされなかったこともあり、妊娠を機に退職しました」
有名大学を卒業していた麻衣子さんは、第一子を出産したら正社員として再就職するつもりでした。しかし、時短勤務が条件だったこともあり、希望どおりの再就職ができませんでした。
「このときはまだ30歳だったので、気長に探せば見つかると思っていました。私はひとりっ子だったので、二人目がどうしても欲しかったんです。夫は5歳年上だったので妊活を焦りました。そのため就職を見送って、二人目妊活を始めました」
麻衣子さんの夫は、企業や大学などのPR映像を撮影する映像制作会社に勤めていました。
「夫が勤めていた会社は、中小企業でしたがクライアントに恵まれ、仕事は途絶えることはなかったんです。でも、さらに収入を増やしたいと思った夫は独立して、フリーのディレクターとして映像の仕事を始めたんです」
しかし、麻衣子さんの夫の仕事はコロナ禍のため、撮影自体が何度もキャンセルになってしまいます。
「保育園は働いていないと入園もできないし、待機児童も多い地域。私は二人の子どもの預け先もないため、働きに行くこともできない。子どもが通っている幼稚園は、無償化の対象でもなかったので、お金が出ていくばかりでつらかったです」
同時に麻衣子さんは、周りのママ友の暮らしがうらやましくなったそうです。
「去年は、緊急事態宣言もあって顔を合わす機会が減っていたのですが、ちょうど小学校の入学準備のため、LINEのグループチャットではランドセルの話題で盛り上がったんです。ランドセルにこだわりのあるママたちは、展示会に足を運び、ゴールデンウィークよりも前に購入しているようでした」
今、ランドセル購入のための準備は『ラン活』と呼ばれています。少子化にも関わらず、ランドセル市場にはさまざまなタイプの商品がそろい、にぎわっているようです。
アウトレットで安いランドセルを探して…
「うちは、ママ友みたいにランドセルに7万円もかけられないので、必死で安いランドセルを探しました。型落ちなら安く買えるので、みんなが買う時期を避け、秋くらいから探し始めて。安いアウトレットのランドセルを2万円で買ったのですが、デザインはすごくシンプルで、飾りなど何もついていないんです。でも安っぽく見えるのは嫌なので、革にはこだわりました」
麻衣子さんは、ママ友からのメッセージでランドセル画像が投稿されるのがつらかったと言います。
「きちんとした百貨店や展示会で、購入予定のランドセルを背負った子どもの画像が投稿されていました。実は、うちでは節約のために家族みんなの髪を私が切っているほどで、百貨店に行くこと自体、気が引けてしまうんです……。私の服も数年前に通販で買ったコーディネート。はた目には、そこまで節約しているとは思われないかもしれないですが、当たり前のように高いランドセルが買える、幼稚園のママ友をうらやましく思うときがあります」
そう語る麻衣子さん。子どもたちにも影響は出ているようで──。
「うちはうちと思えればいいのですが、小学3年生になる娘や、小学校に入学した息子は『Nintendo Switch』を欲しがるんです。休みの日にオンラインゲームで、友だち同士集まったりするので、自分たちだけ参加できなくて話題についていけないときもあるとか……。子どもには『ゲームは高学年になるまでだめ』と言って聞かせていますが、いつまで我慢できるか不安です」
SNSなどでほかの家庭の暮らしぶりが見えてしまうため、麻衣子さんはつい自分と比べてしまうそうです。同級生たちのSNSを見て泣いてしまったこともあります。
「高校は進学校だったのですが、有名企業で働きながら子育てをしている同級生の姿を発見してしまって。自分はこんなはずじゃなかったのに……と思うと涙が出てきました」
同じ境遇のママばかりではないことが、つらく感じてしまう要因かもしれません。
相手のママ友に問題があって距離を置くのなら、理由がはっきりしていますが、自分の経済状況のために、つきあいを減らしたりしなければならないのもつらいものです。ママ友づきあいは、お互いの気遣いで成り立つものですが、コロナ禍で経済格差が拡大すると、ますますこの悩みは増えていきそうです。
池守りぜね◎東京都生まれ。フリーライター。大学卒業後、インプレスに入社。ネットメディアで記者を務めた。その後、出版社勤務を経て独立。育児、グルメ、エンタメに関する記事のほか、インタビューも多数執筆。『一瞬と永遠』、『絶叫2』など、映像脚本も手掛ける。プライベートでは女児のママ。Twitter:@rizeneration