ジューンブライド──。古来ヨーロッパでは、「6月に結婚する花嫁は幸せになれる」とされる言い伝えがあるという。梅雨である日本とは違い、ヨーロッパは3~5月は1年の中でも農繁期。諸説あるものの、そのピークが過ぎた6月に結婚式を挙げる慣習があったため、6月=花嫁の季節になったのだとか。梅雨で雨が多い日本とは環境が少し違うのだ。
そんな慣習が、ここ日本でも浸透。やがて、ジューンブライドは特別視されるようになり、一般人だけでなく、芸能人のジューンブライドも増えていく。
例えば昨年は、清野菜名(26)&生田斗真(36)が6月1日に代理人を通じて都内区役所に婚姻届を提出したことを発表。一昨年は、蒼井優(35)と南海キャンディーズ・山里亮太(44)が結婚し(3日に婚姻届を提出)、大きな話題を集めたことは記憶に新しいだろう。
“授かり婚”で注目を浴びたカップル、いろいろとお騒がせした後での結婚など。そんな芸能人のジューンブライドをプレーバック。“6月の花嫁”は、幸せになっているのだろうか──。
絵に描いたようなジューンブライド、その最たる例が、'07年に結婚した辻希美(33)&杉浦太陽(40)だろう。共通の友人を通じて知り合い、辻の猛アタックから交際がスタート。幸せオーラ全開の記者会見は、ジューンブライドらしい華やかな雰囲気に包まれ、祝賀ムード一色だった。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが語る。
6月に結婚発表した芸能人夫婦
「芸能人のジューンブライドといっても、花嫁姿を披露しているケースは少ないです。しかし、辻さんは白のドレス姿で登場した。ジューンブライドらしい明るい姿は話題になり、こちらまで幸せな気分になるような会見でした。今なお2人が活躍を続けるのも納得です」
その言葉どおり、'16年には 『いい夫婦パートナー・オブ・ザ・イヤー2016』に2人そろって登場。辻が、超ミニのドレス姿で円満の秘訣を語るなど、今では芸能界きってのおしどり夫婦として認知されるまでに。
その裏で、ある記者は「実は'07年の記者会見は一触即発だったんですよ」と明かす。
「2人は“授かり婚”だったのですが、芸能レポーターの1人が“なぜ避妊しなかったんですか?”と聞いてしまって(苦笑)。その場は我慢した杉浦さんですが、会見が終わると“そんなことを聞く必要があるのか”と激怒していたようです」(スポーツ紙記者、以下同)
あやうく芸能レポーターのKY発言で、ハッピーサマーウェディングが台無しになるところだったのかもしれない……。
幸せな雰囲気に包まれているといえば、'16年に結婚した優香(40)&青木崇高(41)も忘れてはいけないだろう。出会いは、2人が共演した'16年放送のNHK時代劇『ちかえもん』。交際から約4か月でのゴールインだった。
「青木さんは、世界各地をひとり旅するバックパッカーをしていたような人。先入観にとらわれず、冒険心も強い。優香さんとのデートのときも変装せずに堂々としていたくらいです。そういった紋切り型ではない姿に惹かれたと聞きます」(スポーツ紙記者)
過去には、岡田准一、妻夫木聡など錚々たる面子と浮名を流した優香だが、そんな小さなことにこだわらない青木との相性は抜群だったのだろう。昨年には、ミニバン『ヴォクシー』の新CMに、夫婦そろって出演。世間的にも、好感度の高い夫婦であることは間違いなさそうだ。
また、家族そろってシンガポールへ移住した福田萌(36)とオリエンタルラジオ・中田敦彦(38)も、'12年に結婚したジューンブライド組。こちらも交際からわずか2か月後にプロポーズしたスピード婚だった。
「芸能人の場合、春の改編期やスポンサーとの年間契約が終わった後なのでスケジュールを取りやすいということも関係していると思います。5月6月であれば、事務所も承諾しやすく、たまたまジューンブライドになったというケースもあると思います」(木村さん)
ジューンブライドといっても、必ずしも“花嫁は幸せになれる”とは限らなかったケースもある。
