「コロナ不況女子」ホームページより

 6月5日、東京都品川区五反田に、『コロナ不況女子』というデリヘルがオープンし、物議を醸している。店名通り、コロナの影響で苦しい状況に陥っている“不況女子”を“支援する”というコンセプトのようで、ホームページのトップページには膝を抱えて座り込む女性の写真とともに、こんな文言が並ぶ。

「五反田でお金に困った女の子を助けて下さる支援者様を募集します。女の子達があなたの助けを待っています。」

 一見、デリヘルのホームページとはとても思えない、全体的にどんよりとしたデザイン。そして客を支援者と呼び、料金は支援料金という徹底ぶり。

 さらにキャストの女性たちのプロフィール欄に進んでいくと、“不況物語”として、

<新型コロナウイルスの影響で身体の弱かった父親が他界>
<残債金額800万>
<無職になった上に、妹の学費を肩代わり>

 といった、なぜ彼女たちが苦境に陥ったのかなど、生々しいストーリーが綴られている。

SNSで批判が相次ぐ

「お店のことがSNSで取り上げられると、すぐに拡散されて話題になりました。支援するならお金だけあげればいいのに、人助けとしているのが下衆の極み、胸糞悪い……など批判的な意見が相次ぎ、 “社会問題と結びつけて、いかにも感を出してる感じが気持ち悪い”“コロナで選択肢がなくなった女性たちを食い物にしている”といった厳しい声も。

 でも、ごく一部の人からは、稼ぎたい人にとってはありがたい話では? とか、戦略的にはアリ、なんて肯定的な意見もあがっていました」(ウェブメディア編集者)
 
 明日を生きるために、自らこの店で働くことを選んだ女性たちもいることだろう。実際、店の従業員と思われる女性のSNSには、

<辞めた方が良いとかふざけるなとかいう人は結局何もしてない人達で、なら変わりに何かできるの?何かしてるの?って思う。どれだけ批判を受けても、私が決めたことなので一生懸命やります!!>(原文ママ)

 とのつぶやきが。すべては店としての“演出”という可能性もあるが、そうした売り方をしている以上、セックスワーカーという職業全体への差別問題へと繋がりかねない。一方で、政府からセックスワーカーへの補助金が出ないという現状も踏まえると、言葉には言い表せないような、モヤモヤが残る。

それは果たして正義なのか

「人の不幸に便乗している感が否めないし、コロナで困窮する女性たちをここまであからさまに“ネタ”として使っているところに、見ている方は不快感を抱いてしまうんだと思います。集客できればなんでもいいみたいな、そのお店のスタンスにイラッとくるのかもしれません」

 そう話すのは性愛、ジェンダー問題などを取材、執筆し、AVや風俗業界の事情にも詳しいライターのアケミンさん。こう言葉を続ける。

「品がないといいますか、ちょっとモラルがないなと。昨年の(ナインティナイン)岡村隆史さんの失言を思い出しましたね」

 岡村の発言といえば、昨年、自身のラジオ番組で「コロナが明けたら、なかなかのかわいい人が、美人さんがお嬢(風俗嬢)やります」などと発言、炎上した件。皮肉にもその発言が現実になってしまったということになる。

「コロナ不況の不幸を売りにして、しかもそれを“人助け”という善意として集客をしているわけですから、抵抗を感じる人がいるのは、当然のことだと思います。それはお店側もわかっているはず。でも、批判があったほうがこうやってSNSで話題になったり注目を集めますし、炎上商法と似たようなものを感じます」

 その言葉通り、ツイッターでは批判とともに店の情報が拡散され、それが却って宣伝につながっているようにも感じる。

 さらに、それらの問題とそこで働くセックスワーカーの存在は切り離して考えるべきだとアケミンさん。

だからデリヘルがダメという話ではないし、セックスワーカーそのものを否定してはいけない。先日、立川では風俗で働く女性が殺害されるという痛ましい事件もありました。彼女たちの労働環境やセキュリティについても、深刻な問題になりつつある。そこは慎重に考えるべきです。

 コロナでお金に困っている女の子たちがいるのも事実。とても難しい問題だと思います」

 今後、こういうお店はどんどん増えていくのだろうか。

「デリヘルとか風俗店の名前って、キャッチーなものだったり、その時々の事由でもじったものが多いんです。その悪ふざけが過ぎたのが“不況女子”なのかなと。そういった、ネーミングで遊ぶみたいなところは昔からあるので、似たようなお店は出てくる可能性はあると思います」

 店側は本当に女性たちを救いたいという正義感があるのか、はたまた、それもただのコンセプトとしての延長線上なのか、ネットでの賛否両論を受け、こんなことを発信していた。

<「コロナは偶然だから仕方ない」偶然に起きたことに対して、保障を国はしてくれません。だからこそ私達は正直に、真っ当にこの状況に立ち向かうことを決意しました>(ツイッターから一部抜粋)

 さらには、女性が働きやすい環境として、指名料・特別指名料の全額報酬扱い、雑費は店が全額負担なども約束していることを見ると、一見、親身になって女性たちのことを考えているようにも思えるがーー。

 支援とはいったい何なのだろう。彼女たちに本当に必要な“支援”が、行き届くことを祈るばかりである。