「最近やせなくなった」と感じるのは代謝が落ちると同時に、腸が衰えだしているから。腸の活動が衰え悪玉菌がグングン増えるとやせにくいだけでなく、疲れやすく、肌もくすみます。たかが便秘と侮らない! 腸には、健康でいるためのすべての要素が詰まっています。
コロナ禍による体調の悩みとして増えているのが便秘。「これまで便秘ではなかった方からのご相談が増えています」と語るのは、管理栄養士で一般社団法人日本腸内環境食育推進協会代表理事の加勢田千尋さん。その理由として考えられるのが、ステイホームやテレワークによる運動不足と、生活習慣の変化にある。
「生活スタイルが変わったことによる体内時計のズレが大きく影響しています。テレワークで時間の制約が緩くなった分、朝遅くまで寝てしまったり、食事内容が変わってしまった人も。その結果、腸の動きが悪くなり、便秘になってしまっているのです」
整った腸こそ健康の要!
腸内環境の乱れに思い当たる節がありつつも“便秘は病気ではない”と軽く考えて放っておくと、大変なことに!
「便秘でお悩みの方からは、落ち込みやすくなった、イライラしやすいという声をよく聞きます。精神を安定させる働きをもつホルモン“セロトニン”は90%が腸で作られていますので、腸内環境が乱れるとセロトニンを十分に作れなくなり、メンタル面にも悪い影響を及ぼします。
さらに疲労や肌荒れなどの不調を招くほか、免疫力が低下してしまうこともわかっています」
現在、便秘ではない人も無関係とは言えない。
「残念ながら、年齢を重ねるごとに、増えすぎると健康に悪い作用をする腸内細菌のひとつ、悪玉菌の増殖スピードは速くなります」
つまり、50代以降は、乱れた食生活をしていなくても腸内環境が悪くなりやすいのだ。
「腸は食べたものの栄養を吸収し、細胞の修復を促すなど、人が健康で生きるために必要な要素がすべて詰まっています。便秘解消やダイエットのためだけでなく、自分の身体を守るために早めに腸内環境を整えてほしいですね」
今後の若さと健康を保つために、すぐにでも始めたい腸活。実際に加勢田さんが取り入れて4か月で10キロやせたという驚異のメソッドの詳細は後ほど……
食事に“ちょい足し”お手軽腸活の始め方
腸活の第一歩としてまず取り入れたいのが、腸内環境を整える食事。簡単で続けやすいのにしっかり効果を感じられる方法とは。加勢田さんにヒントを聞いた。
腸内環境を整えるには、健康にプラスに作用する善玉菌を増やし、健やかに保つことがポイントに。それをサポートしてくれるのが、みそや酢などの発酵食品だ。
「発酵に関わる微生物は、主にカビ、細菌、酵母の3種類。これらの微生物には、腸内細菌のバランスを改善してくれる働きがあり、発酵食品はまさに善玉菌の宝庫。ぜひ毎日摂取してほしいですね」
とはいえ、みそ汁や発酵料理を毎日作るのはなかなか大変。そこで活用したいのが、加勢田さん考案の「腸活玉」。みそ、削り節粉、白いりごまという、腸にいい材料3つを丸めて保存し、お湯に溶かすだけで簡単に「腸活みそ汁」が作れる。
「みその原料である大豆には、タンパク質や脂質、ビタミンが豊富に含まれており、発酵により乳酸菌たっぷり。ごまは鉄分やカルシウム、ミネラル、そして食物繊維を多く含みます。
さらに削り節粉に含まれる“かつお節菌”は乳酸菌同様、腸内環境を改善する働きが。“菌”と、それを育てる食物繊維を一度にとれるので、パワフルな効果が期待できます」
まずは毎日1杯を習慣に。
「飲むタイミングは好きなときでOKですが、おすすめは腸が活発に動きやすい朝。また血糖値の急上昇を防ぐため食事の“始め”に飲むと効果的です」
おみそ汁以外にも、ちょい足しでできるドレッシングなどのアレンジ技もぜひお試しを。
たかが便秘じゃない! 「腸」が引き起こす不調
身体
・肩や首がこる
・片頭痛
・足がむくむ
・体重が増えやすい
・疲れやすい
お腹
・便秘がち・便のにおいが気になる
・下痢をしやすい
・痔になりやすい
・ストレスがたまるとお腹の調子が悪くなる
心
・落ち込みやすい
・イライラしやすい
・集中力が続かない
・不安になりやすい
【腸活玉の作り方】
【材料】
(作りやすい分量/10個分)
みそ…………100g
削り節粉……10g
白いりごま…20g
【作り方・飲み方】
上記の材料をすべて混ぜ、大さじ1ずつ取り分ける。ラップで包んで丸めたものが「腸活玉」。これを1人分につき1個、お椀に入れてお湯120mlを注ぐだけで「腸活みそ汁」が完成!