'07年に結婚し、大きな関心を集めた宮崎あおい(35)&高岡蒼佑(39)カップルは、4年後の'11年に離婚してしまった。
「7年間の交際からの結婚ですが、高岡さんがグラビアアイドルと密会する姿が写真週刊誌に撮られるなど不穏な空気が漂っていました」(スポーツ紙記者)
さらに、'11年7月、決定打となったのが、高岡がTwitter上で韓国ドラマを放送するフジテレビと、日本で活動する韓国タレントを批判した騒動。その4か月後、2人は別々の道を歩むことに……。
「高岡さんのDV疑惑なども報じられていましたが、一方で宮崎さんが岡田准一と不倫していたという報道もあります。高岡は自身のTwitterで、“もう吹っ切れた 君らにはいつか天罰が下るさ”とつぶやいているほどです。あれだけ痛い目にあったTwitterで、わざわざ発信するくらいですから、よほど納得がいかなかったのでしょう」(スポーツ紙記者)
花嫁どころか花婿も幸せになれない……。後味の悪いジューンブライドもあることをお忘れなく。一方、離婚は離婚でも円満を強調したのは、
「離婚をするのに円満も何もありませんが、慰謝料などもなく、円満離婚です」と、自身のブログで発表したともさかりえ(41)。
幸せとは限らない、離婚した6月の花嫁
彼女は、映画『アブラクサスの祭』での共演を機に、'11年6月にミュージシャンのスネオヘアー(50)と結婚。ともに再婚だったが、約5年の結婚生活を経て離婚にいたった。
「2人で『おしゃれイズム』に出演した際には、あまりのデレデレ具合にバカップルなんて揶揄されていたんですけどね(笑)。ともさかさんは女優ですから、事務所としてはあまりそういった態度を公にしてほしくなかったとも聞きます」(芸能記者)
あくまで円満を強調するが、スネオヘアーは、「さびしいですよ」、「ゲス不倫したわけじゃない。1人で空回りした」とラジオで原因をほのめかすような発言をしていることから、ともさかが別れを決めたことがうかがえる。
前出の木村さんは、「双方ともに第一線で活躍しているため、仕事と家庭の両立は難しくなるでしょう。かといって、一方が引いたからといってうまくいくとも限らない」と説明する。
事実、芸能界きっての円満夫婦というイメージの強かったココリコ・田中直樹(50)と、芸能界から一歩引いて家庭を支えていた小日向しえ(41)は離婚してしまった。実はこの2人も、'03年のジューンブライドカップルだ。
2人は、『ココリコミラクルタイプ』での共演をきっかけに結婚。小日向は『笑っていいとも!』に出演した際に、出会ってすぐに結婚を決めたと、交際期間が“0か月”であることを明かしている。
「手もつないだことがないまま、“お互いが好きなら”ということで結婚したそうです。離婚の原因は、田中さんが仕事を優先して子育てに非協力的だったことなど家庭内不和が報じられていますが、小日向さんの本格的な芸能活動再開をめぐってもめていたとも。親権を田中さんが持つことになったくらいなので小日向さんの本格復帰も近いのでは」(スポーツ紙記者)
このように、6月に結婚したからといって、ハッピーエンドが約束されているわけではない。しかし、6月に結婚し離婚を経験、そして再婚もジューンブライドといった不屈の6月の花嫁がいる──、それが松田聖子(59)だ。
1度目は、'85年6月に神田正輝(70)と。その後、一般男性と再婚するも離婚。そして3度目の結婚であると同時に2回目のジューンブライドを、'12年に大学准教授と果たす。
「“ビビビッときた”と話したことで“ビビビ婚”なんて言われたのが、'98年の再婚時です。このときのお相手は歯科医師だったのですが、3回目の相手も歯科・口腔外科の准教授です。3回結婚して、2度ジューンブライド、2度歯科医師……。本人のこだわりなんでしょうかね(笑)」(スポーツ紙記者)
意外といったら失礼かもしれないが、今井美樹(58)&布袋寅泰(59)('99年)、相楽樹(26)&石井裕也監督(37)('18年)もジューンブライドだ。前者は略奪婚、後者は授かり婚で相楽の所属事務所が激怒──。そんな6月の花嫁という展開に、スキャンダルをジューンブライドでごまかす気!? などいろいろと邪推してしまいそうだが、「考えすぎでしょう」と木村さんは笑う。
6月よりも11月“いい夫婦の日”
「彼らがロマンチストという可能性もありますが、アーティストは自身の作品のリリースに結婚発表を合わせるといった話題づくりも可能です。そういった事情があれば、わざわざ6月に合わせるかもしれませんが、一般的なテンプレートとされるものをアーティストは避ける傾向が強い」
“あくまでたまたま”という芸能人が多いのではないか──、そう木村さんは分析する。
「事務所の都合、スポンサー契約の都合など、売れっ子芸能人ほど自分の意思で結婚のタイミングを決めることが難しくなります。そのため、6月に結婚発表をして、実際の結婚式は違う月に行うというケースも珍しくありません。一般のジューンブライドと芸能人のジューンブライドは違うということです」(木村さん)
昨今は、ジューンブライド以上に、11月22日“いい夫婦の日”に入籍する芸能人カップルが増えている。壇蜜&漫画家の清野とおる、オードリー・若林正恭&一般女性、野呂佳代&テレビディレクターなど枚挙にいとまがない。
「こだわりがないからこそ、一般の方と同じように覚えやすい“いい夫婦の日”に入籍しているのだと思います。ジューンブライドよりも親近感を感じますし、庶民性を演出できる。騒ぎ立てるものでもなく、そっとしておいてほしいという気持ちもあるでしょう。昔のように芸能人が遠い存在ではなくなり、あまり一般の方と変わらなくなってきていることも、芸能人が“いい夫婦の日”を選んでいる理由のひとつかもしれません」(木村さん)
“夢を売る”のが仕事のタレントには、ロマンチストでいてほしい気もするが……。これも時代の流れなのかも。
ジューンブライドはもう古い!?
コラムニストであり、ウエディング・プランナーとして、通算約400組を手がけてきた木村隆志さん。ジューンブライドが、どのような背景で浸透し、現在に至るのか解説してもらった。
「一般的に結婚式の人気のシーズンは、3月~4月、そして10月~11月の過ごしやすく晴天が多い時期になります」
6月は梅雨が始まり、雨が多くなることで結婚式を挙げるカップルが少なくなるシーズンだったという。
「そこでブライダル業界は、6月の結婚式を増やすために、平成の初めごろからウエディング誌などで、ジューンブライドを喧伝するようになった背景があります。
当時、私は結婚式の現場でプランナーとしてさまざまな相談に対応していましたが、“6月に結婚した芸能人〇〇さんにあこがれて”といった方はいなかったですね」
ジューンブライドは、あくまでメディアやマスコミが発信したものであって、芸能人のジューンブライドに紐づく形で6月に結婚するカップルが増えるということはなかったという。
「『週刊女性』を読んでいる読者層の方にとっては、『ジューンブライド』は特別な響きを持つかもしれませんが、 21世紀に入ってからは、蒸し暑く雨も降る6月を敬遠する傾向が強くなり、ジューンブライドは減少してきました」
それに加え、同時期から教会式が大半を占めるようになり、天気が悪いと華やかな写真が撮れない、さらには着物での参加が難しいという親世代も。
「女性があこがれる結婚式として人気を博していたジューンブライドですが、やはり気候的にベストではないということから避ける方が増えていきました。今の若い世代は、とりわけジューンブライドにこだわりを持っていないように思います」
例えば、一時期話題になった“結婚式で何か青いものを身につける”というサムシングブルーを気にする人も少ないという。
「縁起を担ぐよりも、映えるものを意識します。そのため、梅雨である6月は映えづらいということもあり、ほかのシーズンを選ぶ人が増えています。
また、ネットが普及したことで、情報量が増え、生活が便利になったことも関係していると思います。好きな時間に好きなものを楽しめる、いうなれば自分好みにカスタマイズできる文化になったことで、結婚式も時期にとらわれず、自分たちが楽しめるものへと変化してきているのだと思います」
(取材・文/我妻アヅ子)