1日1杯、食事の最初に飲むことを習慣づけることで、腸が元気に。冷蔵で10日、冷凍で1か月ほど保存できる。
【アレンジ技】腸活玉に(1)か(2)を加えて
(1)酢(小さじ2)、えごまオイル(小さじ2)で和風ドレッシングに
(2)豆乳ヨーグルト(プレーン無糖・大さじ3)で温野菜ディップに
生活に“ちょい足し”腸活成功のコツ
ポイント(1)生活リズムを整える
朝起きたらコップ1杯の水を飲み、朝食はしっかりとる(おにぎりとゆで卵など、400kcal程度が目安)。睡眠は7時間程度、1日20分の早歩きをするなど、日々のルーティンを少し見直すだけでOK。
ポイント(2)トイレタイムを習慣づける
1日の中でも、腸がいちばん大きく動くのが朝。このタイミングを活用して便通を習慣づけられるよう、朝食後10分は便意がなくてもトイレで座るようにする。このとき、スマホを見るなど、ほかのことはせずにぼーっとするのがポイント。
ポイント(3)腸にすまわせる菌の種類をアップ
腸内細菌を増加させるため、菌の種類を多くすることも大切。例えば、発酵食品である酢と、腸内のビフィズス菌を増やす働きのあるにんじんの組み合わせは血糖値上昇を抑える効果がある。手軽にとるなら麹で作られた甘酒を飲むのもおすすめです。
「腸活みそ汁とともに、毎日の小さな心がけで腸内環境を整える効果はさらにアップできます」と加勢田さん。上に挙げたポイントを意識してみると数日で変化が。
ただし、冒頭でも触れたとおり50代以降は悪玉菌が増えやすく、体重などの目に見える効果を実感するまでにやや時間がかかる可能性もある。
「便通や体重だけを目標にせず、指標をなるべく多くして、長期的に取り組むようにしてほしいですね。眠りが浅い、疲れやすいなど、いろいろある不調が少しずつ改善されてくるなど、必ず体調に変化が出てきます。まずは2週間続けてみましょう」
加勢田さんの腸活ルールでしっかり効果が! お悩み別1か月チャレンジ
YouTubeの腸活チャンネル『ウンTube』にて、便秘に悩む3人が腸活食で快便&スッキリボディを目指した結果、驚きの変化が!
便秘は主に、腸の動きが悪いタイプ、ストレスが原因のタイプ、便意を我慢し腸の感覚が鈍っているタイプの3タイプに分けられます。それぞれ適した対応が異なるので、まずは自分がどのタイプか知ることが大切です。
神崎さん、生活リズムが乱れがちで便通も体形もピンチ!
便通1日2、3回&ウエスト-8cmを達成
体重-2.1kg
ウエスト-8cm
体内時計のズレにより腸内環境が乱れているタイプ。そこで、体内時計のリセット効果が高い栄養の組み合わせや、血糖値の急上昇を防ぐ食べ方を意識しつつ下記を実践。
(1)朝・夜の食事前に腸活みそ汁を
(2)ひと口につき20回噛んで食べる
(3)1日1回は具だくさんみそ汁にする
「ウエストが目に見えて細くなりました! 運動もしないし、食べ物も偏っているし、生活のリズムが乱れがちで本当にやせられるの? と思っていましたが結果が出てうれしい。便秘もひどく3、4日出ないこともザラでしたが、今では毎日お通じがあって、本当に驚きです」(神崎さん)
「無理に生活スタイルを変えるのではなく、多少リズムが乱れてもいいので、その中で整えられる方法を意識したことがいい結果につながったようです。自炊できなくても朝のみそ汁だけは続けるなど、ルールを複雑にしないことも成功の秘訣です」(加勢田さん)
川口さん、疲れやすいのが悩み。体力をつけて元気になリたい!
動けるようになり、肌ツヤもアップ
体重-2.2kg
ウエスト-5.5cm
疲れやすいのは栄養を吸収できていないから。そこで腸内環境と栄養バランスを整える食事法を実践。
(1)脂質が少なく、消化が早いため胃腸に負担がかかりにくいご飯食に
(2)腸を刺激して便意を促すため朝食は固形のものに
(3)昼食にはタンパク質がとれる肉や魚の腸活レシピを1品
「腸活玉と、ストレッチなどを取り入れましたが、2週間後から肌や髪の色ツヤが変わってきたのを実感。今では本当に身体が軽くなって、人生変わるぐらい幸福度が上がりました! こんなに健康的にやせられたのは初めてかも」(川口さん)
「栄養バランスを整えつつ、食事でとりきれない分は間食で補うようにしたことで、無理なく続けられたようです。また、とった栄養をエネルギーに変えるビタミン、ミネラルの不足も疲れやすさにつながるので、フルーツや海藻も積極的に食べてもらいました」(加勢田さん)
小野さん、毎日しっかり運動しているのに産前の体重に戻れません……
週5、6回だった便通が週21回に!
体重-2.3kg
ウエスト-5.5cm
小食&毎日の運動など、頑張りすぎて交感神経が優位になり、腸の動きを悪くしていた。食事量を増やし、運動は控えめにしつつ下記を実践。
(1)昼食にタンパク質がとれる肉や魚などの腸活レシピを1品
(2)昼と夜に腸活みそ汁
(3)おやつの質を変える
「産後太りを解消するために、食事を減らしたり、運動をしてもなかなか体重が減らなくて。それが開始2週間でかなり見た目にもお腹まわりがスッキリしてうれしいです! 人生で最短でやせられました。妊娠中、妊娠前後の便秘に悩む方に伝えたいです」(小野さん)
「ちょっと贅沢なパックや、いい香りの入浴剤を使うなど、リラックスできる時間をつくったことで自律神経のバランスが整い、腸内環境の改善につながりましたね。おやつは高カカオチョコ(25gまで)や無塩ナッツ、無糖のドライフルーツをおすすめしました」(加勢田さん)
教えてくれたのは……加勢田千尋さん●管理栄養士。一般社団法人日本腸内環境食育推進協会代表理事。クリニックなどで7000名以上の栄養指導・食事アドバイスを行う。著書『10kgの減量にたった4か月で成功した管理栄養士が教える「やせ玉」腸活ダイエット』(主婦と生活社)も話題。ご自身も腸活成功者!
(取材・文/當間優子)